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美しき異形達

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第六話 水と氷その十三

「満足すべきよ。ただ」
「ただ?」
「灰を掴んだのね」 
 菖蒲は薊にこのことも言った。
「そうしたのね」
「ああ、駄目か?」
「危ないわよ」
 菖蒲はその薊にこう言ったのである。
「それは」
「ああ、怪人の身体が何で出来てるかわからないからな」
「毒があるとか」
 怪人の身体にだ、それでその怪人の身体がなった灰もだ。
「そうした心配があるわよ」
「そうだな、言われてみれば」
「何ともない?手は」
「いや、別に」
 灰を掴んだままでだ、薊は菖蒲に答えた。
「何もないぜ」
「そうなの、だといいけれど」
「今のところはさ」
「後でお医者さんに診察してもらった方がいいわよ」
「だよな、蛇だしな」 
 蛇は毒がある、それで薊も言うのだった。
「そうしたことはな」
「ええ、まあ蛇の毒はすぐに打ち消せるけれどね」
「血清でかい?」
「いえ、熱でね」
 それでだ、蛇の毒は消えるというのだ。
「蛇の毒は蛋白質から出来ているから熱すると消えるのよ」
「そうなんだな」
「ええ、そうよ」
 だからだというのだ。
「今回は氷で倒したけれど灰になっているから」
「熱せられたってことかね」
「そう思えるわ、だからね」
 それでだというのだ。
「大丈夫だと思うけれど」
「そうか、じゃあとにかくな」
「とにかくね」
「この灰先輩のところに持って行ってな」
「調べてもらいましょう」
「それじゃあな」 
 こうしてだった、何はともあれ怪人の灰は智和のところに持って行った。そして智和はその灰を受け取ってだ。
 そのうえでだ、薊と菖蒲にこう言った。
「有り難う、そしてお疲れ様」
「じゃあその灰をだよな」
「調べるのですね」
「うん、そうさせてもらうよ」
 こう穏やかな笑顔で二人に言うのだった。
「今からね」
「これで何かわかればいいな」
 薊はこう言った。
「怪人の灰からな」
「そうだね、では知り合いの人に調べてもらうから」
「宜しく頼むな」
「僕でも調べられるけれど」
 智和でもだというのだ、このことは。
 だがそれと共にだ、彼はこう二人に言うのだった。
「けれどね」
「先輩はまだ高校生だからですね」
「知識と技術には限りがあるよ」
 彼が持っているものはというのだ。
「だからね」
「ちょっとか」
「わかることは限られているんですね」
「そうだよ」
「けれど先輩うちの学園で一番の天才だろ」 
 薊は智和の世間での評判のことから彼に言った。 
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