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26歳会社員をSAOにぶち込んで見た。

作者:憑唄
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第八話 Xasarda

 
前書き
ソードアート・オンラインの二次創作、第八話となります。 よろしくお願いします。 独自解釈要素が増えてきました……。 自分の悪い癖です。 次回からはちょっとほのぼのに戻りたいです。 中二展開は確かにアツいんですが、好き嫌いがありますからね。今回は突っ走らせてもらいました。 作品内解説こと言い訳:ユイツーについて。 原作でユイはメンタルケアとか言ってましたが、普通に考えて元々1万人もプレイヤーがいるSAOに一人で対応って無理じゃないか、と思ったので、端末がいる可能性を配慮して出させて頂きました。 その内スリーとかフォーとか、亜種とか増えるかも。  玖渚のスキルについて:ドラゴンバスター→MapleStory内ドラゴンナイト同スキル ザサーダ:ロシア語でまちぶせ、伏兵の意。 昔某ゲームにいた本物のMPK、横、詐欺師を参考にしています。 ホースキラー→RedStone 同名槍 ニコニコに内容と連動する動画投稿してもらいました→//www.nicovideo.jp/watch/sm19174284 

 

 扉を開いた先に何がいるのかは大体想像できていた。
 故に、別に驚きはしなかった。
 月夜の黒猫団の面々……。
 だが……見知らぬやつが一体、いや、二体。
 黒髪の少女と、やたら凛とした顔の槍を持った女性。
 女性は見たところ、二十台前半、と言ったところか。
 ポインターが緑のところを見ると、あれはちゃんとしたプレイヤーなのだろう。
 紅色のストレートな長い髪に、ピュアホワイトとファイアレッドを基調とした外套のような服。
 その手に持つ槍は、人の丈よりも遥かに長く、鎌と槍を合わせたような形をしている。
 ……特殊リーチのあの槍、知ってるぞ。
 露店じゃ5M以上で取引される超火力型のランスで……高級品だ。
 確か、ホースキラー……!
 STRを上げてなきゃ装備できない重火力型の武器を、よくまぁ装備したもんだな……。
 そう思いながら、構えると、見知らぬ二人は口を開く。
「始めましてこんにちは。 まずはここまでたどり着けたことを素直に祝福します。 おめでとうございます!」
 そう言って、少女は手を叩く。
 それに合わせるように、隣にいた女性も手を叩くと。
「いやはや、待っていた甲斐があるというものだ。 屈強な精神力を持つ人間しかここに辿りつくことは出来ない。
今までここを訪れた者は20にも満たない。 まぁしかも、その大半が……」
 そこまで口にし、一度区切った後、笑顔でこちらへと視線を向ける。
「大体はここでリタイヤしてしまうらしいのだ。 ああ、安心したまえよ。 別にここをクリアしなくてもクエストはクリア扱いになる。
ここは言わばボーナスステージ。 クリアした者はいつでも、好きな時にこのダンジョンに入れるようになるという恩恵がある。
しかもいつでもクエストを受けられるというオマケつきだ。 私はここをクリアしたからこそ、寝床にさせてもらっているがね」
 そう言って、女性はクスクスと笑う。
 ……趣味悪いな……コイツ。
 こんなところに、住みたくねぇ。
 大体、こんなクエスト、1回やれば十分だ!
「へぇ。 なるほど、ね。 で、アンタらはなんですかね? こちとら人見知りでね、素性を名乗ってもらわないと緊張しっぱなしなんですよ」
 あくまでも、初対面故に、紳士的に接して見るが……。
 そんな俺の言葉を聞いた瞬間、目の前の二人は笑った。
 先に口を開けたのは、黒髪の少女。
「ああ、ごめんなさい。 私はとある人工知能の端末の一体。 MHCP001-2 本来の用途はカウンセリング用なんですが……とある不祥事でバグが溜まりましてね。
それを解消するために、このゲームを司るカーディナルが定期的にこのクエストを開く形で解消させてもらってるんですよ」
 そこまで、無邪気な笑顔で口にした後。
 徐々に三日月に変化する口元と、徐々に顔に影を作りながら。
「いやぁ、面白いですよね。 人の感情が動く様は。 負の感情で苦し、悶える様は……! AIとして非常に勉強になりますよ。
私の生みの親、カーディナルも素晴らしい世界を作ってくれたものです。 ここは楽園なんかとは程遠い、まさに地獄ですよ」
 そう口にして、怪しく、不気味に笑ったかと思うと。
「そんな中でこそ、そんな地獄でこそ、私のようなカウンセリング用、精神的ケアを司る存在が必要なんですよ!
全てのプレイヤーが私を必要としてくれる、私無しでは生きられない。私という存在が最重要視される!
そんな環境、それを、もっと前面に押し出すべきなんです!」
 興奮した様子で、そう口にすると、少女、否、MHCP001-2は、少しだけ落ち込んだ後。
「けれど、残念なことに、地獄はまだ完成していません。 このクエストの中は地獄でも、外の世界はいつも通り。
それじゃ私はつまらない。 だから、カーディナルと約束したんです、このクエストで100人を傀儡にすれば、私は夜中限定で外に出られるって!
しかも、この傀儡達を連れて、外に出れる! 故に、完成するんですよ! 私が! この私、ユイツーが! 最も必要とされる世界が!」
 それだけ言って、MHCP……、いや、ユイツーは、抑えられなくなった笑いを溢すと。
 隣にいた女性が、手を叩いた。
「いやいや、素晴らしい、あまりにも素晴らしい発想。 彼女の存在意義を最も生かすことの出来る世界で、彼女は最もそれを望んでいる。
ならばそれを叶えさせてあげるのが我々プレイヤーの役目だ。 NPCが望むことをクリアしてこそのクエスト。
それを仲間達とこなしてこそのオンラインゲーム。 故に私は彼女を支持する。 そのための条件達成を手伝いながらね」
 そう言って女性は、こちらを見た後、ニタ、と冷ややかな笑みを浮かべた。
 ……コイツら……。
「イカれてるよ……! NPCが、AIが生きてる人を殺してまで自分の存在意義を確率させるなんて……」
 俺が口にする前に、玖渚がそれを口にする。
 まぁ、確かにイカれてはいるわな……。
 しかし非常にわかりやすくてよろしい。
「とりあえずなんだ、アンタらは、俺らをPKでもしようって口なんだろ」
 ため息をつきながらそう言って武器を構えると。
 女性は含みのある笑みを浮かべた後。
「PK? いやいや、私はそんなダイレクトなことはしない。 故に、このグリーンポインターだ。
あくまでも合法的に、合理的に、君たちをこの場から消させてもらおうと思う。
ああ、先に言っておくが、この空間は転移結晶は使用不可能だ。 逃げるなら後ろにある扉から逃げたまえ。
あくまでも、ここはボーナスステージなのだからね」
 そう口にして、女性は手に持ったホースキラーを二、三度、真紅のエフェクトを輝かせながら振るった後。
 こちらに向けてその矛先を見せて、魅せた。
「まずは自己紹介をしよう。 私の隣の彼女はユイツー。 このクエストの支配者で、私のパートナーだ。
そして、私は……」
 そこで女性は一度区切った後。
 冷ややかな笑みを浮かべながら、その名を、口にした。
「レッドギルド『Dirac』序列四位、MPKのザサーダだ」



   【Dirac】[序列四位]
       [MPK]
     Xasarda[ザサーダ]
      ―засада―
     《伏兵》Lv50



 ディラック……!?
 俺らのギルドの名前と同じじゃねーか……!
 嫌な偶然もあったもんだ……。
 いや、実際ネトゲでは同じようなギルド名が被るのは珍しいことじゃない。
 英語か漢字かでも変わってくるわけだしな……。
「俺は、ギルド『ディラック』、グリュンヒル使いのアルスだ!」
「同じく、『ディラック』、泥棒の玖渚!」
 同じく自己紹介を済ますと、ザサーダは笑みを浮かべ。
「成る程、偶然というのはあるものだな。 よもや同じ名前のギルドとは。
これは中々期待せざるを得ないな!」
 ザサーダは叫ぶと同時に、そのホースキラーを地面へと音を立てながら振るうと。
 その音に反応したように、周りで待機していた、黒猫団のゾンビ共が一斉に襲い掛かってきた!
 五対二。
 しかもあっちは、装備を見たところ、盾役あり。
 あんまり気は進まねぇが……、先に盾役を買ってるサチを潰すしかなさそうだな。
「玖渚、聞け! まずはサチ……いや、あの盾役のゾンビから潰すぞ!」
「了解! さっきの分はここで挽回するよ!」
 二人でターゲットを盾役に絞り、他を無視して攻撃を開始する。
 だが、その前に。
 突如、俺の前にノックバックが発動し、盾役の前から飛ばされた。
「ッ!? なんだ!?」
 あたりを見渡すと、ザサーダが、怪しく笑っていた。
 もしかして……アイツ……!
「一人を集中して狙うのは頂けない。 五人もいるのだから、同時に踊ってみるべきだ。
でなければ興が削がれてしまう……」
 エフェクトを振りまきながら、槍をその場で振り回すザサーダを見て、ようやく理解した。
 あのホースキラーという槍に注目してばかりだったが……。
 あいつは、槍使いじゃない……!
 このゾンビを操る……ビーストテイマーだ……!
 さっきのノックバックも、恐らく、盾役に目が行っていた俺達を止めるために。
 視界の外から他のやつに、ノックバック発生攻撃を意図的にかましたな……!
 しかし、そんなことを思ってる間にも。
「っうお! あぶねぇ!」
 四方八方から、ゾンビ共の攻撃の雨!
「アルス! 何してるの!? ちょっと! マジでもたないって!」
 玖渚も防戦一方だ。
 攻撃を防いでいる間にも、背後から攻撃がやってくる。
 結果、どちらにしろ攻撃を受けることになる!
 くそ……! 本当はとっととザサーダを倒したいが……。
 あいつはグリーンポインター。
 俺が攻撃したら俺がオレンジポインターになっちまう。
 そうなりゃ、ギルドの面々に迷惑をかけることとなる……。
 この場合、玖渚に頼むべきなのだろうが、あんな小さいやつにPKなんか頼めるはずがない……!
 だから、まずは、このゾンビ共の対処が先!
「玖渚! 壁側だ! 壁を背にして、攻撃を受ける範囲を限定する!」
「わかった! 回復ポーションを使いながら壁に逃げよう!」
 そんなやり取りをし、一度壁側へと撤退。
 同時に、わずかな間に減った体力を回復。
 さて……ここからだ!
「玖渚、俺はバーサークを使う! 俺の体力が減ったら回復結晶かなんかででも回復頼めるか!?」
「ああ、わかったよ! 少しでも数を減らしてね!」
「任せろ!」
 これで、一気に相手に大ダメージを……!
 そう思い、発動しようとした瞬間。
「う、お……あれ?」
 突如、目の前に浮かぶ、スキル発動不可表示。
 なんだ……コレ。
 そう思った直後、ユイツーの声が聞こえる。
「あはは! そんな強化系スキル、使わせるはずがないじゃないですか。
このクエストの支配者は私なんですよ? 一部のスキル制限くらい簡単に出来るんですよ」
 ……マジかよ!
 コイツは……マズいぞ……!
 襲い掛かってくるゾンビ。
 対応して、反撃の期を伺う俺と玖渚。
 攻撃力は俺や玖渚のほうが上だ……!
 しかし、手数では圧倒的にあっちに分がある。
 回復ポーションを使う暇もないっ……!
 一体、一体でも減らせれば……!
 ……待てよ、一体?
 だったら……一か八か!
「玖渚……ちと盾役頼んだ!」
「え、ちょっと!? そんな無理ゲーだって!」
 必死に相手の攻撃に対応する玖渚を横目に、俺は、剣を大きく振りかぶる。
 飛んでくる攻撃で、HPがゾリ、と削られる。
 一秒。
 相手からの連撃。 輝くエフェクト。
 二秒。
 HPバーが黄色に変化する。 残りはもうない!
 三秒!
「リミッター! ブレイク!」
 三秒間のみの、短縮溜め!
 しかしこれでも……!
「………ッ!????」
 目の前で攻撃していた、ダッカーのHPが一気に0に変わる。
 そこを、突破口にする!
「輝けッッ!!!」
 アバンスラッシュ、グランツァでその間を駆け抜け。
 同時にコンボを発動。
 振り向きながら発動することで、めくり効果が発動。
 隣にいたケイタに六連コンボを叩き込む!
「……ビーターのお前なんかがァァアアアアアアアアッ!」
 最後に、歪んだ悲痛な叫びを上げて、テツオが消える。
 残りは三人!
「手数が減った! 今なら!」
 玖渚がそう叫ぶと同時に、スキルを発動させる。
 あれは、昆スキル、一部派生からなる、攻撃スキル……!
「ドラゴンバスタァァァァッ!!!」
 青白いエフェクトと共に放たれる、上段、中段、下段を一斉に攻撃する三連続攻撃。
 発動中および発動後は多少のラグが訪れるが、その攻撃力は……!
「ありがとう、さよなら……」
 盾役のサチをその場から消すには十分すぎる攻撃力だ!
 しかもバードナセの恩恵で全部クリティカル。
 相変わらずチート武器だ……。
 しかし、今の台詞は誰に向けてかけられた言葉なんだ?
 まぁ、俺にはどうでもいいことだが、悔いの無い人生を送ったみたいだな。
 それがわかりゃ、俺は十分だ!
 玖渚が硬直している状態で、すかさず俺が残った二人との間に入り、盾に徹する。
 こうなれば、あとはもう時間の問題だ!
「玖渚、回復頼む!」
「了解! 回復アイテムは死ぬほどあるからね! 金持ちナメんな!」
 HPバーが回復していくのを確認した後。
 残っていた二人、タツオ、ササマルに対して、攻撃を再開する!
「覚悟しろよ! 俺が死者に甘いなんて思ったら、大間違いだゴルァァアアアアアアアアアッ!!!」
 テツオに体術スキルの回し蹴りをぶち込み、ノックバックを発動させる。
 ダメージは大してないが、これでテツオとササマルの間に距離が出来た。
「玖渚、ソイツを頼んだ!」
「了解!」
 ササマルを玖渚に任せ、俺はメイス使いのテツオの前に立ちはだかる。
「ようテツオ……? 14層以来じゃねぇか、なぁオイ? 随分遅い挨拶になっちまったけど、ちゃんと頑張ってるか?
他のメンバーが濃い中、空気化なんかしてんじゃねぇぞオイ!?」
 どうせゾンビに言っても何の意味はない。
 だが、そう言わずにはいられなかった。
 きっと、これで会うのは最後になるんだろうからな!
「………」
 テツオは答えない、何も言わない。
 そうだろうな……!
 まぁ、せめてゆっくり眠ってくれ!
「行くぞオイ!?」
 グリュンヒルを振りかぶり、テツオに攻撃しようとした、その瞬間。
 俺の行く手を、一本の槍が防いだ。
「まぁまぁ、待ちたまえよ。 そう急くことはない。 急いだところで何かあるわけでもない。
彼を倒されると私もそろそろ困るのだよ。 故に、妨害をさせてもらおう」
 その言葉と共に、ザサーダが俺の前に現れる。
 ……元凶の、MPKか……!
「アンタのホースキラーは、確かに脅威だ。 だが、ビーストテイマーなら、どうせ槍スキルはたかが知れてるんだろ?
なら、大剣スキル特化型の俺とは相性悪いんじゃないのか?」
 俺が一応、そう退くように促すも。
 ザサーダはクスクスと笑みを浮かべた後。
「ビーストテイマー、ね。 まぁ確かに私はソレだ。 しかし、ビーストテイマーはそのスキルだけ特化させてるとでも思っているのかな?」
 そう口にして、ザサーダは、その槍を振るい、俺の大剣へと当ててきた。
 その瞬間、一瞬、グリュンヒルのグラフィックがブレる。
 ……耐久性が、著しく低下しただと?
 俺のグリュンヒルは、重ねられた強化でちょっとやそっとじゃ折れない耐久になっている。
 それを、一気に低下させるほどの攻撃……!?
「面白いことを教えてあげよう。 私はね。 槍、昆、大剣、直剣、細剣、戦槌、メイス、ビーストテイマーの熟練スキルは全て500を超えている。
特に槍、直剣は800を突破していてね。 便利上ビーストテイマーをやっているだけで、槍であろうとなんであろうと使えるのだよ。
まぁ私の場合、STR特化型故に俊敏さには欠けるのがウィークポイントか」
 そう言いながらザサーダはぐるぐると槍を回すと。
 真紅のエフェクト共に、こちらへと矛を向けてくる。
「レベル差がどうしたというのかな? 大剣と槍の相性がどうだ? SAOはSNS等と違ってプレイヤースキル依存型のネットゲームだ。
私のプレイヤースキルに敵うと思っているのかな?」
 我が物顔でそう口にするザサーダに。
 俺は、躊躇い無くグリュンヒルを向ける。
「ああ、思ってる。 オレンジポインターになろうと構わねぇ。 お前は危険だ。 ここで潰させてもらう」
「人殺しにでもなるつもりかい?」
「牢獄へぶち込ませてもらうさ」
 その言葉に、ザサーダは笑った後。
「くくく! 面白い! これは中々どうして面白い! 逃げるという選択肢もあるというのに!
いや、ユイツーの話では、大半のプレイヤーがここで逃げるらしいというのに!
このザサーダに、MPKにどうして敵うと思うのか! たかが一般プレイヤーが、たかが強化型大剣で、このレア武器のホースキラーに!」
 そう口にするザサーダに。
「うるせぇな! 社会人ってのは、逃げるなんて選択肢はねぇんだよ! やるしかねぇんだよ!」
 俺は、痺れを切らし、大剣を振るう。
 その瞬間、ザサーダは一歩後ろに下がったかと思うと。
 隣にいたテツオにスキルで指示を与える。
 同時に、テツオはスキルエフェクトを振りまきながら、俺へと襲い掛かってきた。
「じゃあな、テツオ!」
 初撃は、体術スキルの足払い。
 それを避けたことを確認した後、踏み込み。
 脳天に一撃を叩き込む。
 足払いを避けたばかりのテツオは、当然それを回避できず、直撃。
 しかし、あまり体力が削れた様子は無い。
 硬い……!?
 なら、間髪入れず、二撃目に移る!
 下からの振り上げの最中に、手首を捻り、大剣の腹で攻撃を当て、斬撃を打撃に変換。
 テツオはそれを、対応速度を明らかに超えたメイスでガードするが、ノックバックが発生。
 恐らく……ザサーダがテツオのキャラをイジったな。
 だが、これはこれで好都合!
 相手が吹き飛ぶその直前に。
 左手を一度フリーにし、吹き飛ぶテツオの胸倉を掴み。
 そのまま地面に叩き付けた後、上から、突き刺すように、その胴に一撃を叩き込む!
「………!!!!!」
 声にならない声を上げて、テツオはそのまま、消えていった。
「……おし、残りは、ザサーダ、お前だけだ」
 俺は大剣を地面から引き抜き、ザサーダへと視線を移すと。
 ザサーダは、歪みきった笑みで、こちらを見ていた。
「ふ、ハハハハハハハ! 君はなんて野蛮な戦い方をするのか! それが元友人に対してやる仕打ちか!?
足払いに掴み技、投げ技、通常のモンスターに対しては殆ど無効と言える技だというのに。
しかしリアルに体を動かせるSAOならではの技でもある! まるで君の戦い方はSAOならではのPKだ!
これは愉快だ、これは素敵だ! 訂正しよう、君はただの一般プレイヤーではなく、グリーンの皮を被ったPKだ!」
 ベラベラと喋るザサーダに、苛立ちを覚える。
 コイツは……何を言ってやがる。
 あくまでもこんなのは、ドワーフとかの人間に近い敵に対しての独自の攻略法だ。
 まぁ……PKにも使えるってのは、あながち間違いじゃあないけどな……。
 そう思いながら俺が大剣を構えたその瞬間。
 ザサーダは、躊躇い無く、その槍を振りかぶり。
「いやしかし、モンスターが消えてしまってはMPKとして、PK相手には、こちらの分が悪い。
君の背後にいる彼女の戦闘も終わってしまったようだしね。 これは日を改めてさせてもらうことにするよ」
 そう口にして、槍をその場に突き刺す。
 すると、ザサーダの周りに炎のようなエフェクトが現れ、俺とザサーダの間を阻んだ。
「なんだこのスキル……見たことねぇぞ……!?」
 思ったことを口にすると、ザサーダの横に、陽炎の如く、冷たい表情のユイツーが現れる。
「スキルじゃ、ありませんよ。 ただのキャラクターに対するプロテクト、文字通りファイアウォールです。
彼女は私の協力者故に、ここで死なせるわけにはいきませんからね。
この場は逃げさせてもらいますよ。 ああ、あと」
 そこでユイツーは区切った後、作った笑みをこちらに見せて。
「ぱんぱかぱーん、ボーナスステージクリアおめでとうございます♪
報酬はなんと、参加者全員レベル+3となります! しかもオレンジポインター免除に、スキル熟練度+100のオマケつき。
とってもおいしいクエストですからまたチャレンジしてくださいねー。 報酬はNPCからもらってください!」
 それだけ口にして、二人はその場から消える。
 ……二度とやるかよ、こんなクエスト……!
 心の中に、なんとも言えない後味の悪いものを残して、俺はただ、ヤツらが消えた空間を見る。
「アルス、終わったの?」
 隣に掛けてきた玖渚が、俺に対してそんな疑問をぶつける。
「……このクエストは、な」
 そう口にする俺ではあったが。
 なんとなく、わかっていた。
 クエストは終わっても、あいつらとはまだ終わってない。
 これから先も、会うことがあるであろう可能性を……。




―――――





「いやしかし、いささか遊びすぎたようだ。 同じギルド名ということで少し興奮してしまったよ。
しかし実力を測ることには成功した。 それに、ユイツー。 彼らのデータはもう出てるんだろう?」
 とある層の洞窟の奥深くの圏内エリアで、ザサーダがそう口にすると、ユイツーは無邪気な笑顔で言葉を返した。
「そうですね。 データはアイテムとして送っておきますよ。 ただ私はあくまでもバグで、端末ですから、あまり出た真似はできません。
あくまでもあのクエストを受け持ってるだけですから、今みたいなエリアじゃ殆ど無力です。
カーディナル側からも先ほどのプロテクトに対して警告が来てますし。 職権乱用は控えないといけないですね」
「いやいや、今のままでも十分だよ。 さて、このアイテムはウチのギルドにメンバーにも配っておくとしよう。
グリュンヒル使いのアルス、泥棒の玖渚。 この二人は、将来的に障害になる確率が高そうではある」
 そう言ってザサーダは先ほど得たアイテムを開き、データを観覧する。
 そんな中。
 風切り音と共に、一人の影がその場に現れた。
「成る程。 この二人に存在が知られたのは痛いところではあるな。 ザサーダ。
我らDiracは、あくまでも影の存在でなければならない」
 その言葉を口にしたのは、その場に現れた影こと、天国の扉。
 ただ無表情で、ザサーダの観覧しているデータを、背後から確認した。
 そこに、さらに、グリーンポインターと、オレンジポインター二人の影が現れる。
「全くですよ、天国の扉。 あくまでもこっちは表面上はいい人なのでね。
こんなところで表の信用をなくしたくはありません」
 新たに現れた一人の男性がそう口にすると、隣にいた別な男性も笑みを浮かべる。
「まぁ俺はどっちでもいいんだけどよ。 しかし、アルス、ね。 しかもグリュンヒル使いと来たもんだ」
 そう口にして、男性はザサーダの前へと現れる。
 その男性を見て、ザサーダはニタと、笑みを浮かべた後。
「やぁ、始めまして。 天国の扉から話は聞いてるよ、君がDiracの序列三位だね。
確か、狩場荒らし兼デスデュエル専用の……」
 そこまでザサーダが口にした後、男はニタつき、背中にあった、その武器を見せ付けるように手に持つと。
 その己の名を、高らかに宣言した。
「おう、俺がグリュンヒル使いのUsuraことウスラ! 狩場荒らしとHPが0になるまで戦闘するデスデュエルを専門としてる。
同じグリュンヒル使いとして、スペルが逆のアルスには、是非会ってみたいもんだな」
 そう口にするウスラの口元は、三日月型に歪んでいた。
 まるで、面白い獲物を見つけたかのように。
 そんなウスラを見て、天国の扉は薄く笑った後。
「ならば、私が近いうちに様子を見てくるとしよう。 暫くは泳がせておくが、このギルドのことが広まる前に処分しておかねばならない」
 そう口にして、天国の扉はその場から風の音と共に消える。
 残された四人の中。
 ユイツーの専用モニターに映る、町で報酬を受け取るアルスと玖渚の姿があった。 
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