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万華鏡

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第八十一話 寮生活その十

「それで身体もほぐしてるのよ」
「ううん、そういえば合宿の時も」
「あの時も」
 五人も思い出した、宇野先輩は合宿の時もお風呂を楽しんでいた。酒だけでなくそちらもだったのである。
「先輩よくお風呂に入っておられましたね」
「そうでしたね」
「そうでしょ、まあこれで筋肉痛も楽になってるから」
 そちらも安心していいというのだ。
「安心してね」
「はい、じゃあ」
「明日からも」
「部活頑張りましょう」
 筋肉痛が緩やかになっているから余計にというのだ。
「よくほぐしてね」
「はい、是非」
「そうしましょう」
 五人は先輩の言葉に笑顔で応えた、そしてだった。
 彩夏はその高見先輩についてだ、宇野先輩に怪訝な顔で尋ねた。
「あの、それで高見先輩の酒癖って」
「その悪さのことね」
「やっぱり胸とか」
「そう、あの時も凄かったけれど」
 宇野先輩はこう話すのだった。
「一年の時は危うくね」
「危うく?」
「脱ごうとしたり」
「脱ぐんですか」
「そうしようとしたのよ、泥酔してね」
「それはまずいですよね」
「まずかったわよ、しかも男の子達の前でね」
 よりにとって、という口調で話す先輩だった。
「そうしようとしてね」
「それで脱いだんですか?」
「皆で止めたわよ、その場でいた女の子全員で」
「それはよかったですね」
「他にもね、潤ちゃん騒いだりするから」
 酔うと、というのだ。
「テンション普段より上がるでしょ、飲んだら」
「はい、高見先輩は」
「それであまりにも危うくてね」
「男の子もなんですね」
「彼氏になろうってしないのよ」
「何か地雷みたいですね」
「ううん、地雷ねえ」
 そう言われてだ、宇野先輩は実際にだった。
 腕を組んでだ、こう彩夏に答えた。
「そうかもね、女の子のおっぱいも掴んできたりスカートのまま女の子の腰に跨ってきたりもするから」
「百合ですか?」
「百合じゃないけれど」
 それでもだというのだ。
「もう何してくるかわからないのよ」
「何処かの声優さんみたいですね」
「ああ、聞いたことあるわ」
 酒癖の悪い声優と聞いてだ、宇野先輩も言う。
「何か美人だけれど物凄い酒癖の人いるそうね」
「はい、私も聞いただけですけれど」
「酔って人に飛び膝けり出したりとかする」
「後ろから女の人の胸掴んでくるとか」
「そういう人ですよね」
「大体あの業界凄い人が多いらしいけれど」
 声優業界、特に女性のそこは伏魔殿とさえ言われる程恐ろしい個性の持ち主が揃っていると言われている。
「その中でも屈指らしいわね」
「屈指の酒癖らしいって」
「まあ潤ちゃんそこまではいかないから」
「流石にですね」
「ええ、けれどね」
 それでもだというのだ。
「近いものがあるから」
「だから男の人もですね」
「そう、彼氏がいないのよ」
「酒癖って怖いですね」
「あまり悪いと彼氏出来ないわよ」
 自分のことも踏まえて言う先輩だった。
「わかったわね」
「身につまされる言葉ですね」
「本当に」
 五人はしみじみとして述べた。 
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