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飛頭蛮

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第二章

「御主は見たことがないのか」
「はい」
 彼自身もこう答える。
「そんなものは」
「そうなのか」
「出るとは聞いていますが」
 それでもだというのだ。
「そうしたものは」
「そうか」
「あれっ、そういえば」
「ああ、そうだな」
 ここでだ、他の使用人達があることに気付いた、。張が飛ぶ首を見たことがないと聞いて。
「張が夜詰めていると出ないな」
「そういえばそうだな」
「張がいるとな」
「いないな」
「そうなのか」
 朱桓も彼等の話を聞いて言う。
「それはまたおかしなことだ」
「張に何かあるのでしょうか」
「一体」
「あまりにも奇怪ですし」
「何かが」
「御主、何か心当たりはあるか」
 朱桓はここで張本人に問うた。
「このことについて」
「いえ」
 だが、だった。張は首を捻ってこう己の主に答えたのだった。
「私も」
「わからぬか」
「はい、私が夜詰めていないと出ないとは」
「おかしなことであるな」
「しかし私には」
 このことはというのだ。
「わかりませぬ」
「そうか、ではよい」
 朱桓は張のことはよしとした、だがった。
 家の者達にだ、こう強く言うのだった。
「しかしだ、人の頭が飛び回るというのは面妖だ」
「はい、実に」
「気持ちのいい話ではありませぬ」
「だからだ」
 それでだというのだ。
「夜は皆で見張れ、あとじゃ」
「あと?」
「あととは」
「若しやと思うが」
 朱桓はこのことについては首を傾げさせつ、だが。
 それでもだ。こう言うのだった。
「首は周りを飛んでいるのではなく家の中にいて夜出て来ているやも知れぬ」
「だからですか」
「家の中もですか」
「首が出て来た時は」
「家の中も見よと」
「夜はな」
 首が出て来る出て来ないに限らずというのだ。その時になるとだというのだ。
「見回れ、家の中もな」
「わかりました、それでは」
「そうさせてもらいます」
「夜もまた」
「是非」
「うむ、ではな」
 こう告げてだ、そのうえでだった。
 朱桓の家は夜になると周りを徹底的に見張り家の中にまでそれを及ぼさせることになった。そのうえでだった。
 朱桓はさらに一計を案じた、彼が夜に詰めている時に首が出ないという張に対してこう言ったのである。 
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