第一章 邂逅のブロンズソード
第9話 ダタッツという男
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るまい」
その思案を裏付けるように、アンジャルノンは鉄球を振り上げ――冷酷な眼差しでダタッツを睨み付ける。
それに応えるかのように、ダタッツも鋭い眼差しを眼前の巨漢へぶつけるのだった。
「おっ、おのれ役立たず共が! アンジャルノン、さっさとその小僧を叩き殺せ!」
あと一歩というところで、二人の乱入者に計画を狂わされ、既にババルオは平静を失っていた。恥も外聞もなく、バルコニーから大声で喚き散らすその姿に、民衆は敵対心を剥き出しにしていく。
「負けるな兄ちゃん! そんな奴ぶちのめしてやれっ!」
「姫様を助けてっ! もうあなたしかしいないのっ!」
そんな民衆の歓声には目もくれず、ダタッツはただ静かにアンジャルノンを見据えていた。――その視線目掛けて、アンジャルノンの鉄球が襲い掛かるまで。
「……ッ!」
孤を描き、覆い被さるように墜落してくる鉄製の隕石。その影がダタッツの全身を覆う瞬間、彼は咄嗟に横へ転がり回避する。
「甘いわ若造がァァァッ!」
――だが、アンジャルノンはその回避を読んでいた。
闘技舞台に鉄球が墜落した直後。彼は鉄球を繋ぐ鎖を手繰り寄せ、水平に腕を振るう。
すると、その動きをトレースするかのように鉄球は真横に向かい、弾かれるように飛んでいく。
転がった直後で、体勢が整っていないダタッツを仕留めるために。
「……!」
再度の回避は間に合わない――そう判断したのか。
ダタッツは転がる時の姿勢のまま、即座に木の盾を構えた。次いで来たる衝撃に備えて、身を屈め――
――木の盾ごと。
吹き飛ばされてしまうのだった。
紙切れのように弾き飛ばされ、闘技舞台から転げ落ちていく若き剣士。その姿を一瞥し、紅い巨人は歪に口元を吊り上げた。
木の盾「だった」木片は塵と化して宙を舞い、先程まで歓声を上げていた人々の頭上へと降り注いでいく。
その光景に言葉を失った民衆は、絶望を滲ませた表情で、倒れたまま動かないダタッツの姿を見つめていた。
そして。
「――ダタッツさぁぁあぁあんッ!」
彼の戦いを見守り続けてきた少女の悲鳴が、ババルオ邸にこだまする。
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