第二章 追憶のアイアンソード
第17話 明かされる物語
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、国王の心にさらなる重圧を与えるのだった。
「国王陛下。事の全貌は未だ見えぬままでありますが……良からぬ事態に備えておく必要はありましょう。当分は、私の部下達も王宮の警備に加えさせて頂きたい」
「うむ……そうだな。我が王国の勇猛なる騎士達を先の戦争で失った今、萎縮した騎士団を支えられる存在は限られておる。ダイアンにいつまでも頼るわけには行かぬし、ロークは勇敢ではあるものの、今の騎士団を牽引するには些か力不足だ。歯痒い限りだが、終戦協定が結ばれている今、貴殿ら帝国騎士以外に頼れる当てはない。――頼めるか、バルスレイ殿」
「――お任せください。力ある者の責務として、御身は我々が身命を賭してお守りします」
苦悩の果てに国王が出した答えに、バルスレイは表情を変えぬまま深く頷く。
かつて自分達から幸せを奪い去った仇に、頭を下げて救いを求めねばならない。その苦痛は、察するに余りある。
その痛みを汲むバルスレイに出来ることは、これ以上の被害を回避するための体制を築くこと以外にない。寝室の門前で警備している騎士達にも、練兵場で訓練に励む新兵達にも、迫ろうとしている危難を打ち払う力はないのだから。
(『勇者の剣』は人智を超越した神器。その威力が万一、牙を抜かれたこの王国に向かおうものなら……この地は、瞬く間に血の海となろう)
銀髪の老将は、城下町の方角へと視線を移す。その向こうに、希望の光を求めて。
(ダタッツよ。人類が、あの剣が纏う『力』に立ち向かわねばならぬとしたら……それができるのは、現世の勇者であるお前だけなのかも知れんな……)
――そして、その頃。
城下町に広がる、石畳の街道に――とある騎士が佇んでいた。
野党に破壊された建物の修繕のため、資材を担いで道を行き交うを人々を見つめる、黒い瞳は――白いフードにその輝きを隠し、痛ましい光景を真摯に見据えている。
「ちょっと……あそこに居るの、騎士団の人じゃないの?」
「野党共が来た時は何もしなかったクセに、よく今になってのこのこと……」
「姫様やローク君以外、まともに戦いもしなかったって話だぜ、あいつら。バルスレイ将軍達がいなかったら、街は火の海だったって話だ」
「全く、情けない……戦争で死んだ先人達に申し訳ないって考えはないのかね。早いところ、ヴィクトリア様に叩き直されてくれねぇかな……」
騎士団に支給される白いマントとフードにより、己の姿を覆い隠している彼は、町民達の冷たい視線や陰口を浴びせられても、一歩もそこから動く気配を見せない。
(古の時代、魔王を打ち倒した「勇者の剣」。それは即ち、人類を超越した魔物を打ち払う、さらに強大な超常の力……)
ダイアン姫に花を捧げていた少女の、軽蔑するような視線を受けても――
(
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