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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四話 アルレスハイム星域の会戦
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制の取れていない攻撃、数で劣る帝国軍艦隊は第四艦隊の反撃に遭い潰走しました。

ヴァレンシュタイン中尉は平静な表情で戦況を見ていました、周囲の興奮からはまるで無縁です。既に戦闘は終了しています。どんな気持なのだろう、かつての味方が敗北するところを見たのは……。そう考えていると中尉が口を開きました。

「司令官閣下、捕虜に対して確認していただきたい事が有ります」
艦橋の人間の視線が中尉に集中しました。
「何を確認したいのだ、ヴァレンシュタイン中尉」

「帝国軍の統制の取れていない攻撃はあまりにも不自然です。あるいは何らかの要因で興奮状態にあったのかもしれません」
「何らかの要因とはなんだね? 敵を見て興奮したとでも言うのかね」
パストーレ提督の嫌味っぽい言葉に追従するかのように笑い声が起きました。皆中尉を馬鹿にしています。

「薬物等による興奮状態が引き起こした可能性があります。例えばですがサイオキシン麻薬……」
ヴァレンシュタイン中尉の声が艦橋に響きました。声からは中尉の感情は分からないけど、平静で落ち着いた声です。

今度は皆が視線を交し合っています。パストーレ中将もタナンチャイ少将も困惑を隠そうとしません。サイオキシン麻薬?

パストーレ中将とタナンチャイ少将が顔を見合わせています。ややあってパストーレ中将が捕虜の薬物検査を命じました。結果が分かるまでに三十分以上かかりましたが居心地は悪かったです。司令部の人間がこちらをチラチラと見ます。しかしヴァレンシュタイン中尉は平然としていました。

通信士のナン少佐が報告を受けています。受けながらヴァレンシュタイン中尉を見ていました。報告を受け終わったときにはナン少佐の顔面は強張っていました。
「閣下、軍医から報告がありました。ヴァレンシュタイン中尉の言う通り捕虜にサイオキシン麻薬の中毒症状を起している兵士が居るようです」
「……」

「それも一人や二人では有りません。かなりの人数が中毒症状を起しているそうです。中尉の推測は当たっているようです、敵の一部が暴走したのはサイオキシン麻薬が原因だと思われます」
「……」

皆居心地が悪そうにしています。先程まで有った勝利の高揚感は何処にもありません。時折ヴァレンシュタイン中尉を見ていますが中尉は平然としています。タナンチャイ少将が困惑したような声を出しました。
「どういうことだ? サイオキシン麻薬などを服用すれば戦闘にならん事は分かっているだろう。それなのに何故……」

「彼らにとっても予想外の事だったのでしょう」
「予想外?」
タナンチャイ少将が鸚鵡返しに問い返すとヴァレンシュタイン中尉は頷きました。

「たまたま戦闘前に気化したサイオキシン麻薬が艦内に流れ出した。かなりの艦が同じ状態になったことを
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