2章 MY LOVE SONG
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
言葉を思い出したりした。
その言葉は、逆転したテーゼ(肯定的判断)ともいえるわけで、信也は、
なるほど、ドストエフスキーは、現代作家にも影響の深いといわれるし、
偉大な作家なんだなあと、感心するのだった。
しかし、そんな信也を見ていて、どこか子どもっぽいと、
美樹は感じるのであった。
そして、好感や親しみも深まってゆき、美樹の信也に対する呼びかたも、
川口先輩とか、信也さんとかから、
しんちゃんになっていたのであった。
「どうして、最近、おれって『しんちゃん』になったんだよ」
あるとき、信也がわらいながら、美樹に聞いた。
「だって、信也さん、私の好きな『クレヨンしんちゃん』と
どこか、かぶるんだもん」
そういって、美樹は悪戯っぽく、ほほえんだ。
「おれも『クレヨンしんちゃん』好きなほうだから、まあ、いいけど。
でも、どうせなら、『ワン・ピ−ス(ONE PIECE)』の
ルフィが好きだから、ルフィとかフィルちゃんとか呼んでくれたらいいのに」
そういうと信也は、何がおかしかったのか、腹を抱えるほど、わらった。
美樹が呼び始めた『しんちゃん』は、たちまち、みんなに広まった。
美樹は家の駐車場に、信也のスズキ・ワゴンRを停めさせた。
家にいる両親を外に呼び出して、美樹は信也を紹介した。
母親は、「美樹も、よく、川口さんのことは話してくれています。
私どもも、川口さんなら安心と思っているんです。
これからもよろしくお願いします」といって、ほほえんだ。
「家でゆっくりしていってください」と父親もいった。
信也は「こちらこそよろしくお願いします」といって、
深々と頭を下げた。
「きょうは時間がないから、またね」と美樹はいうと、
信也の手を引っ張って、ふたりは、
都立駒場公園へと、早足で向かうのであった。
高校や東大の研究センターの横道を抜けると、
歩いて、15分ほどで、
広い芝生や樹の生い茂る駒場公園だった。
「このへんにも、いい公園があるんだって、
しんちゃんに見せたかったのよ」と美樹が信也に話す。
「本当だ。立派な公園だね」
「あれが日本近代文学館よ」と、美樹は、グレーの
コンクリート造りの建物を指さした。
「あっちの建物は、前田侯爵邸とかいって、
100年くらい前に建てられて、当時は、
東洋一の邸宅と、うたわれたんだって」
「そうなんだ。あとで行ってみよう」
信也はポケットから、アップルの携帯型デジタル
音楽プレイヤーのアイポッド(iPod)を出した。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ