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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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アラガミになった訳だが……どうしよう
  4話

どうやら、死にはしなかったらしい。
ウロヴォロスの体は僅かに俺の体には届かずに俺の目の前で前のめりに倒れている、ただ………左腕が倒れる拍子に振り下ろされた触手で完全に潰されたようだ。
正直、痛すぎて悲鳴すらあげられず、思考もある種非常に落ち着いているのだが、どうやら感情の方はどうにも処理し切れていないらしい。
ここまでの怒りを感じたのは一体いつ以来だろうか?
まぁ、何だっていい折角目の前にウロヴォロスの顔面があるんだ、左腕のツケはある程度払って貰うぞ?
右腕をオウガテイルの尻尾に変える、ただし体の殆どのオラクル細胞を集めた現状最高の切れ味を誇る尻尾だ。
それをウロヴォロスの複眼に突き立てる、幸い尻尾は抵抗なく複眼を突き破り体内までその刃を届かせた。ウロヴォロスは慌てて体を起こそうとするが、もう遅い。
即座にウロヴォロスの体内で腕をオウガテイルの尻尾からコクーンメイデンに変化させる。
ここで少し解説の時間だ、コクーンメイデンは二種類の攻撃方法がある。
一つは俺もよく使う頭に付いた砲塔からレーザーを放つ遠距離攻撃、もう一つは腹部から無数の鋭い棘を生やして前方の相手を突き刺す近距離攻撃だ。
後者を俺が使わない理由は簡単だ、非常に当てにくいからだ。
アラガミとの戦闘では一挙一動の動きが非常に大きく、相手との距離は一瞬で変化する。
そのためゴッドイーターの使う武器は全て巨大なのだ、最も短く動きの激しい短剣であっても持ち手からの長さは人一人分はある。
で、問題のコクーンメイデンの棘だが、非常に短いのだ。贔屓目にに見ても人の腕より少々長い程度でしかなく、アラガミとの戦闘において全く役に立たないのだ。
あくまで至近距離での迎撃用のものでしかなく、通常の戦闘では当てられない。
だが、もしそれを使うとしたらどのような状況ならば可能だろうか?
相手が動くことなく、かつゼロ距離と言って差し支えない距離でならば相手の全身貫けるだろう。
つまり、どのような状況かと具体的に言えば……顔面に右腕を突き入れ、右腕を完全に相手の体内に固定した状態でその腕から無数の棘を生やす、詰まる所、今俺がウロヴォロスにしていることだ。
ウロヴォロスのくぐもった悲鳴が響き、俺は暴れ回るウロヴォロスの顔を思い切り蹴り、棘の生えた右腕をそのまま強引に引き抜く。
すると、棘は抜く時にウロヴォロスの内側をズタズタにしながら右腕と共に体内を脱出した。
左腕の分には程遠いが多少のオラクルは吸収できたし、何よりウロヴォロスの顔面が半分を消えてなくなったことが一番の成果だ。
起き上がった事でウロヴォロスはそのまま山を転がり落ち、かつ視界が半分無くなったのだからこちらを捕らえることは不可能だろう。
むしろ、そうでなくては俺の体は既に限界なのだから、しばらくは走ることもできないだろうし、今ならばオウガテイルにでも負ける自信がある。
なにしろ、強引に体のオラクル細胞を一点に集めたのだから、右腕を以外はかなりギリギリの脆さなのだからな。
おかげで、ウロヴォロスから離れる時に蹴った右足が完全に崩壊したのだから、全くもって笑えない状況だ。
恐らく、丸一日位はここで体の構造を組み直さなければ動くことすらままならん。右腕で地面を這いながら近くの木に壊れそうな体を寄り掛からせ一息つくと、先程のウロヴォロスが去って行く後ろ姿が僅かだが見え、心の中でざまぁみろと言いいながら俺は意識を失った。



目が覚めると既に日は沈み、周囲は完全に闇の中だった。
もっとも、アラガミにとっては暗闇などさしたる問題ではなにのだがな、体の様子を見ると殆どは回復していたが左腕だけは単純にオラクル細胞が足らないらしく、極端にか細くなり触れれば折れてしまいそうな枝のようになっている。
どうやら、しばらくの間は小型アラガミを狩り続ける羽目になったようだな、コンゴウのような中型アラガミの相手をするには些か不安が大きすぎる。
これ以降はオラクル細胞の一点集中は控えるとしよう、一撃必殺に近い威力にはなるが代償がこれでは釣り合いが取れない。
それにしても内部からのコクーンメイデンの棘は中々に強力だったな、思いつきでやったのだがあそこまでの被害を与えられるとは思わなかった。
今後も戦法の内に入れるとしよう、そうだな………ケルト神話から取ってゲイボルグと名付けよう、確か神話でもこの戦法と似たような武器だったはずだ。
投げれば三十の鏃となり相手を貫き、突けば三十の棘となり相手を破裂させる………考えてみると意外と実現可能かもしれんな、余裕がある時にでも前者の効果も試してみるとしよう。
まぁいい、今はそんな事よりも小型アラガミを探すべきだな、ウロヴォロスがこの辺りにいたおかげで周囲のアラガミは散ってしまったからな。
なによりも、当初の目的のためにも旅が続行できるような体にならなければ、この状態ではグボログボロを倒すのは少々の不安がある。
それに水中を問題なく活動するには一体では足りんだろうし、容易くそう大量に見つけられるとは思えんし時間の問題もある。
ウロヴォロスのような災害級のアラガミが暴れたんだ、確実に人間側の調査隊やらが来るだろう、流石ここで見つかるわけにはいかんぞ。
体の節々に地味な痛みは音楽でも聴きつつ……ってそんなオラクル細胞の余裕もないか。
全く、音楽もなし同行者なし明かりもなしの状態で見知らぬ山中で空腹、完全に遭難者そのものじゃないか。
しみじみとアラガミの体である事を喜ばなきゃならんな、まぁアラガミの体で無ければオウガテイルに喰い殺されてただろうがそれは言いっこなしだ。
はぁ…当面の拠点を探すためにも廃墟でも探すか、旅が開始数日でいきなりの中断、不幸にも程があるというものだな。そもそもこんな世界で旅に出ようとしたのだから当然と言ってしまえばそれまでなののだが、ここまでの傷を負ったのだ多少の愚痴は許してもらいたい。
どうにか夜明けまでにはこの山を抜けたいのだが、どうにもこの辺りの地形はかなり険しいようでやたらと谷やら崖が多く、アラガミの体でも少々厄介な道なのだ。
特に片腕が使えない今は尚更そういった谷やら崖は厳しい、岩が多いのであればそれを足場に飛び越えて行くのだが、その岩すらないのだから迂回する他ない。



はっきり言おうアラガミだからって山を舐めていた、所詮人外の力を得ても人型である以上限界はあるのだ。
調子に乗りすぎたな…ウロヴォロスの時といい負ける心配がない戦闘ばかりしていたのもあるが、やはりこの力にどこか浮かれていたのもあるのだろう。
俺の知るこの世界はゲームだったが、今ここにいる世界は間違いなく現実なのだ。
当然負ければ死ぬそれをどこか忘れていた、それは今後現れるであろうアラガミとの戦いにおいて非常に危険な状態だ。そう自分に言い聞かせながら歩みを進め、左腕が治るまでの間を過ごすための手頃な廃墟か何かを探す。
夜明けまでには山を抜けられそうにはないだろうし、山小屋でもあればいいんだが……そう都合良くある筈もないか。





奇跡とはあるのだな……大分痛んでいるが寺があった。
ウロヴォロスに追いかけられている内に随分と走ったらしく、あれから数時間歩いたところに入ると雪が降り始め、半ばヤケクソ気味に山を越えたところにこの寺を見つけたのだ。
本堂の方は屋根まで壊れているが、離れの方は大分原型をとどめているな。
ここに辿り着いた時は分からなかったが、ここはゲームでもあった寺だな。
あの街といい空母といい、妙に原作と所縁のある場所に行き当たるな。
まぁいい、そんなことより部屋の中は少々散らかっているが片付ければどうにかなるだろうし、この辺りにいるのはオウガテイルなどの小型アラガミが殆どで食料に困ることはない。
一週間程はここで体を休め、その後グボログボロを探すために海に出ようと思う。流石にそう何度もウロヴォロスレベルのアラガミとは出会わんだろうし、今後の旅は幾分か楽になるな。
とりあえず最初にやらねばならないのは、この散らかった部屋の片付けか……少しやる気が失せたぞ。










 
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