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飛頭蛮

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第三章

「御主はもう昼だけでよい」
「では夜は」
「うむ、休んでおれ」
 そうせよというのだ。
「よいな」
「わかりました、それでは」
「ではな」
 張を夜に休ませたのだ、そのうえで夜の見張りを行わせた。その夜に早速だった。朱桓も含めた家の者全員で屋敷の外と中を見張った、すると。
 月が夜空に出てかなりの時が経った頃にだ、何と。
 その首が家の中から出て来た、それを見た家の者が朱桓に話した。
「旦那様、その部屋ですが」
「うむ、どの部屋からだった」
「張の部屋からでした」
「張の?」
「はい、そうです」
 そこからだ、首が出て来たというのだ。
「そうして今外を飛んでいます」
「張の部屋からか」
「あの、それで」
 別の使用人も彼のところに来た、その彼が言うことは。
「首をよく見たところ」
「どうした、首が」
「張の首そのままなのですが」
「張の!?」
「はい、そうです」
 このことを話すのだった。
「首の顔は張のものです」
「では首はだ」
 ここでだ、朱桓は察した。そのうえで家の者達にこう言った。
「よいか、今から張の部屋に行くぞ」
「首が出た部屋にですか」
「あの部屋に」
「そうだ、行くぞ」
 今からだ、そうするというのだ。
「ではよいな」
「わかりました、それでは」
「今より」
 家の者達も主の言葉に頷いて応える、そしてだった。
 彼等は張の部屋に入った、すると。
 張は床にいた、だが。
 その首から上には何もなかった、まるで切り取られた様にない。そして窓には宙を耳を使って飛び虫を追っている張の首が見えた。
 この二つを見てだ、朱桓は家の者達に言った。
「どうやらだ」
「はい、張はですな」
「首が飛ぶ者だったのですな」
「そうですな」
「その様だ。しかしこれは」」
 何かとだ、朱桓はここでは首を傾げさせて言うのだった。
「何者であろうか、わしにはわからぬ」
「ではどうされますか」
「このままにされますか」
「いや、ここは張昭殿にお聞きしよう」
 呉きっての学識の持ち主だ、その彼なら知っているだろうというのだ。
 それでだ、彼は次の日張昭のところに赴き張のことを包み隠さず話した。すると話を聴き終えた張昭はこう朱桓に話した。 
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