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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第一話 亡命者
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を浮かべながら席を立った。この男が多分バグダッシュ大尉だろう。そして隣に居た若い女性兵士もつられた用に立ち上がった。

「キャゼルヌ大佐、申し訳ありませんが内密な話が出来る場所を用意していただけませんか。どうやら此処はそれが出来る場所ではないようですので」
バグダッシュ大尉はチラっとロックウェル少将を見ながら皮肉を言ったが少将は不機嫌な表情を浮かべたまま無言だった。早く出て行けということらしい。

「分かった、私の部屋で話そう。では局長、失礼します」
部屋を出るとバグダッシュ大尉が声をかけてきた。
「まったく、気の小さなお人ですな。話にならない」
大尉が少将を非難するか、しかも声を低めようともしない、とんでもない男だな。

「厄介ごとのようだな」
「さよう、いささか困惑しております。詳細は大佐の部屋で」
今度は大尉の声が小さくなった。どうやらかなり大きな厄介事らしい、面倒な……。

「承知した。ところで貴官、何処の人間だ」
「情報部です」
やはりそうか、この男には何となく油断できない雰囲気がある。しかし要員の増員とどう関係してくるのか……。

「情報部の何処だ」
「……防諜課」
防諜課、つまりスパイハンターか。となると俺のところにスパイがいるか、或いは送られてくる二人がスパイなのか、そのどちらかだな。やる事は監視、或いは欺瞞情報を渡しての逆利用、そんなところか。道理で局長が不機嫌なわけだ。気の小さな局長ではいささか荷が重い。

俺の私室に入り適当に座ってもらった。部屋はそれほど大きくはないし、ソファーもない。俺のデスクの他には簡易の折りたたみの椅子が有るだけだ。殺風景だし、余り良いもてなしとも言えないが二人とも文句も言わずに椅子に座った。

改めて二人を見る。バグダッシュ大尉は二十台半ばから後半だろう。口髭を綺麗に整えている。全体に不敵というか横着というか、独特の雰囲気のある男だ。もう一人の若い女性兵士は二十歳になったかどうかというところだろう。柔らかい笑みを浮かべている。俺の視線をどう思ったのか、彼女が名乗ってきた。

「ミハマ・サアヤ少尉です。情報部に所属しております」
そう言うとニッコリと笑った。E式か、となると元は東洋系のようだ。ミハマ少尉と呼ぶべきなのだろう。

笑うと目が細くなりエクボが両頬に出来る。可愛らしい感じの女性だ。声も何処と無く甘えるような感じに聞こえる。情報部と言ったがあまりそんな感じはしない。少尉という事は士官学校を卒業してから一年と経っていないということだ。その所為かもしれない。

「それで話を聞こうか」
「第五次イゼルローン要塞攻略戦が失敗しました。並行追撃作戦は上手く行ったかのように見えましたが最終的には帝国の蛮勇の前に失敗した」

バグダッシュ大尉の言葉に俺
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