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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第一章 邂逅のブロンズソード
第9話 ダタッツという男
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を舞い――地に墜落していく。その瞬間を目撃した他の帝国兵達は、怒りをぶつけるように一斉にダタッツへと向かって行った。

「容赦はしない。悪く思わば勝手に思え」

 その憎しみをさらに凌ぐ、強大な「力」。それを表現する斬撃の嵐が、帝国兵達の身体を舞い上げて行く。
 まるで、ダイアン姫やロークの思いを蹂躙した、アンジャルノンのように。

「な、何をしておる! あんなみずぼらしい小僧一人に!」

 ロークが吹き飛ばされた時までは余裕を保っていたババルオも、次々と自分の私兵が薙ぎ倒されていく様を目の当たりにして――徐々に血の気を失いつつあった。
 一方、獅子奮迅の勢いで帝国兵達を打ち倒して行くダタッツの姿に、民衆は噴き上がるような歓声で沸き立っていた。

「す、すげぇ! すげぇぞ兄ちゃん!」
「行け行け、やっちまえ!」
「姫様達の仇をとってくれッ!」

 見掛けからは想像もつかないダタッツの剣技。次から次へと帝国兵達を打倒していくその技に、人々は魅入られたように賞賛を送る。

 だが――彼の闘いを間近で見ていたダイアン姫は。

(あの剣術は……! やはり、彼は……!)

 賞賛どころか、恐怖すら覚えていた。単純な「速さ」こそ超人的であるものの――その動作そのものは、彼女がよく知る剣術の動きだったのだ。

 ――帝国式闘剣術。自分達を苦しめた、恐怖の剣の。

 だが、そうとわかっていながら。

(なん、なの……。この……感じ……)

 ダタッツの凛々しい横顔を見つめる彼女の胸には、恐れとは違う感情が渦巻いていた。
 恐怖の色とは異なるリズムで、高鳴る動悸。甘く切ない、胸の痺れ。

 ――それは、憎むべき帝国の戦士に対して……あってはならない感情だった。

「は、はは……すごい、全くすごいなダタッツ君は! 一体何者なんだ、あの子は!」
「わ、わからない……けど……」

 一方、そんなことを知る由もなく、両腕を振り上げて歓喜しているルーケンに対し――ハンナは両手を胸に当て、不安げな面持ちで戦いを見守っていた。

(あの巨体を相手に、どうやって戦うのよ……ダタッツさんっ)

 ダタッツに立ち向かう帝国兵達が居なくなっても――その表情に安堵の色が現れることはなかった。アンジャルノンがいる限り、戦況が苦しいことには変わりないのだから。

「……見事な技だな。まともな剣でさえあれば、皆殺しにも出来たろうに。しかも、帝国軍人しか習得できねぇはずの帝国式闘剣術の使い手ときた。……だが、帝国兵崩れの傭兵にしちゃあ技が洗練され過ぎてる。何者だ、てめぇ」
「さっきも言っただろう。ただの、文無しの旅人だ」
「同郷の帝国人にも語る気はない、ってことか。まぁいい、どうせ俺には勝てんのだ。無理に聞くこともあ
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