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魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~

作者:白鳥才牙
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『第四十話』~探求~

 拓斗side

「長期休暇?」

「はい」


 ヴォルケンとの戦闘から三日後の朝。
 場所は職員室。俺は長期休暇を取るために担任と話していた。


「いきなりだな。どうしてだ?」

「俺が万屋を営んでいるのはご存知ですよね? それで海外の依頼が一度に入ってしまったんですよ」

「それで、長期休暇を取りたいと」

「その通りです」


 これは半分本当で半分嘘だ。確かに海外の依頼は一度に来ている。長期休暇をもらわないと全てをこなすことは出来ないだろう。
 しかし、本音ははやてを救うために必要な『アレ』を探すためだ。
 普通だったらこの二つを並行でこなすのは無理だが、シャマルを気絶させたときの魔法がある。

 説明しといたほうがいいか?

 あの魔法の名は『五人仙多異(ごにんせんたい)』
 実態のある分身を作り出す幻術魔法だ。
 この分身はそれぞれが自我を持っていて、操作を行う必要がないためとても便利だ。

 この魔法の源流は古代中国戦国時代まで遡ると言われている。
 魏の曹操が遠征に出た際、深い山の中に迷い込んだ時のこと、彼の前に五人の仙人が現れた。
 その姿は五人とも全く同じであり、曹操はそれを妖怪の類と断定しその内四人を斬り捨てた。
 するとその四人の亡骸が残った一人の元へと集まり、一人の仙人となった伝説から生じている。

 民明書房刊『古代に学ぶ仙人の術』より抜粋 by作者


「普通の休みならともかく、いきなり長期休暇は無理だ。せめて数日前から言ってくれれば……」

「いきなり入ってしまったものですから。出来れば昼には空港に着きたいんです」

「そう言われてもな。出来れば今日は仕事の予定を遅らせて出席しろ」

「は? そんなの出来るわけないじゃないですか」


 仕事を遅らせる? それは自営業の人間にとって『店を潰せ』と言ってるようなものだ。
 自営業は信頼が命の仕事だ、それが探偵や万屋なら尚更。
 この担任はそれを分かってて言ってるのだ。


「それは分かってるが……正直、俺の知ったこっちゃない。俺は自分の仕事をするだけだしな」


 …ほぉ? コイツはこんな自己中野郎だったのか?


「……では、今後先生の依頼は一切無視、拒否させて頂くのであれば出席させt「よ~し任せておけ! 主任は俺が何とかしとくからな! ほら、時間ないんだろ? 早く行きな!!」分かりました。ありがとうございます」


 フッ……軽すぎ。
 この自己中担任は俺のお得意様だ。というより、この人は依存と言った方が正しい気がするが……
 因みに依頼内容は主に合コンのセッティングと恋人の浮気調査だ。どちらも既に何十回も受けている。
 ……しかし、浮気調査の対象が毎回変わるのはどうかと思うが………


「あ、ちょっと待て」

「はい?」


 職員室を出ようとしたら担任に呼び止められた。どうした?


「その仕事が終わったあとでいいんだが。またセッティング、頼めるか?」

「…はぁ……またですか? もう少し心を広く持てば続くと思いますがどうでしょう?」

「うるせ! 行くならさっさと行きな!」

「はいはい、分かりましたよ」


 そう言って俺は職員室を後にした。


「さて……何処から行こうか?」


 候補の世界は200以上あるからな……










 なのはside

 教室に入ってすぐに拓斗君の席に顔を向けるけど、そこに拓斗君はいなかったの。
 いつもだったらとっくに来てるはずなのに、もう三日も来ていない……どうしたんだろう?


「拓斗の奴、今日も来てないわね」

「どうしたんだろうね。なのはちゃん何か聞いてる?」

「ううん、分かんないの」


 そんな時、チャイムが鳴って先生が入ってくる。すると


「あ~、男子にとって嬉しく女子にとって残念な話がある」


 ? 男の子は嬉しくて、女の子は残念なお話? なんだろ?


「月詠が長期休暇、つまりしばらく学校に来ることができなくなった」





 ……………





「「「「「「「「「「「「「「「よっしゃぁぁぁあああああああ!!!」」」」」」」」」」」」」」」男子生徒

「「「「「「「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!」」」」」」」」」」」」」」」女子生徒


 な、なんで!? そんなこと聞いてないの!!


「なんか家の事情でしばらく海外を巡ることになったみたいでな。それについていくことになったそうだ。今朝伝えに来た」

「俺達の時代がキタァァァアアア!!」男子生徒A

「月詠の時代は終わったんだ!」男子生徒B

「これからは俺達の時代だ!」男子生徒C

「でも、いきなり長期休暇なんていいんですか?」男子生徒D

「黙れ餓鬼」先生

「酷い!!」男子生徒D


「なんで! なんでなの!?」女子生徒A

「拓斗君がいない学校なんて!!」女子生徒B

「もう嫌ーーー」女子生徒C


 クラスは大騒ぎなの。男の子達がはしゃぎだして、女の子達は嘆いてるの。
 拓斗君、私やアリサちゃん、すずかちゃんといつも一緒にいるから気付いてないみたいだけど凄くモテるの。
 あと、先生に罵られた子は皆無視なの。










 休み時間ではやはりそのことが中心になって話をしていた。

 私はお昼休みに朝の事をクロノ君に話したの。


「―――ってことなの」

『なるほどな………おかしいな』

「へ? おかしいって、なにが?」


 どこにもおかしいところは無いと思うけど。


『なのは、良く考えてみてくれ。あの時、拓斗自身が言っていたじゃないか。『今は一人だ』と。『家の事情』というのはきっと拓斗に何かがあったんだろうな』


 言われてみればそうなの。でも、理由ってどんな理由なんだろう?


『どんな理由かは分からない。後で僕が聞いてみるよ』

「いいの?」

『構わない。僕も気になってるからな』


 それなら、大丈夫かな?


「それじゃ、お願いしていいかな?」

『あぁ、任された』


 そして通信をやめて午後の授業を受けるために教室に戻った。










 拓斗side


成田国際空港


――ジリリリリリ

「ん? 誰だ?」


 成田国際空港で時間を待っている時、突然ケータイのアラームが鳴った(黒電話のヤツ)。
 取りだしたケータイを確認すると、相手はクロノだった。


「俺だけど、どうしたんだクロノ?」

『どうしたじゃない。なのはから聞いたが、学校を長期休暇するそうだな』

「あぁ、そうだけどどうかしたか?」

『だからどうしたじゃない! 一体何のために長期休暇を取ったんだ!!』

「仕事だよ。海外への仕事が一度に連続で入ったんだ。学校を休まないと間に合わないんだ」


 本当のことだ。今回の仕事はボディガードの仕事が8件、FBIの捜査協力が2件及び犯罪組織の鎮圧が5件、さらに仕事の合間には海外小説の翻訳が3件ある。


『だが!』

「なんかお前らしくないなクロノ。どうした? 何かあったのか?」

『………』

「クロノ?」


 俺の指摘にいきなり黙り込むクロノ。再び呼びかけると口を開いた。


『……管理局上層部からの命令だ。『ヘキサ式魔導師・月詠拓斗を管理局に所属、ヘキサ式の技術提供をさせろ』とのことだ』

「………へぇ」


 上層部が、ねぇ……
 ジュエルシード事件の映像を見たんだろうな。古代ベルカ時代よりも過去から存在していた魔法式、しかも現代の魔法じゃ出来ない物も存在するときた。自分達の支配下に置き、我が物にしたいとか考えているんだろう。


「…それで? お前はこの事をどう思ってるんだ?」

『……僕はあまりいいとは思えない』


 そうか……


「クロノ。お前の言う上層部へ伝えておけ『ヘキサ式はお前等の先祖が捨てたものだ。教える筈がない。これはミッドとベルカの二つに分かれる前のものでもある。ヘキサ式を手にしたいのならば自分たちで二つを合わせ、作りだすことだ』とな」

『それは、拒否するという認識でいいのか?』

「それで間違いはない。まぁ頑張ればヘキサ式を実現出来るんじゃないか?」

『そうなのか?』

「不可能ではないと思う。でも、ミッド式とベルカ式はヘキサ式の一部を引き抜き、簡略化した魔法式だから完全なモノは出来ないだろうがな」

『…どのくらいまでなら再現できると思う?』

「知らん。管理局の技術力次第だろうな」

『そうか……』

「そろそろいいか? 飛行機が出そうなんだ。早く乗りたいんだが……」

『あ、あぁ分かった。上層部にはちゃんと伝えておくよ』

「頼んだぞ。じゃあな」


 俺はそう言って通信を切り、荷物の入ったリュックを背負いあげる。


「さて、行きますか……」










 全体side

 その世界に広がるのは荒れ地のみ。
 生命の気配は微塵もないが、何処から叫び声に聞こえるような音、何かの爆発音が空間に響く。


 そこは管理局も知らない無人世界。
 知る者達はこの世界を『腐敗世界(アンデッドガーデン)』。その名の通り、全てが腐敗された世界だ。

 その世界で――











「ハァアアア!!」






 ――拓斗は戦っていた――





――ギャァァァアアアアア!!!





 ――腐敗した異形の存在と。





 何故、拓斗がこの世界にいるのか。
 答えは簡単、空港にいたのは偽物だからだ。
 拓斗は学校を後にしてすぐに『五人仙多異』を使用し、次元世界に転移をしたのだ。


 現在、彼の前には腐敗した異形――所謂アンデッド、ゾンビと呼ばれるような存在が襲ってきている。
 見ての通り、『腐敗世界(アンデッドガーデン)』。
 命尽き果て、体が腐敗して尚、生を求める亡者達の世界。


「我求むは雷! 怒りを宿し広がる網! 敵に無慈悲な抱擁を!『雷電膜』!!」


 拓斗はアンデット達に向かって雷で編まれた網を放つ。
 網に捕まった数百のアンデット達は黒焦げになり、灰となる。
 しかし、その後ろから大地を覆い尽くす程のアンデッドの大群が押し寄せてくる。


「我求むは光! 白き矢の輝きをもって万物を浄化せよ! 『ホーリーレイ』!!」


 さらに拓斗は聖なる矢の雨を放つ。
 聖なる力に貫かれたアンデッド達は次々と消滅していくが、アンデッドは未だ星の数ほどいる。


「一体なんでこんなに来るんだよ!? 俺が何かしたのか!?」

[そういうわけじゃねぇ! アンデットしか存在しない世界に普通の生者が入り込んだんだ! 集まって当然だろ!!]

「俺の肉喰らって命を得たいってか!? 冗談じゃねぇぞオイ!!」


 そう叫びながら白夜で近づくアンデッド達を斬り伏せる。


[拓斗! 上だ!!]

「上? って嘘だろ!?」


 ソウルの声に上を見上げると、空に怪鳥と翼竜型のアンデッドが急降下してきていた。
 拓斗はそれを避け、すれ違いざまに全ての翼を斬り落としながら空へ飛翔する。


「我求むは火 荒ぶる炎よ 敵を穿て!『ソニックヒート』!!」


 さらに高速の炎を放ち下方のアンデット達を焼き尽くす。


「一々面倒だ! 大きいので一掃するぞ!!」

[了解!]


 拓斗は白夜を上に掲げ、巨大な魔力を放出する。


「我顕現するは光! 集え 精霊に導かれし光の河よ!!」


 詠唱と共に、周囲から発生する光の粒子が彼を包み込む。


「照らせ! 邪なる牙を滅するために!!」


 その光はまさに、邪悪を滅する聖なる光だった


「『聖なる輝き(セイントグリッター)』!!」










 その瞬間、世界は聖なる光に包まれた。










 拓斗side

「ソウル、どうだ?」

[……半径30km範囲にはアンデッドの反応なし。大丈夫だろう]

「そうか、よかったぁ……」


 もうアンデッド軍団は勘弁だぞ。
 じつはアンデッド達との戦闘、四日間続いていた。

 学校を後にしてすぐに次元世界を渡り始めたのだが、この世界に入ってすぐに大量のアンデッドに襲われたのだ。
 そいつ等は撃退したが、次から次へと湧いて出てくるので全て撃退していたら四日経っていたという感じだ。


[どうする? 今日は休んで探索は明日にするか?]

「いや、30分ほど休んでから始めよう。こんな間にも闇の書ははやてを蝕んでいるんだ」


 今は1秒でも時間が欲しいが、体を休ませないと効率が悪くなる。仕方ないことだな。


「一応、病んでいる間に分身にその辺の探索頼むか」


 俺はそう呟いて『五人仙多異』を発動し分身を一体創りだす。


本体「そこらへんの探索、頼んでいいか?」

分身「いいよ。お前は30分と言わず2時間くらい休んでな。四日間ぶっ続けで戦ってたんだ。自分で思ってるよりも疲労がたまってるんだぞ?」

本体「は? でも「でももデモも鴨を何もない。とにかくお前は休め。いいな?」……わかったよ」


 分身に注意されるなんて、情けないな。


分身「うん、それでいい。じゃ、俺は行くぞ」

本体「あぁ、頼むよ」

分身「任せとけって」


 分身はニカッと笑って飛んで行った。


「まさか自分の分身に注意されるなんてな」

[分身は元々お前の魔力から肉体を作りだすんだ。魔力は体の一部、血の一緒みたいなもんだ。お前よりも体の事は分かってるんだよ]

「そんなこと知ってるよ。ただ、情けないなと思っただけだ」

[……そうか]


 俺は地面に寝転がりながらソウルとそんな話をする。
 分身の言った通り、結構疲労してるな。魔力も七割なくなっている。この世界は魔力も腐敗しているから魔力収集を介しての魔力回復もできない。したら最後、体の中から腐敗し始めて俺もアンデッドの仲間入りだな。それは勘弁だ。

 そんな中、ソウルが


[ん? 拓斗、通信が入った]


 そんなことを言った。


「通信? 俺がこの世界にいるのは誰も知らないはずだが、一体誰だ?」

[地球にいる分身だよ。繋げるぞ]

「あぁ」


 俺が了承すると、目の前に自分と全く同じ顔をした分身の投影ディスプレイが現れる。まぁ、分身だから顔が同じなのは当たり前だな。


「どうした? いきなり通信だなんて、何か仕事で異常が発生したのか?」

『いや、仕事は順調だよ。護衛対象を狙った暗殺者が二十五人程いたが全て捕縛したしな』


 四日間で二十五人か。今はイギリス大統領の護衛だったか? なんか悪いことでもしてるのかもな。俺には関係ないが。


「だったらどうした? 何かのハプニングに巻き込まれたか? ハニートラップでも来たか?」


 今言ったように、ボディガードの仕事においてはボディガードを減らそうと暗殺したり、ハニートラップを仕掛けたりすることが多い。暗殺者の基本手段の一つだな。
 因みに俺の場合はハニートラップしか受けたことがない。全て回避して捕縛してやったがな。なんで俺の場合は暗殺されないんだ?


 女性の暗殺者たちが拓斗を逆光源氏で将来の恋人にしようと考えているからです。 by作者


 まぁ、暗殺なんてしようものなら全て捕縛して以前ひそかに創った魔法『10万回死ぬまで帰れま10』かけて俺を狙った事がどれだけ愚かなことかを思い知らせるまでだがな。


『先程クロノから通信が入ったんだ。それで本体に向かって欲しくてな』

「向かうって何処に?」

『アースラだよ















 なのは、フェイト達が襲われた』


 分身はそう言った。 
 

 
後書き
~あとがき雑談会~

作「いろいろ詰め込んだ回でした」

拓「なんか一気に進んだ気がするな」

作「学校を長期で休んで、クロノに上層部からの指令を告げられて、本体はなんかアンデッドがたくさんいる世界で無双、最後には分身になのは達が襲われたと伝えられると」

拓「結構多かったんだな」

作「そうだね~……アンデッドってどれだけいたの?」

拓「さぁ? 俺が知るか。四日間戦っていただけだからな」

作「おかしくね!? 四日間ずっと戦っているとか! 四徹だろ!? 衰弱すると思うんだが!?」

拓「鍛えれば何とかなるさ」

作「なるかぁぁあああ!!!」

拓「なるんだよ。長年続けていれば」

作「……因みにどれくらい?」

拓「数十年くらい?」

作「年齢的におかしい!!」

拓「お前が考えた設定だろうが」

作「まぁ……そうだけど」

拓「ならいいじゃないか。もう次回予告するぞ」

作「分かったよ。今回は拓斗の番ね」

拓「了解





  分身に告げられ、急いでアースラに向かう拓斗

  そこには魔力を奪われながらも無事ななのは達の姿があった

  それに安心する拓斗になのは達はある頼みごとをする

  次回 魔法少女リリカルなのは~黒影の死神~『強くなりたい』」





作「それじゃあ次回に」

作・拓「「トリガー・オン!!」」





 本当に数十年鍛えたの?

 事実だ

 ……因みに君何歳?

 精神年齢は見た目通りだ。八百年くらい生きてるか? 
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