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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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新たな事件

子供たちに囲まれて、色々と質問されていた時だった。
「みんなの……みんなのこころが……」
突然、ユイが口を開いた。
「みんなのこころ……が……」
宙に視線を向けて右手を伸ばすユイ。……もしかして記憶の断片が戻ったのか?
「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」
キリトが叫ぶと、ユイはきょとんとした表情を浮かべた。
「ユイちゃん……何か思い出したの!?」
アスナがユイの手を握る。
「……あたし……あたし……」
眉を寄せ、うつむく。
「あたし、ここには……いなかった……。ずっと、ひとりで、くらいとこにいた……」
ユイが何かを思い出した途端、
「うあ……あ……あああ!!」
ユイが高い悲鳴を発した。
「ユイ!?」
俺も慌てて駆け寄る。
「にい……っ!!」
ユイが俺の方に手を伸ばした。俺は、その手を掴んだ。たった一人、人との接触を禁じられたユイ。そして、その開発者であり、親である俺が手を掴まないのは……親の資格が無い。
数秒後、怪現象は収まり、硬直したユイの体から力が抜けた。
「何だよ……今の……」
俺は、その問いに答える事は出来なかった。
































翌日、俺達は朝早くから東七区の教会にいた。軍のことを聞くためだ。
「サーシャさん、軍ってあんなのなのか?俺が知ってるのは治安維持に熱心な方の奴等だ。だが、昨日のはまるで犯罪者だ。いつからなんだ?」
「方針が変更されたと感じたのは半年くらい前です。徴税と称して恐喝まがいの行為を始めた人と逆に取り締まる人達も居て。軍メンバー同士で対立してるのも見たこともあります。噂では上のほうで権利争いがあるみたいで…」
「成る程、内部分裂か…。面倒な話だ」
「でも、昨日みたいな事が日常的に行われてるんだったら、放置は出来ないよな…」
キリトが俺に続けて言う。その時、索敵に一人引っかかる。
「サーシャさん、一人来たぞ」
「え…。またお客様かしら…」
その時、館内にノック音が響いた。

サーシャとキリトが連れて来たのは、軍のユニフォームを着た女性プレイヤーだった。
「ええと、この人はユリエールさん。どうやら俺達に話があるらしい」
ユリエールは一礼すると、サーシャに勧められた椅子に腰掛けた。
「初めまして、ユリエールです。ギルドALFに所属しています」
ALF…軍の略称か。
「初めまして俺は血盟騎士団――――っても一時脱退中だが、ライトと言う。こっちはキリトとアスナとミザール。そして、この子がユイです」
「KoB…。成る程、道理で連中が軽くあしらわれる筈だ」
「んで?用件は何でしょうか?まさか抗議に来た訳ではありませんよね?」
「はい、実はお願いがあって来たのです」
「聞くよ」
詳しく聞くと、今の軍の体制になったのは、第一層であったキバオウ率いる一派が起こしたことであり、随分前の悪魔の時に駆り出されたコーバッツ達もその一派だったらしい。
「んまぁ…なんちゅう無茶無謀を…」
「それでですね。三日前、追い詰められたキバオウは、シンカーをダンジョンに誘い込み、自分は回廊で逃げ、シンカーを放逐してしまったのです。その時、シンカーは非武装で、とても一人ではモンスターの群れを突破するのは不可能な状態でした。転移結晶も持っていなかったようで…」
「お人好しだな」
「お人好しすぎるんです、シンカーは…」
「んで、俺らに助けを求めてきた訳か…良いよ?」
「え?」
「おい、ライト!!」
「平気だ、本気で心配してるからこそわざわざ俺らの所まで来たんだ。嘘偽り無しと判断する」
「だけど…」
アスナが言うと、
「大丈夫だよ、ママ。その人、嘘付いてないよ」
ユイが言った。
「な?それに人一人助けらんねぇで何が攻略組だよ」
「同…感」
「まったく…」
キリトとアスナが呆れるが、それは同意するという意味を取った。
「つー訳だ。ユリエールさん、喜んで手を貸しますよ」
「ありがとう…ありがとうございます…」
「それはシンカーさんを救出してからにしましょう」 
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