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伝説の子猫の伝説

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『プロローグ』

 
前書き
反省はしている。後悔はしていない。 

 
 ここは『ハイスクールD×D』の世界。
 そして私は塔城小猫。本名は白音。世間では子猫と名乗っている。
 ただし、原作通りの塔城子猫ではない。

「ふむ、衝撃を操る八衝拳ですか……」
「ウァ、ガァァ、ガ……」
「ですが、グラグラの実の能力を持つ私の拳には到底及ばない……挑む相手を間違えましたね。まあ、一応挑みに来たのですから私の能力の末端だけは見せてあげましょう」

 拳に衝撃をまとわせつつ相手の体の芯――腹部に拳をえぐり込ませる。
 ひどく鈍い音がすると同時に相手の腹を中心に大気が歪む。

「重拳」

 ついに大気が歪むだけではなくヒビが入った。

―――

 すでに挑戦者は見ている者達が心配になるくらいに白目をむいている。もはや声すら出せないだろう。だが如何せん挑んだ相手が悪かった。きっと彼は最初に挑んだ相手がこの道場の師範だとは夢にも思わなかったのだろう。それを見ていた弟子たちは思う。哀れなり、と。しかし、それを口にすることは許されず、弟子たちはは心のなかで合掌した。

―――

「……ふむ、やはりまだまだ武装色の鍛錬が必要なようです……」
「これ、曹操。この痴れ者を片付けないさい」
「ハッ、仰せのままに」
「それと此奴の師範のチンジャオという者に果たし状を送りつけなさい」
「果たし状にはなんとお書きしましょう?」
「今から1月後に駒王にて待つとお書きなさい」
「ハッ、全ては白音様のお心のままに」
「曹操、今は子猫と名乗っています。口を慎みなさい」
「申し訳ございません」

 私は塔城小猫。グラグラの実の能力者。
 職業は駒王学園の物理講師。ついでに六式武術道場の師範でもある。

―――

 もともとは私はもうすぐ三十代になるOL、いわゆるアラサーであった。
 それがなんの因果か転生することになった。死因は心臓麻痺。死んだという自覚すらなかったからよかったのかもしれない。人間皆そうなのかもしれないが、苦しんで逝くのは嫌だった。

 死んだ理由は神様曰く、これも必要なことだった。申し訳ないが転生してくれと平身低頭されたらそりゃあ仕方ないか……となってしまう。だけど最低限その世界で生きる手段はつけるとのことで……

 死んだ後に冷静に今までの自分を振り返ってみると結構悲しかった。彼氏も作らずただ仕事、仕事と毎日駆けまわる日々……ああ、そういえば少し息抜きに日曜日にはいつも『ONE PIECE』を見ていたな。結構気に入っていたのを覚えている。もう見られないとなると少し悲しいかな。

 こういう私のような人間をなんというか知っているかい?
 すこし現代的に言うと『非リア充』の代表例であった。

 もしかしたら死んで正解かもしれない。いや、それでは親に失礼か。
 ただ私が決心したのは次の世界ではもう少し自由に生きるということだ。

『必要なチート一覧表』なんてものが出されたが正直『ONE PIECE』以外は知らないので【グラグラの実】と【六式】と【覇気】を頼んだ。しかしながら、まだまだ魂強化(人には強化できる限界があるらしい)の余裕が余っているということだったので残りは身体能力の強化にしてもらった。いろんな能力を付けられても使いこなせなかったら意味がないからね。だったら体を頑丈にしてもらった方がいい。自分でも良い判断をしたと思う。

 なんだか神様に誘導尋問されているようだったから色々聞いたら、最近はこういうのが流行っているらしく自分があげたチートで活躍する【ぼくがかんがえたさいきょうのてんせいしゃ】というのをやってみたかったそうだ。

 簡単に要約すると、次の世界ではこのチートたちを使って敵役たちをボコって欲しいと……
 神様って意外と俗物的だなって思ったね……そのまま原作の内容を教えてもらって神様と別れたがなかなか人好きのする神だったのは今でも覚えている。

―――

 転生してから百年たらず。私こと【塔城小猫】の成長は完全に止まっていた。まあ、約百年経ったから当然なのだろう。身長は163センチ、胸はDカップ。原作だとまだ子猫は生まれて十数歳だったためロリ体系だったが、それとは違い、今はボンッキュッボンである。ただ普通の人より成長が2倍ほど遅かったことは私のメンタルに大いなるダメージを与えたことをここに明記しておく。

 もうすでに神様から貰った【グラグラの実】と【六式】はかなり使いこなせるようになったと思う。仙術の方は最低限の訓練しかしていないし、自分と同じ種族の仲間にも会っていないため、あまり分からないが近接戦――打撃戦でのセンスはピカイチだと思っている。自分の【剃】のスピードはなかなかのものだと自負しているし、【月歩】も猫なので体が軽いためかそこまで力を入れずに宙に浮けるようにはなっている。ただ覇気は未だに原作の2年後ルフィに及ばないのを自覚している。見聞色の覇気はいい。だが、武装色の覇気は悪魔の実の能力に込めるのは分かるのだがいまいちうまくいかない。今は無理やり込めている、というか混ぜている感じである。まあ、とにかく成長の余地があるのは喜ばしいことなのだろう。私の能力は成長限界を知らない。

 転生した時は自分が塔城子猫になっているのは知っていたが自分の姉らしき人物がすでに悪魔になっているのは知らなかった。いつの間にかいなくなっていた姉がSSランクのはぐれ悪魔として賞金首になったのを風の噂で聞いてからはどこぞのスピード王も裸足で逃げ出す速さで逃げ出したのを覚えている。そこからはダイ・ハードも驚きの逃走の日々。自分の賞金がかけられていたのを見た時はさすがに姉にイラッと来たものだ。

 襲ってくる賞金稼ぎを能力でなぎ倒しつつ、自分のあり方を探す毎日。その間に中国の羅刹王やどこぞの拳王を名乗る者たちと力試しをしたのはいい思い出だ。能力を研鑽する毎日を送った。

 気がつけば転生してから数十年。私は知る人ぞ知る強者となっていた。その時にはもう自分の賞金は無くなっていたし、追いかけて来ても、皆が私の能力の餌食になるものだから意味が無いと判断したのだろう。さらに逃亡を繰り返しているうちに見聞色の覇気が鍛えられたため、私を見つけることは砂漠から一粒の砂を見つけることより至難の業となっただろう。

 適当に安住できる場所を調べ、その土地を買い占め、そのまま退屈しのぎに道場を開いた。
 それがここ、駒王町だっただけの話だ。これが数年前の話。

 一応道場の門下生は募集しているし、総合武術として習いに来る子どもたちも多い。たいていの修行は我が道場の師範代の曹操に任せている。そして、今は原作と絡みたいがゆえに駒王学園の先生として物理を教えている。

 そんな私は今、夕食を食べていた。今日はチンジャオロース。チンジャオにちなんだとか行っていた曹操を張り倒した。しかしさすがは英雄だけある。なかなか料理が旨い。ご飯がよく進む。

 すでに彼らが下宿を初めてもう1年。最初の数ヶ月はこの道場でのルール(私)を教えこむために大気を歪ませたり、地震を起こしたりしていたが最近ではよく気がつくようになっていた。私の行動を全て先読みするその行動力。賞賛に値する。彼らも私の癇癪は怖いのだろう。自分で今すごいことを言っているのは理解しているのだが、なかなかどうしてか彼らは小間使いとしての才能も持っているようで……

 今日もなかなかの出来栄えですね。ごちそうさまです。そう呟きながら手を挙げる。すると音もなく学ランを着た曹操が現れて食器を片付ける。最近はどこぞの使用人より使えるようになった曹操である。そろそろご褒美をあげないといけませんね。きちんと躾けるためには飴と鞭は必要です。あ、デザートはシュークリームで。

 食べ終わったあとは道場の奥の自分の部屋で服を着替える。
 もう風呂は食事前にとったので、そのあとは床の間で寝るだけである。
 明日は授業が6時間も入っているのだ。なかなかに辛い。

 明日の予定を確かめながら最近曹操とゲオルグがハァハァ言いながら押し付けてきたパンダパジャマに着替える。この姿を見られるのは朝だけなのだがそれでも満足らしい。

―――

 色素が抜けたようなきめ細かい白い肌。筋肉はついていながらもそれでいて柔らかい女性特有の体つき。強く抱きしめればそれでいて折れてしまいそうな彼女であったが、間違えてはいけない。

 彼女はグラグラの実の能力者。ただでさえ【六式】を極めている彼女に襲いかかる勇者は居なかった。

(ふむ、この町でなかなかきな臭い動きがありますね……なるほど聖剣騒ぎですか……そろそろ介入する頃ですかねぇ……)

―――

 そして今、彼女が介入しようとしたことによって原作に歪みが生じようとしていた。

 いや、彼女が塔城子猫として生まれたことによってすでに原作にほころびは生じていた。
 なぜなら塔城小猫は原作の約百年前に生まれるはずがないのだから。

 1つのイレギュラー。それが原作の崩壊を招くことも知らずに彼女はおのが道を進む。進め子猫!立ち止まるな子猫!今日もボンッキュッボンな教師は活躍する――のかもしれない。
 
 

 
後書き
あと数話でコカビエルが爆散します(白目

 
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