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原作に介入=生 不介入=死 何だ!この世界は!

作者:zinn
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32話

夕はその後、行われた地区予選会、都市本戦と順調に勝ち進んでいった。(セコンドには剣がついている)次に行われるのは都市選抜大会、この大会で世界代表が決まる。

都市選抜当日、

夕は準決勝まで勝ち抜いていた。今は散歩中である。会場の外を歩いているとヴィヴィオくらいの年代の少年逹が格闘ゴッコをしていた。大会の熱気に当てられたのだろう。「僕もいつか大会で優勝するだ」や「僕だって」など夢のある声が聞こえてくる。

夕は歩きながら何気なくそれを見ていた。そうしていると、ある男が夕とすれ違う。

「あの子ら キモいな」

そんな声が聞こえた。夕は思わず振り返りその男を見た。その声の主は男の子逹を見て止まっていた。長身で手足の長い男だ年齢は15、16といったところだろう。

「キモいな」
また同じ言葉を放った。男の視線からその言葉が格闘ゴッコをしている少年逹に向いているのがわかった。

「教えてやる必要があるなぁ」

男は少年逹の方へ歩いていく。夕は嫌な予感がしてその男から視線を反らさず様子を見ていた。男は少年逹に何かを話している。少年逹が男を見て喜んでいる様子がわかり。男が有名人であることがわかった。嫌な予感は収まらない夕は男と少年逹に近づく。そして男が少年逹の夢を壊すことを言うのを止めに入った。

「君達、そんなことして無駄だ。世の中才能が全てだ。君達は才能がな「おい」何だ君は?」

肩を掴まれた男は振り返る。

「僕は親切にこの子逹にも現実を「黙れ。何が親切だ。てめぇはただその子逹が気に入らないだけだ。偉そうにその子を否定しようとしてんじゃねぇ」

夕は男の肩を放して。少年見る。

「悪いな君達。こいつのことは気にしなくていいから、あっちで遊んでてくれ」

夕は笑顔で少年逹に離れるように告げた。少年逹も男の放つ奇妙な雰囲気を感じていたのか大人しく離れていった。その間、男は夕を見て頷いていた。

「君、ユウ・ミカワ君だね。僕の準決勝対戦相手の」

そうか。少年逹が目を輝かせていたのはこいつが選手だからか。

「へぇ。てめぇ、選手だったのか知らなかったよ」
「それは残念。それでどうして止めた?せっかく才能のないあの子逹に別の道に進ませるチャンスを与えてあげようとしたのに。まさか、あの子逹の夢を守るためとか言わないよね?だとしたら君、キモすぎだよ」
「俺から見たらお前の方がキモいな。後、止めたのは見下し精神丸出しであの子逹を説教しようとしたお前が気に入らなかったからだ。お前と同じだよ」

夕がそういうと男は気持ち悪い笑顔で夕を見ていた。

「同じ、僕は善意なのに?」
「自覚がないなら重症だ。一回医者に見てもらえ。てめぇはとっとと控室に戻れ」

夕は暗に少年逹に近づくなと言っているのだ。

「ふ~ん。言いたいことはあるけど。それは試合中に言わせてもらうよ。ではまた」

男は去っていった。夕も自分の控室に向かう。その背中には先程まで感じられなかった闘気を纏っていた。


控室。

剣は前の試合以上に真剣に精神統一している夕を見て疑問を覚えていた。

「ねぇ夕。さっきと様子が違うようだけど、どうしたんだい?」
「ちょっとうざい奴とあってな。叩き潰してやりたいって何故か本気で思った」
「珍しいね。夕がそう思うなんて」

夕は基本的に特定の誰かに敵意を向けることは滅多にない。身内や友人に害が無ければ基本どうでもいいのだ。

「自分でもわからん」

そこに選手呼び出しのアナウンスが入る。

「時間のようだ、行くぞ剣」
「了解」

二人は控室を後にした。
バトルフィールドに着くと選手紹介のアナウンスが行われていた

「次の試合は両者ともに大会初出場の選手です。あらゆる敵を拳ひとつで薙ぎ倒してきた。剛腕の持ち主、ミカワ・ユウ選手。独特の動きと計算されつくした戦法で敵を完封してきた狡猾な狩人、ハマー・ファンクス選手!」

夕と先程の男、ハマーがフィールドに上がる。

「先程はどうも」
「………」

夕はハマーに無言で返す。

「あれから考えてたんだ。やっばり君、キモ「だまれ、てめぇを見てると虫酸が入る。試合開始まで黙ってろ」

夕もどうしてかわからないがハマーを見ているとやる気を通り越して苛々しくのだ。夕は開始位置に移動し体勢を整えた。そして心を研ぎ澄ませていった。

「試合を開始します」
開始のアナウンスが流れる。

「先手は僕だ」

ハマーは一発の白い実体弾を作り出し投げつけてくる。狙いは夕の上半身の中央。速度もそう早くない。夕なら簡単に叩き落とせるレベルだった。しかし、嫌な予感がした夕は実体弾を最低限の動きでかわす。実体弾は夕の顔の真横を通過して後ろの岩にぶつかる。
べちゃ。
しかし、ぶつかった音は通常ではあり得ないものだった。夕は気配察知を全開にしながら後ろを振り向いた。そこにあったのは。白い液体が付着した岩だった。
何だ、あの白い液体は?

「よそ見はいけないなぁ」

夕が後ろを向いた隙をついてハマーが先程と同じ実体弾を複数、作り出し 今度は浮遊魔法で自在に操り飛ばしてくる。全てを避けるのは難しいと思った夕は謎の実体弾を乱脚で撃ち落とす戦法をとった。乱脚とぶつかった謎の実体弾はあっさり壊れて白い液体となる。そして地面に落ち、先程と同じ音を立てる。

「強い刺激を与えると液体になる実体弾か」

あの液体もただ液体とは違うようだし、奇妙な奴だ。

「ありゃりゃ、一発も君に当たらなかった。やるなぁ君ぃ」
「てめえに褒められても嬉しくない。まさかこれが本気だとか言わないよな?」

戦っている現在も夕の精神の中には苛つきがあった。戦闘にそれを混ぜるような真似はしないが気持ち悪いと思う夕だった。

「まさか。これからだよ。でもぉさっきので終わった方が幸せだったと思うよぉ。この魔法を使ったら最後、君に勝ち目はないからねぇ。せっかくチャンスを与えて上げたのになぁ」

ハマーの魔力弾が何かの陣形のようにに配置される。そして

「スパイダーフィールド!」

配置された魔力弾同士を蜘蛛の巣のような魔力糸が繋いで行く。夕は周囲を蜘蛛の巣に囲まれる形となった。地面以外の全方位は蜘蛛の巣に囲まれたことで夕の動きはかなり制限される。

「仕上げはこれだ」

ハマーは蜘蛛の巣に残された小さな隙間に先程の白い実体弾を大量に投げ入れる。夕はこれを回避出来なかった。何故なら一度、避けた白い実体弾が蜘蛛の巣に当たって跳ね返ってきたのだ(白い実体弾がスパイダーフィールドの魔力糸に触れても液体化しないところを見ると実体弾は堅い物資に勢いよくぶつかったときに液体化するようだ)

蜘蛛の巣の役割は夕を閉じ込めることではなかったのだ。白い実体弾をゴムの様な反発力で弾き、夕に当たるまで蜘蛛の巣の中を縦横無尽に動き回らせることだったのだ。いくら夕でも前後左右から反発力に任せて縦横無尽に動きまわる複数の物体を全て避けるのは難しかった。さらに面倒なことに体…特に足や間接に着弾し液体化した実体弾が夕の動きを阻害してきたのだ。液体は強い粘着力を持っているようで全身に付着した強力なネバつきにより夕は動きを封じ込められたのだ。

「どうだ。本日初公開、僕のスパイダーフィールドと虫取りガムのコンボは?」

ハマーのコンボ魔法はゴムの性質を持つ魔力糸て形成されたスパイダーフィールドで相手を閉じ込め。強い粘着力で相手の動きを封じる虫取りガムを避けられないようにするというものだった。

「………」
「さっき僕のあの子達への善意の言葉を邪魔しなければこの魔法コンボは使わなかったのに……これも全部、君が弱くてキモいせいだ」

ハマーは気持ちの悪い笑顔で語る。

「弱者でキモい奴は強者を邪魔する権利はおろか、生き方を決める権利すらないんだ。だから強者の僕は弱者の君をいたぶる権利があるのさ」

その言葉を聞いたとき夕は理解した。

〈チャンスをあげた〉〈弱い奴に生き方を決める権利もない〉

「ああ。そういうことか………似てるだ」

こいつの言動が…………………………………………………………………………………………………世界の理不尽さに。

夕の体から研ぎ清まされた冷たい殺気がハマーに向けて放たれた。それと同時に夕の体にまとわりついていた虫取りガムが凍りつく。凍る火柱で凍らたのだ。凍ってしまえば粘着力もない。力業で簡単に破壊できる。さらに夕はスパイダーフィールドの魔力糸をアナライズ・ウェーブで切り裂く。ここにハマーのコンボは完全崩壊する。

「ああ、気持ち悪かった」夕は体についた凍ったガムをはらい落とす。
「なっ何が僕のコンボがこんな簡単に!?」

予想外の事態に驚愕するハマー。無理もない絶対の自信をもって放った技がいとも容易く破られたのだから。

「なぁハマー?先に謝っとくわ、すまん」
「なっなんだ」

ハマーに突然、謝罪する夕。ただでさえ技を破られたことで精神が乱れまくっているのに、そこにわけのわから謝罪。ハマーの混乱はかなりのものになっていた。

「これからてめぇにぶつける感情の半分は八つ当たりだ。感情に任せててめぇを潰しにかかるから無事じゃいられない。そのことを先に謝っとこうと思ってな………まぁ自業自得だよな。あれだけ他人を見下し、冒涜してきたんだ。報いを受けるときが来たのかもしれないな」

夕がハマーに対して強い苛立ちを感じていたのはハマーの言動が世界のありが実体化したようなものだったからだ。

「そろそろ始めるぞ」

ゆっくりと近づいてくる夕と目が合ったハマーは後に告げる。自分はライオンを本気で怒らせた愚かな小動物だったと。そして夕はハマーの全てを恐怖で塗り潰す前にこの言葉を放った。

「今まで楽しかったろ?ここから先、てめぇが見るのは地獄だ」

ハマーの恐怖と痛みの時間が始まる。コンボを破られたハマーに抗う術はなかった。

「獅子 百烈掌!」

夕の掌がハマーの全身を殴打する。攻撃をくらったハマーはその場に膝をつく。通常ならこの技は全身のツボや急所を殴打して破壊する技である。全ての掌底をまともにくらえば相手は立ち上がることすらできない。だが今回は力を半分以下に抑え、急所にも、ほとんど当てなかったためハマーは膝を着くだけ済んでいるのだ。夕は膝をついたハマーが立ち上がる暇もあたえず次の技を放つ。
今度は地面に足が埋まる程の力で右足を踏み込み 左手でハマーの胴体を狙う。

「獣王拳!」

獣王拳はシンプルにレグルスの力を拳に込めて放つ技である。
この技もハマーの胴体当たる寸前で拳を止め、衝撃波のみで吹き飛ばしている。 先程同様手を抜いているのだ。最初に使った凍る火柱もそうだ。全開ならハマーはもう氷漬けになっているはずなのだ。

夕はハマーを獅子王の技の実験台にすることにしたのだ。それから数分、ハマーは夕の手加減された攻撃を複数くらうことになる。そして止めの時がやって来る。

「レグルス・インパクト!」

夕の拳からレグルスの力を纏った獅子の形の衝撃波が放たれ、もう立っているのがやっとのハマーに直撃する。ハマーは意識はそこで途絶える。

〈ハマー選手の気絶を確認。都市選抜準決勝戦はユウ・ミカワ選手の勝利です!これによりユウ・ミカワ選手の決勝進出が決定しました!〉

勝利のアナウンスと共に 歓声が上がる。夕は片手を上げて歓声に一度答えたあと、控室に戻っていった。


控室

「夕、最後の方の攻撃はやり過ぎだよ。あのハマーって子には戦意はもう残ってなかったよ」

剣の言葉に夕はタオルで汗を拭き取りながら答える

「やり過ぎた自覚はある。通常なら獅子 百烈掌を放った時点勝負はついてたな」
「それでも止めなかったんだね。やっぱりあの子の言動が世界の理不尽に似てたからかい?」

剣も夕が何故苛々していたのかに試合中に気づいていたようだ。

「8割はそうだ。あいつが世界の意思と重なって心の底から気に入らなかったボコボコにした」
「残りの2割は?」
「あの歪みまくった精神を変えるには一度、精神ギリギリ追い詰めて粉砕するのが良いと思ったんだ。それにあれだけやれば今後、俺に絡んでくることもないだろ?」

今後のことも考えていた夕になるほどっと頷く剣。

「でも、今後は止めてよね。見てる方からすると可哀想に見えてくるから」
「確約はしないが気をつける」

夕の決勝戦出場が決まった。 
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