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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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原作が始まった訳だが……どうしよう
  25話

「おーにさんこちら、てーのなるほーへ、なーんてねっ!!」
「ナメた真似してくれるじゃない!!」
原作は始まったというのに、俺の日常は特に変わりがないな。
強いて言うなら、カノンとイザナミが手合わせを始めた程度だ。ルールとしてイザナミは黒い腕は二十本までしか使わず、本体の怪力も使用禁止で反撃も無し。
カノンは神機のバレットを装飾のみで、ゼロ距離射撃を二回又は通常の射撃を五回イザナミの本体に当てれば勝ち。
イザナミはカノンの攻撃を三十分避け続ければ勝ちいうルールだ。
カノンは誤射こそあれ、アラガミを討伐した数は第二部隊でもトップということもあり、小型アラガミの掃討程度であれば単独任務を許可されているので、こうしてアラガミをすぐに倒して残りの時間をイザナミとの手合わせに当てている。
ちなみに、イザナミに勝った場合は俺の部隊への編入を許可する事がカノンの報酬で、逆にイザナミが勝った場合は一回だけイザナミの言う事を俺が聞くというのがイザナミの報酬だ。
まぁ、俺から一言言わせれもらうと……どうしてこうなった?
どちらが勝とうと俺に手間がかかる上に、イザナミが勝った場合ロクな目に合わない。いや、既に合っているのだがな……
そもそも、カノンの戦闘スタイルは俺のスタイルと似ているので、イザナミは俺と同様天敵と言っても差し支えないと散々言ったのだが、カノンは折れずに俺に頼み続けてきた。
最終的に俺はカノンの技術向上と言うことで渋々納得し、今に至ったのだが戦績は三戦全敗の当然の結果だ。
ただ、カノンの技術は目に見えて上がっているのは確かで、この一週間でコンゴウ二、三体ならば単独討伐出来るようなっている。もっとも、イザナミには完全に遊ばれているので、本人は己の未熟さを嘆いているのだがな。
既に他の支部なら単独での戦力は第一線級なんだがな……誤射だけはどうにもならんそうで、部隊ではお荷物扱いという妙なポジションだそうだ。
む?そろそろか?
「カノン!!あと一発撃ったら終わりだ!!」
返事は無いが聞こえてはいるようで、カノンは次の一撃に賭ける為に獲物に襲いかかる獣のように身を屈める。
イザナミもそれを見て、黒い腕を自分の周囲に集めカノンの攻撃を防ごうとした。
次の瞬間、カノンは地面を全力で蹴り、這うような低い体勢で自分を捕まえようとする腕を避ける。
そして、ついにカノンの銃口がイザナミの本体に押し当てられ、カノンがその引き金を引こうとした直後、イザナミは神機の砲身に手を付いて、片腕だけで跳び箱のようにカノンの頭上を飛び越えた。
結果、カノンの最後の一発は外れ、彼女の背後でイザナミは体操の選手の最後にするYのようなポーズをとって楽しそうに笑っている。



「もー……あの腕は反則です!!」
「あら、マキナはあれの百倍以上の本数を捌くよ?まだまだだねーカノンは」
こうして見ていると、姉妹のように見えるような二人だな……
カナメが言うにはこの二人は俺がロシアに行っている間に色々あったらしく、それ以来初対面のような険悪さはなくなったらしい。
こうやって人間に価値を見出してくれればいいんだが、イザナミが言うにはカノン達のような気に入った人間は、
「人間風に言えばお気に入りのぬいぐるみかな?大事にもするし、夜寝るとき抱きしめたりする位好きだけど、引越しの時に邪魔になったら残念だけど捨てるしかないよね?そんな感じ、私に中ではマキナの大事さには比較にはならないね」
だそうだ。
やはり、そういう所の思考はアラガミなんだろうなと実感させられる。
とはいえ、今は別段何かするつもりもないようなので、一旦流すとしよう。いくら考えてもどうしようもない事を考えるのは趣味じゃないし、とりあえずこの仮の平和を満喫させてくれ。
明日には頭の痛くなるような仕事が待っているんだ、この位許してくれても……
「マキナー忘れてると思うけど今日の私からのお願いがあるんだよ?」
許されないらしいな。
いや、分かっていたさ。でも、時には現実逃避したくなるんだ、中身は人間だもの……
「で、今日の俺は一体何をさせられるんだ?」
「うん、ちょっとマキナと戦ってみたいなって」
珍しいな、イザナミからそういうマトモな要望が来るとは。
まぁ、昨日の要望みたいな抱き枕をやらされるよりは幾分気が楽だし、久し振りに本気が出せるというのは非常にありがたい。
「いいぞ、ただし……迎えが来るまでの十分だけだが、構わないか?」
「うん、というか長すぎだよ」
「それは重畳、じゃあ早いところ始めよう。カノン、少し離れててくれ、それと合図を頼む」
「はい、頑張って下さいね、マキナさん」
さて、観客いることだし、少しはいいところを見せるとするか。四肢を具足に変え、肩からマントを纏い、イザナミの前に立つ。
一方イザナミは先程とは比較にならない本数の腕が周囲に蠢き、カノンの合図を待ちわびている。
カノンは少し離れた高台で俺とイザナミを見比べて、深呼吸を一つ。
「始め!!」
カノンの合図と同時に両腕の具足から、レーザーを纏わせ切れ味を上げた刃を出現させる。逃げるならば、距離をとって銃撃からの寄ってきた腕を切り落とすという戦術が正解だが、今回は勝つための戦いだ。
少々無茶をさせてもらおう。
視界の全てを覆うほどの腕を切り裂きながら、少しずつ前へ進む。こいつとやりあった経験から、どうあってもこいつの間合いに入った段階でどの道黒い腕に捕まるのならば、まずはその数を減らすとしよう。
向こうの速度よりは身体能力を特化させた俺の方が速いようで、囲まれさえしなければ十分処理できる。そして、こうして正面から切り刻んでいる分には囲まれることも、そう起こり得ない。
仮に何本か回り込まれても、その程度の数ならば対応は可能だしな。
「うーん、流石にこれ以上は困るな。仕方ない、これが私の奥の手、根の国だよ」
直後人をその手の内に収められてしまうような腕が俺の真下から出現し、俺はその腕に捕らえた。どうやら、複数の腕を毛糸のように編み上げて出来た腕らしく、切断することもできないだろう。
「ふっふー、私の勝ちかな?」
「いーや、まだ終わってないぞ」
俺は四肢の具足の噴出口を全て外側に向けて、溜め込み圧縮した空気を更に圧縮する。これがお前の奥の手なら、こちらも晒そう。
数ヶ月前にやっと出来るようになった、空気の圧縮によるプラズマ化だ。一回の戦闘で具足一つにつき一発ずつが限界だが、威力は俺の持つ攻撃手段の中でも最強だ。
それを全て解放したのだから、流石のイザナミの腕も耐えきれず吹き飛び、彼女も驚きの表情を浮かべている。
だが、これでお互い奥の手を使い切った訳で、残りは地力による勝負だけだ。
自由になった瞬間に俺は両足に水蒸気爆発による加速をかけて、イザナミとの距離を詰める。対してイザナミは自分の周囲に残しておいた腕で俺を捕まえようと、数十本の腕を俺に差し向ける。
体は無事に腕を回避することができたがマントに絡みつかれ、マントを捨てることで腕を回避。
そこで僅かだが油断した、イザナミの腕を乗り切る事に重点を置いたために怪力を軽視してしまった。腕を越えた先には既に手刀を構えたイザナミのが待ち構え、俺の首を狙っている。
だが、俺は右腕に水蒸気爆発によるブーストを加え、手刀よりも速くイザナミの胴体を捉えようとする。
「………」
「………」
「「引き分けか」」
俺に首にはイザナミの手刀が添えられ、イザナミの腹部には俺の拳が触れている。お互い、攻撃までは一瞬だが確実に放った瞬間に、相手の攻撃も自身に致命の一撃を与えることは分かる。
「はぁ……油断はなかったんだけどな」
「俺としてはここまで強化しても引き分けってのが信じられないな、初めて会った時の戦力差が恐ろしいぞ?」
五年かけて引き分けか……あの時の俺じゃ文字通りの瞬殺されかねない差があった訳だ、本当に敵意を持たれていなかったことに感謝だな。
それに引き分けと言っても、俺は具足と体を限界まで酷使しての引き分けだ。対してイザナミは腕こそ数を減らしたものの本体は無傷、そして腕も既に回復しているのだから、本当にギリギリの引き分けと言うべきなのだ。
「あ、マキナさん、これ」
カノンが途中で脱ぎ捨てたマントを持ってきてくれたので、再び身に纏いながら明日の仕事に対して気が楽になった事を実感する。
イザナミ相手にギリギリとはいえ引き分けたのだ、ヴァジュラの亜種如きが多少群れようが、これに比べれば幾分マシだろう。





 
 

 
後書き
次回はゲーム序盤の大きなイベントの話です
ついでに原作主人公である神薙 ユウは文字通り人外レベルの強さで書く予定です 
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