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執務室の新人提督
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「以上、口頭での報告よ」
「はい、ありがとうございます」

 初霜は加賀の報告に礼を返した。
 
 現在、二人が居るのは伊良湖の開いている甘味処の一室だ。加賀は今日最後の戦闘機開発を終え、提督に報告も済ませた。あとは初霜に加賀が秘書艦であった時にあった事、やった事を報告すれば加賀の秘書艦としての仕事はすべて終わる事になる。加賀は港で第一艦隊の帰還を待ち、初霜に事情を説明し、ここに来たのだ。港で説明では、余りに素っ気無いと思ったのだろう。もしくは、それ以外に理由があるのか、だ。
 
「書類上での報告は、提督にも渡してあるからあとでそちらも見て」
「はい」
「あとは……そうね、愚痴になるけれど」
「えぇ、大丈夫です」

 初霜のその言葉に、加賀は小さく頷いた。加賀がここに来たもう一つは、同僚、それも秘書艦としての愚痴だ。これを零せる相手となれば、相当に限られる。初霜か、大淀くらいだ。
 
「思ったより、上手く出来なかったわ……」

 戦闘機開発の事だ。その為に加賀は秘書艦代理になったというのに、結果ははかばかしい物ではなかった。作られなかったわけではないが、数がそろえれた訳でもない。空母艦娘達の戦力を向上出来なかったという事実が、加賀を弱気にさせた。
 
「私だって、ソナーも機雷も上手く作れないですから」

 事実である。例えばこの初霜は、大型建造で提督と妖精をサポートした際、大和、矢矧、大鳳を一発で出した実績を持つ。ただし、ソナー等の開発となるとどうしてか彼女はさっぱりなのだ。機銃ばかりだしてしまうので、ソナー機雷狙いの開発からは外された事もある。
 
 初霜の言葉に加賀は常の相で頷き、自身の前に置かれているワラビもちを一つ口に運んだ。その顔には先ほどまであった僅かばかりの気弱さもない。初霜も加賀と同じように自身の前にある水羊羹を一つすくい口に入れた。
 口の中にあったワラビもちを嚥下し終えたのだろう。加賀は、そう言えば、と口を開いた。
 
「提督が、また良く分からない事を言っていたわ」
「またですか?」

 また、と秘書艦に言われるほど、提督の奇矯な言動はぽろぽろと零れているのである。もっとも提督からすれば、奇矯程度で済んでいるのか、と安心する事だろうが。
 
「えぇ、開発で数回回して報告した後、ウィキがあれば……とか小さく呟いたのだけれど……」

 加賀は初霜に問うような視線を向け、初霜は首を横に振った。ウィキ、というのが電子百科事典で在る事は初霜にも理解出来ている。ぴこぴこいうのは全部ファミコン、と認識している加賀は危ういが。兎にも角にも、そういった物がインターネット上に存在するのは初霜も分かっているが、それと戦闘機開発になんの関係があるか彼女には分からない。
 
 開発レシピ、等と少々
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