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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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派遣社員になった訳だが……どうしよう
  19話

 
前書き
誤射姫を強化したらこうなりました……orz
18禁ゴッドイーターにならない限り、これは無理だと書いてて思いました 

 
ロシアを出るまで28回、日本に着いてから239回……この五年であの女と戦った回数だが、いくら外見は好みは言ってもいい加減疲れた。
最初は不意打ちということもあって呆気なく縛り上げられたが、二回目以降はある程度対応できるようになり、追い返せるようになったんだが、しつこ過ぎるぞ。
しかも、一向に正体は不明のままだし、何で俺に付きまとうか聞いても「君は私の全てだから」という、字面だけ見ればありがたい言葉ではぐらかされるだけ。
やりあって分かったことは、あの女の戦闘スタイルは俺のマントを極限まで特化したようなスタイルだということと、馬鹿げた怪力を持っているという事だ。
マントの方は簡単な調べでしかないものの、半径500mは自由自在に動けるようでその範囲内は文字通り奴の掌の上とでも言うような、精密かつ膨大な本数の黒い腕が襲ってくる。
一本一本はそれ程脅威ではなく俺のマントでも容易く切断できるのだが、上下左右前後全てから襲いかかってくるのだからたまったものではない。
加えて、切断には弱いものも強度は凄まじく、引き千切るというのは俺のあらゆる能力を持ってしても不可能だった。
次に怪力の方だがこちらもかなり厄介だ。
水蒸気爆破無しとはいえ、加速させた具足を平然と受け止めるような力の持ち主で、幸い技術はそれ程でも無いようで受け流すなどはしてこない。
とはいえ、以前あの女とやりあっている最中に間にヴァジュラが割り込んだのだが、女がヴァジュラの前足を両腕で掴むと紙でも破るような気軽さで、ヴァジュラを縦に引き裂いた時は流石にゾッとした。
正直、色々と考えたのだがあの女はどうにも、対俺用の装備で固めているとしか思えないようない。俺の戦闘スタイルである遠距離で弱らせて、近距離で必殺の一撃を放つという行動全てが無効かされている。
遠距離はそもそもあの女は簡単回避する上に、仮に当たったとしても無数の腕が何重にも重なって防御することで防がれる。あの腕にはどうやら切断以外ではマトモにダメージを与えられないようで、こちらの武器ではマントでしか破壊できない。
そして、近距離に至っては完全に勝ち目がない。
あの全方向から襲い掛かる無限とも思える数の腕を全て回避し、なんとか懐に潜り込んだところであの怪力で防がれる。水蒸気爆発のブーストを加えれば防御はされないだろうが、僅かに掛かる溜めの一瞬で腕に捕まって終わりだ。
遠距離から銃弾をばら撒きつつ、近付かれたら腕をマントで切り払って撃退という方法以外ではどうしようもない。
それに下手に打って出て負けた時の場合は最悪だ。
…………正直、思い出したくない。



まぁ、女の戦力は兎も角正体の方が俺としては重要だ。
俺と同じような俗に言う転生者という奴かとも思ったが、どうにもそれはないと戦って分かった。
確かに俺は体を自由に変化させることは可能だが、攻撃は基本的に人間の思考が追いつく範囲でしかできない。
簡単に言ってしまえば、百足のように無数の脚を生やしても思考は人間のままなので全ての脚を動かすということが出来ない、というように認識の限界とでも言うような具合にあくまでも人間が処理し切れるような動きしかできないのだ。
だが、あの女は数千本以上の腕を一本も絡まらせる事なく、別々の動きを行うということを苦もなくやってのけている。
確かに世に言う天才とでも言うような人間ならば、複数の物事を同時に考えられるような奴もいるだろう。しかし、数千もの物事を同時に思考できる人間など存在しない。
それを平気でやっているあの女はそもそも人間ではない可能性が高い。
となると、元々アラガミだった存在が変異してああなったというのか?あそこまでの知能をもって?
それに俺の思考を読んだあの能力といいあの女は一体……?
「マキナさん!!聞いてますか!?」
ん?ああ、カノンか。
「どうしたんだ?急に耳元で怒鳴って、何かあったのか?」
「何かあったのか、じゃありません。今日は一緒に任務に出てくれる約束ですよ」
ああ、そうだったな。
日本に帰ってきた俺はサカキの直轄部隊、第八部隊隊長という肩書きを与えられて、極東支部に組み込まれている。部隊と言っても俺一人なのだから実質はただの隠れ蓑に過ぎないんだが、今は一時的に第八部隊の一員という形でカノンは経験を積んでいるわけだ。
カナメがサカキの部下に近い立ち位置ということもあり、サカキがこうなるように取り計らったらしく、それについては別段なんの不満もない。
下手に他の部隊に行って、口を滑らせれ俺の事を暴露でもされると非常に困る。
その点に関しては問題ないんだが、はっきり言わせてもらおう……原作崩壊が僅かに起きている。
ゲームでは誤射姫の愛称で呼ばれていた台場カノンだが……確かに誤射はする、普通の奴の倍はする。
だが、そんなことより何というか……グロい事になっているのだ。正直、カノンは赤ん坊の頃から見ていたこともあって親のような立場で見ているのだが、そんな彼女がスプラッター映画も真っ青な行動をしているというのは、中々見ていて悲しい気分だ。
「どうしたんですか?」
「いや……世の中ってままならないなぁってな。さて、とっとと終わらせて帰るぞ」
「あ、待ってくださいよ、マキナさん」
「……下手に外にいるとあいつに見つかりかねん」
「え?何かいいました?」
「何でもない」
何でこんな四六時中あの女の事を警戒せにゃならんのだ…
「えっと……今日はコンゴウの討伐ですね」
「ああ、いつも通り自由に立ち回ってくれ。俺はあくまでお前のサポートという形でしか動かん」
「でも、危なくなったら助けてくれるんですよね?」
「ん?ああ、そりゃ当然だろ?」
実質身内のようなもんだからな、多分カノンが死んだら多分二度と立ち直れないだろうな。
あんな思いは五年前でもう十分だし、絶対にあんな事は二度とゴメンだ。
あの家族の事はもうある種の戒めになっているからな、あの家族に誓って俺は俺の関わった全てに関わり抜くって決めたんだよ。
全く、もう少し身長があれば頭でも撫でてやるんだが……既に背は並ばれてしまったからな。流石にもう諦めているが自分の背の低さが恨めしい……
「さて、行くぞ」
「はい!!」
銃型神機であるカノンを後ろに、俺としては慣れないが剣型神機を模した右腕で前衛の真似事だ。
流石にコンゴウを相手するのに具足など使った場合、一撃で倒してしまい教育にならない。このレベルの相手をするには相当の縛りが必要で、散々考え抜いた結果こんなゴッドイーターの真似事をする事になった。
ん?ああ、いるな。コンゴウ一体にオウガテイルが三匹、小競り合いの最中のようだな。
「カノン、どうする?」
「えっと……コンゴウから倒してから、弱いオウガテイルを倒す、でしょうか?」
「……分かった」
はぁ……左腕も準備しておかなきゃならんな。
「行くぞ!!」
俺はコンゴウの懐に潜り込み、右腕を振り抜く。切れ味も大分落としているのもあって、鈍い音が響くだけで刃は余り深く切り裂けない。
そして、後ろからカノンの砲撃音が聞こえたので、横に跳んで味方の援護という名の攻撃を回避する。
神機との相性良さゆえの威力の程はかなりの物で、俺の一撃でよろけていたコンゴウはその砲撃で仰向けに倒れた。
そして、いつもの声が聞こえる。
「ねぇねぇこの程度なの?あなたって!」
ああ……やっぱり、こうなってしまったんだよな。
まぁ、今はそんな事よりコンゴウから狙いを変えてカノンに襲い掛かろうとするオウガテイル二匹に、左腕を変化させた銃から高出力のレーザーを放つ。
一匹はそのままカノンに飛び掛かったが、これはミスではない。彼女はオウガテイルを視界の端に捉えた瞬間、神機の銃身をオウガテイルの大きく開かれた口に突っ込む。
オウガテイルもそれは想定外だったらしく、ジタバタともがいているが当然その程度でどうにかなるはずもなく、全くもって無駄な足掻きになっている。
「あはっ!綺麗に弾けなさい!」
そのまま引き金を引かれたオウガテイルがどうなったかは……空気を入れすぎた風船とでも言えば分かるだろう。
そして、恍惚とした表情を浮かべながら仰向けに倒れているコンゴウを見つけ、大砲型とでも言うべき神機を抱えて跳躍する。
その着地地点にはコンゴウの腹が……
カノンはその柔らかな腹を銃型神機で強引に突き破り、実に嬉しそうな表情を浮かべて何度も引き金を引く。
「その悲鳴、最高よ!!」
……さて、あの爆散したトマトからコアは取り出せるだろうか?


誤射姫よ

ゼロ距離射撃

やめてくれ

マキナ 季語なし
 
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