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美しき異形達

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第十三話 向日葵の紹介その八

「中学の時の先生でそうした人いたよ」
「横須賀にだね」
「そうなんだよ、凄くいい人だったのにな」
「欠点があったんだね」
「目茶苦茶酒癖が悪くてさ、時々それで教頭先生に怒られてたんだよ」
 そうした面がだ、その素晴らしい先生にあったというのだ。
「酔ったら何するかわからない人で」
「そういう人いるわよね」
 裕香もここで薊のその言葉に頷いて言った。
「寮の子でもいるわよ」
「ああ、あの広島の子と岡山の子か」
「そうなの、広島の宇野ちゃんね」
 その娘の名前も出してだ、裕香は困った顔で薊に話した。
「普段はいい子だけれど」
「あの娘酒飲むとか」
「結構だらしなくなって、高見ちゃんもだけれど」
「あの綺麗な岡山の子か」
「二人共ね。何かとね」
 これが、というのだ。
「脚とか胸がぎりぎりまで見えてなの」
「やばいんだな」
「宇野ちゃんなんかね、スカートとか浴衣の時は」
 はだけるそうした服を着ている時はというのだ。
「もう脚がぎりぎりまで、ってなるから」
「ギリギリかよ」
「あと数ミリで見える位なのよ」
「それはまずいな」
「高見ちゃんも胸がね、ギリギリまでだから」
「あの娘達の顔でそんなのだったら男傍にいたらまずいだろ」
「まずいもまずいっていうか」
 裕香は困った顔で薊に話す。
「こっちが不安になる位よ」
「そりゃまずいな」
「酒癖ってね」
「悪い一面だよな」
「そう、そこがね」
 困った顔のままだ、裕香は話す。
「あの娘達の悪いところなのよ」
「酒癖もなあ」
「悪い一面だからね」
「そう、難しいところよね」
「そう言うあたしもな」
 薊もだ、苦笑いで自分のことを言った。
「がさつで男勝りでしかも無作法だってな」
「自分で悪いところわかってるの」
「自分のことはわかってないと、って思ってな」
 それでだというのだ。
「自分でもな」
「自己認識ね」
「そう思ってるからな」
 こう話すのだった。
「それにあたし酒癖も悪くてさ」
「薊ちゃんもなの」
「酔ったら絡むしな、しかも大酒飲みだし」
「大酒飲みだったの」
「実はそうなんだよ」
 これが、というのだ。
「悪い一面って誰でもあるよな」
「それがないって人いないわよね」
「まずな」
 そうした人間は、だった。本当に。
 そうしたことを話してだ、智和は言うのだった。
「それでね」
「先輩のお祖父さんもですね」
「そうしたことをしていても不思議ではないね」
「そうなりますか」
 裕香は少し俯いて智和に応えた。
「人間ってわかりにくいものですね」
「人間が一番複雑かもね」
「わかりにくいものですね」
「うん、そうかもね」
 こう言うのだった、智和も難しい顔になっている。
「しかもお祖父さんには資金があって技術も設備もあったから」
「そうした研究が出来る、ですか」
「どうした設備はわからないけれど」
 それでもだというのだ。
「そうした秘密の研究所も持っていたそうだから」
「灰色、ですね」
 菖蒲がここでこう言った。 
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