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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第20話 木枯らし荘の昼下がり
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が本当にあり得るのだろうか……
 口元に手を当てながら考えるフェイを見て、ワンダバはキョロキョロと周りを見渡し始めた。
 一通り部屋を見回した後で、ワンダバは首を傾げながら不思議そうな声でフェイに尋ねる。

「ところで、話に聞いた『アステリ』と言う少年はどこにいるのだ?」

 ワンダバの言葉に「え?」と目を丸くすると、「アステリなら」と自分の後ろに設置された勉強机を指さす。
 自分が眠ってしまう前は、確かあの机に付いた椅子に座って外の様子を見ていたハズだったから。
 しかし……

「……アレ、いない」

 ぐるりと部屋中を見回して見る。
 だが、どこを探してもあの特徴的な黄色い髪は無かった。

「どこに行っちゃったんだろう……」
「散歩じゃないのか?」

 ワンダバはそう、お気楽そうに答えてみる。
 普通の人が相手なら「そっか」の一言で終わったのだろう。
 だが、彼――アステリの場合は事情が違った。
 彼は"裏切り者"と言うレッテルを張られた、狙われた身だ。
 昨夜もそんな彼を狙う男に出会い、戦う事になってしまった。
 勝負は、相手側の棄権と言う事で一応勝つ事は出来たのだが……

――もしその男が、またこの世界に来ていたとしたら……?

「ボク、ちょっと捜してくる……!」
「え、おいっ! フェイ!」

 昨夜出会った……あの、『カオス』と言う男。
 アイツが自分達の前から姿を消して数時間……
 そのたった数時間で体力を回復し、今またこの世界に来ていたとしたら……
 彼等の思惑を潰そうと動いている、アステリの身が危ない。
 そう考えたら居ても立ってもいられず、フェイはワンダバの制止の言葉も無視して部屋を飛び出した。

「あら、フェイくん。そんなに急いでどうしたの?」
「あ、秋さんっ」

 アステリを捜そうと外に出ると、門の前で掃き掃除をしている管理人の『秋』に声をかけられた。
――そうだ、秋さんなら……アステリが出ていった事を知ってるかも……

「あの、アステリを見ませんでしたか? ちょっと前から姿が見えなくて……」

 そう尋ねるフェイの不安気な表情に気付いたのか、秋は安心させる様に「大丈夫よ」と笑って答えた。

「アステリくんなら……ちょっと前くらいに「河川敷に行ってくる」って出掛けて行ったわ」

 「もうそろそろ帰ってくるんじゃないかしら?」……
 そう笑う秋の言葉を聞いて、フェイはホッと胸を撫で下ろす。
 と、後ろからゼェゼェと息を切らしたワンダバが駆け寄ってきた。

「ワンダバ……大丈夫?」
「ハァ……ッ……フェイが突然、飛び出すからだろう……ハァ…………っで、アステリくんはどこに行ったのか分かったのか?」
「うん。なんか、河川敷に行ったみたい
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