第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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りませんわ、どちらに!?」
「一時上方────クソッタレ、高速に乗りやがった!」
既に、距離は数百メートル以上。例え黒子の空間移動でも追い付けはしまい、直線で時速百キロ近くを出す自動車に、男一人と超軽量とは言え、バイクを抱えては。
「ハハッ……最高時速六十キロで高架高速はキッついぜ!」
だが、迷わず高速に乗る。料金所がネック? 実に幸運な事に、機械化された学園都市の料金所なら、彼の能力で誤動作して終わりである。
或いは、黒子の空間移動で飛び越えても良い。
「ご心配には及びませんわ────既に警備員が展開済みですし、わたくしの空間移動の最高時速は、約時速二九〇キロですもの! タイムラグはありますけど!」
「そりゃあ、便りになるなッ!」
後は、なんとしても追い付くだけだ。入り口、僅かな坂道。これを駆け昇って────
「────こんにちは、先輩」
「「?!」」
そこに、いつの間にか立っていた少年。指定の学ランに身を包んだ、少女のようにも見える彼は。
「約束をほっぽり出して、デートか何かですか? 本当、僕は、先輩のそういうところが……」
右手に持つ音楽プレーヤーを、御手玉のように繰りながら。左手に持つ────
「テメェ……道理で、最近見掛けなかった訳だよなァ、『妖蛆の秘密』!」
『クク──貴様のような、物分かりの悪い莫迦には付き合っておれんと言うだけだ、コウジ』
鉄の装丁の、吐き気すら催す不快の塊。魔導書『妖蛆の秘密』に、嚆矢はうんざりした敵意を向ける。
「ほら、また僕を無視する。だから、僕は、そういうところが……」
今も、今も。悍ましい蠕動の如く煌めく表紙の魔本に。目を取られていた、嚆矢へと──右手の音楽プレーヤーを『潰すように消した』古都は、投げつけるような動作。
何も持たない筈の、徒手のその右手で。確かに、『何か』を。
「僕は、貴方のそういうところが……大嫌いだったんだ!」
「────ッ!」
紅く濁った目で、憎しみを湛えた眼差しで彼らをにらんだ。
その瞬間、世界が歪む。一瞬、光が捩れて────バイクごと、路面が球形に『蒸発した』──────!
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