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魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~

作者:白鳥才牙
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『第三十九話』~黒影~

 拓斗side

 ヴォルケンリッター。長い間共に戦っている分、チームワークは高い。
 しかし、個人では欠点が多すぎる。
 これは嬉しい誤算だ。


 シグナム――太刀筋は良い。剣速も一族でも上に食い込むだろう。しかし、些か魔法に頼り過ぎの傾向がある。そのため、近接戦闘はお粗末だな。

 ヴィータ――シグナムと似たようなもんだ。一撃の威力は高いし、誘導弾が使える分マシかもしれないが、一撃の速度が遅い。これではカウンターしろと言ってるようなものだ。

 ザフィーラ――平均的な実力としてはシグナムが一番なんだろうが、コイツが四人の中では一番強いかもしれない。素手で戦っているおかげか、近接の技術が一段飛び出ている。しかも防御が固く、捕縛魔法(こっちではバインドだったか?)も扱えるときた。コイツが一番の脅威かもな。

 シャマル――支援としては優秀だろう。強化魔法が使えれば尚良いが、使えないみたいだな。さらに一人ではまともに戦う事も出来ない。まぁ、既に退場してもらったから別にいいか。


 他にもいろいろあるが、主な欠点はここらへんか。
 残りは三人。この後はどうするか………










 全体side

「我求むは闇! 轟く闇よ 集束し 死神の刃を形作り 愚かな罪人に死の三日月を!『ムーンデスサイス』!!」


 二回目の沈黙を破ったのは拓斗だ。
 ソウルを素早く白夜へと変え、ニメートルを超える三日月状の魔力刃を放つ。


「シグナム! ヴィータ!」


 シグナムとヴィータはザフィーラが呼んだ瞬間彼の後ろに下がる。


「『シュワルベフリーゲン』!!」


 ザフィーラの後方から放たれた多数の魔力弾が魔力刃に殺到し、ぶつかっては消滅する。
 しかし、魔力弾により威力が殺され、ザフィーラが展開した魔力障壁に防がれた。
 
 その衝撃により砂煙が上がり、三人は視界確保のために砂煙から抜け出す。


「待ってたよ」


 そこには拓斗が回り込み、既に白夜を振り上げていたところだった。
 拓斗は白夜を振り下ろす










 ――のを中止し、後ろから襲いかかる攻撃を回避した。


「これは……連結刃?」

「駄目だったか……」


 レヴァンティンを連結刃から直剣に戻し、そう呟いた。
 ただ砂煙の中から飛び出したわけじゃない。シグナムは拓斗の待ち伏せを警戒し、連結刃を別方向から出していたのだ。


「……別魅」


 呟いた途端、拓斗の姿が数十人に増えた。


「はぁ!? 増えるのって一人じゃないのか!?」

「焦るなヴィータ。実際に増えたわけではないだろう」

「ザフィーラの言うとおりだ。おそらく、幻術魔法の類だろう。問題は本体が何処にいるかだ」


 驚愕の声を上げるヴィータにザフィーラが落ち着かせ、シグナムが推測を上げる。
 シグナムが推測を口にした瞬間、辺りに拓斗の声が響く。


「ザフィーラの言うとおりだ。確かに俺は実際に増えたわけじゃない。しかし、幻術魔法でもない。『別魅(わけみ)』という純粋な技だ。全てが本物で、全てが偽物。お前らに見分けられるか!?」


 そう言いながら全ての拓斗が三人に襲いかかる。
 三人は懸命に迎撃し、倒していくが打ち倒したのは全て偽物――残像だ。

 全ての残像を倒した頃には三人は疲労困憊と言った状態であった。
 周辺にいるのはシグナム、ヴィータ、ザフィーラの三人に、拓斗が張った結界の中で意識を失っているシャマルのみ。
 拓斗の姿は何処にもなかった。


「ハァ…ハァハァ……クソ…拓斗の奴…何処に居やがるんだ……」

「分からぬ…しかし、近くにいることは確かだ」

「その通りだよ、ザフィーラ」


 ザフィーラの言葉と共に、虚空から拓斗が姿を現す。


「最初から姿を消していたのか……」

「いや、正確には『ムーンデスサイス』を放った直後だ」

「卑怯だぞ!!」

「卑怯? 戦いに卑怯なんて言葉は存在しねぇよ……勝てば官軍負ければ賊軍だ。で、どうする? 続けるか?」

「…当然だ……!」

「主の命がかかっている……負けるわけにはいかない!!」

「はやてを助けるんだ……そのためにも!!」


 そう叫びながら三人がぐらつきながらも立ち上がり、構えをとる。


「だが、こちらもはやての為だ。負けるわけにはいかない」


 拓斗もそう呟きながらソウルを黒夜に変え、構えをとる。


「なんで……なんでだよ拓斗! なんでそこまでして首突っ込もうとすんだよ!」

「なんで? そんなの決まっている。お前等がはやてのためにしてるのと同じく、俺もはやてに笑っていて欲しい。言わなかったか?」

「だからってどうしてそこまで!」


 ヴィータが悲痛な顔で叫んでいる。隣にいるシグナムやザフィーラも似たような顔をしている。


「それだよ…その顔だよ……」

「え…?」

「お前等がそんな顔してたら、はやては笑っていられない。だからはやてだけじゃない、お前等も一緒に笑っていないといけないんだよ!」

「だが我等は止まることはできない! 主はやてのためだったら我等はどんな罪でも被ろう! だから今は何があろうと止まれない……立ち止まるわけにはいかないのだ!!」


 シグナムの言葉と共に騎士達の魔力が高まる。


「「ロードカートリッジ!!」」

[[『カートリッジロード』]]

「ハアァァァァァ!!」


 シグナムとヴィータの魔力が一気に跳ね上がり、ザフィーラは己が拳にありったけの魔力を込める。


「我に応えるは闇 虚空に存在するは闇の器」










 ――拓斗は黒夜を構えながら魔力集束を行いつつ、詠唱を始める。










「器に満ちし深き深き漆黒の闇満ちし中より 顕れし永遠なる地獄への門 門を開き 顕れるは修羅の手」

「ハアァァァァァ!!」

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

「ウォオオオオオ!!」










 ――拓斗が未だ詠唱を続ける中、準備を終えた騎士達が己が敵に向かい駆けだす。










「今 我が願うは汝が地獄の大いなる(もののふ) 我に武を与え 敵に絶望を与えよ」

「紫電……一閃!!」

「フランメ・シュラーク!!」

「ぜぃやぁぁぁぁぁあ!!」


 ――騎士達は現在の自分ができる最大の一撃を放ち、










 ――全てが避けてもいないのに紙一重で拓斗を通り過ぎた。


「「「なっ!?」」」


 三人が驚きで何が起こったかを理解できない時。











「『修羅剣・久遠(しゅらけん・くおん)』」










 拓斗の魔法――全てを絶望に染める、刃渡り8mはあるだろう、修羅の中国刀が姿を現した。


「……何故、避けもせずに我等の攻撃が当たらなかった?」


 ザフィーラはせめてもの抵抗と自分ができる最大防御を展開しつつ拓斗に問いかける。


「………『純白万華鏡』」

「?」

「相手の資格の認識をずらす幻術魔法だ……俺が一番得意とするのは幻術魔法なんでな。
 いくら伸ばしても触れること敵わぬ黒き影……










 『黒影(こくえい)










 それが俺だ」

「そうか……」

「アタシ等の…負けか……」

「そうだな、俺の勝ちだ………」


 拓斗は黒夜を上に上げると、『修羅剣・久遠』もそれに連動するように上に浮かび上がる。
 そうして拓斗は黒夜を持った腕を――










「絶望へ沈めろ……久遠」










 ――振り下ろした。










 拓斗side

「う、うぅ~」

「おはよう、シャマル」


 俺は目を覚ましたらしいシャマルに声をかける。

 現在、ヴォルケンリッターとの戦闘から約四時間。全員を眠らせた俺は四人を連れて、元いた公園に転移し近くのベンチに寝かせておいたのだ。
 やはり、最初に目を覚ましたのはシャマルだったか。一番最初に眠らせたからな。他の三人が受けた衝撃が強すぎたというのもあるけどな。


「あ、あれ? たっくん? え、あれ? 勝負は?」

「とっくに終わってるよ」

「えぇ!?」


 驚きの声をあげるシャマル。考えたらシャマルは手刀を叩きこんだだけか。


「起きていきなりで悪いが、三人の気付けを頼めるか? 治療は既に終わってるからな」

「あ! わ、わかったわ!」


 シャマルに未だ気絶している三人の気付けをお願いし、これからの事を考える。
 方法を調べると言ったが、方法は既にいくつか検討はついている。あとはその確信を掴み、探し出すだけだ。
 五人でやるなら確信を掴むのは時間はかからないだろう。
 問題は探し出すまでの時間だ。五人で行うので時間はかなり短縮されるはずだが……

 そう考えている間に残りの三人も起き出したようだ。


「起きたな」

「……拓斗」

「そうか、我々は……」

「……」


 現状を理解してか、俯く三人。


「それじゃ、約束通りに俺に協力してもらいたい」

「「「「………」」」」


 俺の一言に何故か何も言わない四人。


「どうした?」

「月詠……















 悪いが、その約束は守れない」
















「は?」


 シグナムは何と言った? 約束は守れない?


「どういうことだ?」

「お前の事は我々皆が信用している、これは真実だ。だが、本当にそれで主はやてを助けるのに間に合うのか? 私にはそれが心配でたまらない」

「それに、その方法が正しいものなのかどうか、私達はそれが不安なの。もし間に合ったとしてもはやてちゃんが助からなかったらと思うと……」

「拓斗、アタシはお前が好きだよ。でも、自分が確信を持っている方法の方が絶対大丈夫だと思うんだ……お前もこのペースなら間に合うって言ったじゃんか」

「………」

「お前等………」


 シグナム、シャマル、ヴィータがそれぞれの気持ちを口に出す。ザフィーラは何も言わないが、表情からして三人と同じ意見だろう。
 そうか、なるほどな………


「俺は、信用はされていても…信頼はされていないんだな………」

「っ!? 違う! アタシ等は本当に拓斗の事を!!」

「何も言うな。お前等の気持ちは分かったよ。そんな事を言うなら勝手にしろ。俺は一人ではやてを救う」


 俺は四人に背を向け、公園の出口へ歩き出す。


「待って拓斗君!」

「月詠!」

「拓斗!!」


 後ろで皆が何かを言ってるがそんなものはどうでもいい。


「安心しな、お前等の邪魔はしない。お前等の起こすことには俺は傍観させてもらう。ただな、はやてを悲しませてみろ。ただじゃおかない」


 最後の言葉の時に殺気を放ち、俺はその場を去った。










 シグナムside

「たくと…たくとぉ……」

「ヴィータちゃん、泣かないで。闇の書が完成して、はやてちゃんが助かってから皆で謝りに行きましょ?」


 シャマルは抱きしめ、頭を撫でながら泣いているヴィータを慰める。
 月詠が公園を去りすぐにヴィータは泣き崩れた。それほどショックだったのだろう。
 私も強いショックを受けている。今の状態のヴィータがいるから平静をなんとか維持出来るといったところだ。

 月詠が私達にあれほどの殺気を向けるなんて………
 あの殺気は完全に私達に敵意を向けていたものだった。
 それでも、全力の殺気ではなかった。おそらく、戦った時の実力も含めてほんの一部なのだろう。


「シグナム……」


 ザフィーラが狼形態となって私の名を呼ぶ。人型ではない為表情は読めないが、きっと私と同じ気持ちなのだろう。ヴィータはもちろん、シャマルも。
 月詠の言うとおりだ。我等は主のためと言って、肝心の主と一緒にいることが極端に減った。朝早くに家を出、夜遅くに帰宅すると言うのが殆どだ。
 それで、悲しんでいる主はやてを見て月詠は懸命に調べ、私達を説得しようと戦った。
 しかし、私たちはそれを拒んだのだ。
 一体、彼はどんな気持だっただろう。
 きっと私じゃ、想像で分かるようなものじゃない。










 それでいいのだ。










 元々我等は闇の書の守護騎士プログラム。道具として使われてきたんだ。昔から、多くの者に怨まれている。
 それに、月詠に言ったではないか。





『だが我等は止まることはできない! 主はやてのためだったら我等はどんな罪でも被ろう! だから今は何があろうと止まれない……立ち止まるわけにはいかないのだ!!』





 と……


「ヴィータ、シャマル、ザフィーラ」

「グズッ……シグナム?」


 落ち着いてきたヴィータを始め、三人が私の方を向く。


「我等は守護騎士だ」

「当たり前でしょ? 何を言っているの?」

「主のためだったらどんな罪でも被ると誓った」


 そう言うと三人はハッとした表情をする。


「そう…そうだったわね」

「我等は守護騎士だ」

「はやての為だったらなんだってやってやる。他の誰かに何を言われたって、そんなの知ったことか」

「その通りだ。月詠には事が済んだら皆で謝罪に行こう。だが、今は時間がないのだ」


 皆が頷く。


「「「「我らが主の為に、一刻も早く闇の書の完成を!」」」」


 主はやて、あなたの命は我らが必ず……… 
 

 
後書き
~あとがき雑談会~

作「決着!」

ソ[勝ったのは当然拓斗だったな]

作「ってアレ? 肝心の拓斗君は?」

ソ[あ~……気にするな。ほっといてやれ]

作「へ? なんで?」

ソ[自分が書いた内容を見返せ]

作「……あぁ………そういうことね。分かったよ」

ソ[なら早いけど終わるか?]

作「そうだね





  ヴォルケンリッターと別れ拓斗は一人はやてを救うために次元世界を駆け巡る

  そんな中、なのは達に群雲の刃が襲いかかる

  次回 魔法少女リリカルなのは~黒影の死神~ 『探求』」





ソ[それじゃあ次回に]

作・ソ「[トリガー・オン!!]」





 …どうして………

 拓斗……… 
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