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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十四話 裏腹
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が経過した頃、柚那は現在の固有魔装/風月輪と契約した。

 逢沢家の道場は剣と刀が王道の道場だっただけに、当初は全く違う方向性の武器を選んだ柚那を良く思わない人が多かった。

 しかし柚那は自分に最も向いた武器を選び、自分が最も強くなれると思う武器を手にした。

 全ては小伊坂 黒鐘を倒すために――――。

 そして大切な姉/逢沢 雪鳴を守るために――――。

 柚那の想いに応えるかのように彼女の周囲を竜巻が発生、迫る枝は竜巻に触れた瞬間に切り刻まれていく。

 柚那の周囲に発生した竜巻は彼女の魔力変換/風と円月輪を回転させることで発生させたもので、円月輪の刃が竜巻に含まれているが故に触れたものは全て切り刻まれることとなる。

 だが、それだけで勝つことはできない。

 竜巻の中で柚那は左足を軸に全身を左回転させ、

「斬り裂け――――!」

 回転の勢いをそのまま、二つの円月輪を巨木に向けて投げた。

 近接戦のみならず、投擲としての役割も果たせる刃物。

 それが柚那の選んだ戦闘スタイルだった。

 放たれた円月輪は高速回転のもと、進行上にある全ての枝を斬り裂いていく。

 そして本体である巨木へ直撃――――、

「――――っ!?」

 が、風月輪は巨木に数センチ刺さったところで動きを停止する。

 柚那は巨木すら斬り裂くつもりで円月輪を放っており、途中の枝を斬り裂く過程で減速することも考えての威力だった。

 しかし巨木の持つエネルギーが柚那の想像以上に多く、結果として巨木の硬さを破ることはできなかった。

 驚く間もほとんどなく、完全に柚那を攻撃対象と判断した巨木は十数本の枝を鞭のように振るい、柚那に向けて一斉に放つ。

 固有武装を今から自分の手元に戻しても、距離と速度的に間に合わない。

 先ほどと同じように竜巻による防壁も張れるが、風月輪がなければ守れても斬り裂くことができない。

 本来であればここで万事休す。

「確かに驚いたけど――――」

 柚那は落ち着いた様子で一歩前に出る。

 同時に足元に翠色に光る円形の魔法陣が展開される。

円舞(えんぶ)――――」

 さらに柚那が握り拳を作ると、指と指の間にCDほどの大きさと薄さを持った同じ形状の魔法陣が現れ、迫る枝に向けて一斉にそれを投げた。

 小さな魔法陣は風月輪と同じ回転をしながら枝とぶつかり――――斬り裂いていく。

 休まず再び指と指の間に魔法陣を作り出し、左右で合計八枚の魔法陣を一斉に投げる。

 手裏剣のように、絶え間なく放っていくことで迫る全ての枝を斬り裂く。

 そして枝が底を尽きても放たれたそれは、無数の刃となって巨木に突き刺さっていく。


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