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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-3 Third Story~Originally , meeting of those who that you meet does not come ture~
  number-34 your name is

 
前書き




あなたの名前は


この場合は、三桜燐夜。高町なのは。フェイト・テスタロッサ。システムU-D――――ユーリ・エーベルヴァイン。


 

 


本来、出会うことの無かった者たち。それらが、出会い牙を向け合い戦う。一人は、望まぬ破壊の限りを尽くして。もう一人は、少女たちの力も借りて相手を止めにかかる。
そんな戦いをアースラの管制質のモニターから見る者がいた。


「…………」


神龍雅である。この魔法少女リリカルなのはの世界に主人公として転生したはずの少年は、追い詰められていた。いや、もっと正確にいるのであれば、三桜燐夜という存在が疎ましいだけなのかもしれない。あいつをどうにかして消したい――――その結果が、半年前のP.T事件である。
龍雅は燐夜に挑んだ。自らが所属している管理局を裏切るような行為をしてまで燐夜と戦い打ち倒すという一心で動いてきたのに、惨敗。切り札である約束された勝利の剣(エクスカリバー)は、八龍刃とかいう衝撃波がまるでヤマタノオロチみたいに迫る攻撃と同等だった。だが、若干自分の方が押されていたのも事実。受け止めなければならない現実である。しかもその現実は、もう一つある。
SSSランクに及ぶ機械兵二機を用いてまで戦っていたのに負けてしまったことだ。自力で向こうの方が上だった。


――――なぜ自分があの場所にいないのだろうか。――――それは自分が弱いからにすぎない。
――――なぜ自分がシステムU-Dと戦っていないのだろうか。――――それは自分では役不足であるからに違いない。
――――なぜあいつはあんなに強いのだろうか。――――それはあいつが血の滲むような努力をしてきたからに違いない。
――――なぜあいつは彼女たちからあんなにも信頼されているのだろうか。――――それはあいつが信頼できる人物であるからにすぎない。
――――なぜ自分は努力をしてこなかったのだろうか。――――それは自分が自分の力に驕りを持っていたからである。
――――なぜ彼女たちが努力していたのに自分はしてこなかったのだろうか。――――それは自分が最強だと世界もよく見渡さずに思い込んでいたからである。


まだ龍雅は10歳である。10歳であるのに後悔の数は倍を軽く超えていく。あの時こうしていれば。あの時こんなことをしなければ。そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回って龍雅を苦しめる。
あいつは自分が持っていないものをすべて持っている。憎い。憎い。殺してやりたいほど憎い。
龍雅の失意に陥っていた筈の瞳に光が戻り始める。しかし、その光は希望などではなく、復讐。自分が今こうして地面を這いつくばっているのはすべてあいつのせいだという勝手な思い込みから復讐心が沸々と沸き始めてくる。次第に手に籠る力が強くなってくる。自分が悪いんじゃない。あいつが悪いんだ。すべてあいつが。


「……セイバー、セットアップ」
《stand by ready! system all green set up!》


龍雅の首から下げられた十字架から機械室の女性の声が辺りに響いた。それもそのはず、管制室の中は先ほどから沈黙が続いているのだ。モニターからの音声もない。映像のみ。ハラオウン親子もモニターにくぎ付けで一言も発していなかった。バックヤードの皆もその手を止めてモニターを見ていた。そこに音を出せば当然響く。管制室にいる人たちの視線が龍雅に注がれた。


「っ!! やめなさい、龍雅君! あなたには待機命令が出ています。速やかにバリアジャケットを解除してデバイスをこちらに渡しなさい」
「うるせえんだよ、くそババア。てめえは黙って死んじまったクラウドの奴にでもケツを振ってればいいんだよ」
「なっ……! 待ちなさい!!」


龍雅はリンディに罵声を浴びせると起動したままであった転送ポートに乗り、地球の戦闘空間内に転移していった。それ追いかけるクロノ。リンディからの命令がないものの、執務官として命令違反と単独行動に移った彼を止めるために動いた。リンディは、眉間を抑え溜め息を一つ吐くとモニターに再び目を向けた。


この行動で神龍雅は、管理局にいられなくなる。位剥奪に管理局追放。一番重い罪だ。それでもかまわないというのか彼は。問題行動をこれ以上起こせばこうなると分かっている筈なのにまだ問題を起こすのか。――――分からない。リンディには彼が分からない。
クロノが龍雅を止めてくれるのを祈りつつ、地球の存亡をかけた戦いを見続ける。


      ◯


アースラでそんなことが起こっていることを知る余地のない戦い。燐夜となのはとフェイトは、システムU-Dを攻め続けていた。一度でも手を休めれば高威力の攻撃が飛んでくる。防御が固いなのはや燐夜ならまだいいかもしれないが、フェイトが当たると一発で退場である。それどころか、殺傷設定になっているため、命に関わってくるかもしれない。一瞬たりとも気の抜けない時間が続いている。


「バスタァァァーーーー!!」


桜色の砲撃が真っ直ぐ飛んでいく。それを見た燐夜は一気にシステムU-Dに接近する。フェイトもそれに続いて接近していく。なのははというと、砲撃を打ち終わった後すぐに誘導弾を放っていた。だが、その数も少ない。
それもそのはず、このギリギリの戦いをもう一時間近くも続けているのだ。普通の一対一などであればここまでかかる事はまずない。長くても30分といったところだろうか。だが、この戦いはそのどれとも当てはまらない。お互いのすべてをかけた総力戦である。


システムU-Dとしては、邪魔をするから倒す程度にしか思っていないのかもしれないが、なのはたちからして見れば何としてでもここで止めなければならない。
破壊の限りを尽くすと自ら豪語している彼女を止めなければこの地球が破壊されてしまう。それだけは絶対にやめたい。


「……早く退いてください……! 無益に殺めたくないです」
「嫌だっ!! 絶対に嫌だ! ここで退けたら地球が無くなってしまう。それだけは絶対に嫌だ!! だって、だって私は……っ!」
「「住んでいるこの星が大好きだからっ」」
「私たちは負けないっ」


システムU-Dの言葉に反応したのは意外にもフェイトだった。やはり初めてであった友達とのいろんな思い出が詰まったこの星を壊されたくないのだろう。それはなのはも同じでフェイトの言葉に被せてきたことから分かる。それは燐夜も同じだったが、もう一つ他に理由があった。
それはシステムU-Dに本当の名前を教えること。先ほど勢い余って叫んでしまったが幸いあいつには聞こえてなかったらしい。あいつに名前を教えるタイミングは、自分たちがこの戦いに勝った時。それ以外は有り得ない。


「どうして、この星を守るの? 分からない、私には分からない」
「そんなの簡単! 大好きだから。それ以外に何もないよ」
「この星が……好き?」


システムU-Dの攻撃の手が止んだ。見ると頭を抱えて何かを考えている。畳み掛けるなら今しかないが、なのはとフェイトが拒否した。もうすぐであの子が変わろうとしている。それなのに攻撃はしたくないとのことだった。あいつ等らしい。燐夜の口元に笑みが浮かぶ。甘い考えではあるが、燐夜はそれが嫌いではなかった。その考え方だからこそ、この世界の燐夜は、リインフォースから闇を抜き取ってどこか遠い所へと言ってしまったのだろう。燐夜は自分でそう考えながら自分で笑った。


一方、システムU-Dはというとある一つの考えに達していた。普段では有り得ないのだが、やはりどこかのプログラムにエラーが起こっているらしい。でもそのおかげであいつは別な考えを持てるようになった。これはこれで頑張った甲斐があったのかもしれない。システムU-Dはある感情が抑えられない。


自然と口角が上がる。今まで無表情でどこか悲しげな雰囲気を漂わせていた顔に笑みが浮かんでくる。これはシステムU-D自身にも何が起こっているのか分からなかった。けれど、どうでもよかった。この感情が抑えられない。この気持ちが抑えられない。この心地の良い気持ちが心の中を満たしていく。と同時に負けたくないという気持ちも心の中にあった。気づけばシステムU-Dは笑っていた。そこには確かにシステムU-Dとしてではなく、一人の少女として笑っていた。――――面白い。プログラム構築体となって久しく笑っていなかったシステムU-Dが……いや、ユーリが口を開く。


「私には破壊しかないと思っていた」
「ここにいてはいけない存在だと思っていた」
「けれども、あなたたちと戦っていて負けたくないと思った」
「あなたたちの生きるこの星を楽しんでみたいと思った」


笑ったユーリに対して驚きの表情を見せていたなのはたち二人は、喜びに顔を綻ばせる。そして燐夜は本当の名前を伝えるタイミングを今でもいいと判断した。


「俺からも一つ。お前と戦っているうちにお前の気持ちが流れ込んできたんだ。そしてお前の名前を知った。お前はシステムU-Dなんかじゃない。ユーリだ。ユーリ・エーベルヴァイン」
「……ユーリ…………エーベル、ヴァイン……」
「そうだ。それがお前の名前だ」
「私の……名前……。…………私はユーリ・エーベル、ヴァイン。私はこれからあなたたちに勝負を挑みます。名前は取り戻したけど、まだ完全じゃない。まだ私の中でエグザミアが暴走している。誰か止めてっ」


自分の名前を取り戻したユーリだったが、まだ戦いは終わらない。ユーリの中にあるとある魔力システム、エグザミアを機能停止させないとユーリは自分の意思を保ったまま破壊行為を行わなくてはならない。それだけは止めたい。
なのはたちに止める理由が増えた。けれども、最初の目的とはほとんど変わらない。ただ違うのは、守るという意識から救うという意識に切り替わったこと。


「ユーリちゃん、絶対に止めてみせるよ。だから少し痛いかもしれないけど我慢してね」


なのはが少し離れた位置から魔力の収束に入る。切り札であるスターライトブレイカーの発射シークエンスが始まった。
となると残された燐夜とフェイトにできることは一つ。魔力集束が終わるまで時間を稼ぐこと。やることが決まれば後は早い。一気に二人はユーリのもとへ向かう。


「エンシェント・マトリクス」


二人の目の前まで黒い魔力の塊が伸びて先端を中心に爆発を起こした。ドオン!! という爆裂音の中、フェイトが白く染まりゆく視界に捉えたのは少年の背中だった。それも自分の意中の少年のものではなかった。






 
 

 
後書き


超展開過ぎました。待たせてこのクオリティーは泣けてくる。申し訳ないです。


 
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