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クズノハ提督録

作者:KUJO
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クズノハ提督着任

 
前書き
前回のあらすじ……

友人二人に提督になることを勧められ、結局提督業を始めることになった『葛葉』
そんな彼が勤めることとなる鎮守府の扉が開かれた時、彼はとある存在と出会うのであった。



 

 





「え、誰?」
「え…えと、(いなづま)です。どうかよろしくお願いいたします。」

扉を開けた先、葛葉を出迎えたのはまだ幼い少女であった。葛葉の姿を見るなり、『電』と名乗った少女は緊張した面持ちで一礼した。

「あぁ、うんそれは分かった。よろしく電。…で、何でここに?」
「それは、司令官さんが最初に選んでくださったからでは?」
「あ、あー。思い出した、確かに選んだな。」
葛葉はカリキュラムの最後に受けた彼女達の説明を思い出した。

旧日本海軍が誇った軍艦の化身とも言える存在にして、提督を全力でサポートする存在。それが艦娘(かんむす)

その中でも就任直後の提督をサポートするという役割も担う艦娘の一人として彼女『電』が選ばれたのである。
ちなみに葛葉は名前が格好良いからという理由だけで決めた為、姿を見ても気付かなかった様だ。
「精霊か何かかと聞いてた気もするが…こうして見えてるってことは違うのな」
「よ、妖精さんでしたら…こちらに」
そう言って電は自分の腕に持った12.7cm連装砲を模した『艤装(ぎそう)』と呼ばれる装備品を見せた。そこには、掌に乗る程に小さな少女が葛葉を見上げて敬礼をしていた。
「何か乗ってる…」
「妖精さんなのです。艤装の手入れや弾の装填などをしてくださるとても良い子達なのです」
電が紹介すると妖精さんと呼ばれた少女は得意げに笑った。
「他にもいるのか?」
「はい、装備の数だけ妖精さんはいらっしゃるみたいです。今はこの子ですが…」
電はそう言いながら『工廠(こうしょう)』と書かれた部屋へ歩き出した。


「ここは確か、艦船や武器が作れるところだっけ?」
「はい!頑張れば飛行機や電探も作れちゃう凄い所なのです!」
「…何故だろう、ほんの一瞬だけど沢山の人々の悲しみの声が聞こえた気がする…」
「き、気のせいであって欲しいのです…」

暫しの沈黙の後、電は一際大きなクレーンのある空間を指差して
「ここが建造ドックなのです!」
と声高らかに叫んだ。
「ここで艦船の建造をするのです」
「その割には人が誰もいないが…うわっ!」
葛葉が率直な疑問を述べた途端、葛葉のすぐ横から小さな少女たちが続々と現れた。
「建造もこの妖精さん達がやってくださるのです。とてもお仕事が早いのですが…あまりにも早すぎてどの船を作るのか分からないみたいです」
「致命的じゃないか…」
「で、ですが戦艦や空母でも4時間、駆逐艦だと20分前後で作ってくださるみたいです」
「早っ!妖精さん凄い!」
「建造に資材をどれくらい使うかは司令官さん次第なのです」
「もしかして、渡す量によって艦船の種類をある程度決めれるのか?」
「なのです!あ、ですが資材はとても貴重なものなので…」
「…だな。これじゃあ駆逐艦一隻くらいしか作れなさそうだな」

鎮守府に支給された資材はとても少なかった。これは葛葉の鎮守府に限ったことでは無いが、実績の無い新米の提督に資材を多く与えられる程国の資材も豊かではない為、特に支給される資材が少なかった。

「厳しい提督カリキュラムで大多数の奴らが断念したとのことだが、それでも提督になった人数は多いからな…仕方ないか」
「ですが司令官さん。任務をこなしたり実績を上げたりしていっぱい誉めていただければ、資材もいっぱい増えるかもしれないのです!」
「お、そうだな!ありがと。俄然やる気出た」
実は前向きな葛葉提督であった。





「では早速この資材で建造を始めるのです」
「数少ない貴重な資材だ。頼んだぞ、妖精さん達!」
葛葉は一頻り祈った後、泣けなしの資材を建造ドックの妖精さん達に渡した。
「お、建造時間は……22分か」
「駆逐艦なのです」
「まぁ、最初からいきなり大きいのが来ても運用出来ないしな…」
葛葉は安心した様な落胆した様な表情を浮かべた。
「そ…それでは、建造が終了するまで鎮守府の他の場所を案内するのです」





次に電に連れられて向かった先は
「……風呂?布団?何だここは?」
「入渠ドックなのです。戦闘で負った怪我や疲れをここで癒すのです」
「成る程。だから男子禁制て書いてあるのか…って、船が風呂に入るのか?」
「あ、お風呂に入るのは私たちなのです。艦娘の怪我が癒えれば自然と船の方も治りますので…」
「自然に…」
戦時中、艦娘がいればどれだけ修復が楽であっただろうかと少なからず思った葛葉であった。





「次は間宮さんについて説明するのです」
「間宮…給糧艦間宮か」
「間宮さんはとっても優しくて素敵なお姉さんなのです…」
「あ、間宮の艦娘もいるのか」
「お呼びですか?」
二人が話していると甘味処と書かれた暖簾を押し上げて『間宮(まみや)』が顔を出した。
「あ、間宮さんなのです!」
「あら電ちゃん、いらっしゃい。そちらの方はもしかして…」
「ああ、本日よりこの鎮守府にて指揮を執ることになった葛葉だ。よろしく」
「よろしくお願いします。どうぞ今後ともご贔屓に」
間宮は柔らかい笑顔を浮かべて一礼した。
「…ところで艦娘が店を開いてるのか?」
「はい、疲れた時には間宮さんの甘いものが一番なのです」
葛葉の当然とも言える疑問に答えたのは電であった。
「甘いものか…間宮、このバニラアイスを二つ貰えるか?」
「え、司令官さん?」
「バニラアイス二つですね。畏まりました」
そう言って間宮は店の中へと入って行った。
「あの…電の分まで」
「さっきから喋り疲れただろう?これはほんの僅かな労いとでも思ってくれ」
とか言いつつも間宮の方をじっと見つめている辺り、むしろ葛葉の方がアイスを心待ちにしている様であった。
「あの…」
「ん?」
「あ、あのっ!……ありがとう。」
葛葉は何も言わず親指を立てて笑顔を浮かべた。





「美味しかったのです」
「やっぱり甘い物を食べてる時は幸せだな…」
甘味処間宮にてアイスを食べ終わった二人はそろそろ建造が終了していることに気がつき、足早に店を出た。
「さて、誰が来るかな…楽しみだな」
「建造ドックにて待機していると思うのです」
「駆逐艦にも色々種類があるのだろ?」
「分け方は色々ありますが、睦月型、吹雪型、暁型、初春型などなど全部挙げるのが大変なくらい沢山あるのです。ちなみに電は暁型の四番艦なのです」

そんな会話をしている内に二人は工廠の部屋へと到着した。中では初仕事を終えて満足そうに休んでいる妖精さん達の姿も見えた。
「ほ、本当に…船が出来てる…」
「建造が終了したのです」
「妖精さん…凄いな…」
「あ、来た来た!こっちよこっち」
葛葉がしみじみ感心していると妖精さん達のいる方から二人を呼ぶ声が聞こえてきた。






(いかずち)よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!」



 
 

 
後書き

はいどうもKUJOです。

…結局3000文字越えなくてごめんなさい…。あともう一踏ん張りが…orz

更新ペースですが、早くて二日に一話といったペースになりそうです。遅い時は…どうでしょ、一週間とか?(震え声
可能な限り頑張って早く書いて行きたいと思います。

「こここんな風にした方がいい」というアドバイスの他にも、雑過ぎて不愉快に感じるような設定とか、細かく設定し過ぎて鬱陶しいところ、とかのご指摘も頂けるととても喜びます!


第一話に引き続き読了してくださった方には頭の上がらない思いで一杯です。
差し支えなければ、今後とも読んでくださることを心の底からお願い申し上げます。



それでは。 
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