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実験材料

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第三章

「しかも人間を実験に使えばです」
「医学も科学の人の為のものですから」
「マウスやモルモットより参考になりますね」
「それならですね」
「死刑囚を生体実験に使うべきですか」
「そうです、ですから」
 だからだとだ、マルケッロは主張するのだった。
「このことに関する法案を出そうと考えています」
「それはいいですね」
「死刑囚なら何をしてもいいですし」
 これも連合独自の考えだ。
「実験なら惨たらしい処刑になりますし」
「いいショーになりますね」
 連合では死刑囚の処刑はショーになっている。極悪人は惨たらしくゆっくりと殺されて当然でありそれを見ることは娯楽だという考えだからだ。
「それではですね」
「議員が法案を出されますか」
「この法案を」
「はい、マウスやモルモット達を守り」
 そしてだというのだ。
「死刑囚の処刑を増やししかもショーにもなる」
「一石二鳥、いえ三鳥ですね」
「いい法案ですね」
「私もそう思いますので」
 それ故にとだ、マルケッロも確かな顔で述べる。
「ここは」
「はい、では」
「法案としてまとめていきましょう」
 彼のスタッフも協力してだった、そのうえで。
 マルケッロは法案をまとめていった、しかしここでもう一つの問題があった。スタッフの一人がこう言ってきたのだ。
「しかし死刑囚の処理にはなっても」
「何か」
「はい、実験材料に使う素材の数は多いです」
 だからマウスなりが使われていたのだ、彼等はすぐに増えるからだ。
「死刑囚は多いですが」
「実験の多さと比較すれば」
「少ないですが」
 こうマルケッロに話すのだった。
「そこが問題ですが」
「それもそうですね」
 マルケッロも愚かではない、そのスタッフの話にその通りだという顔で頷いて答える。
「実験材料にするには死刑囚は少ないですね」
「ですから」
「そこはどうするか」
 マルケッロはあらためて思索に入った、そしてだった。
 暫く考えてだ、また閃いて言うのだった。
「このことについては」
「はい、死刑囚の数は」
「それは」
「それならです」
 どうするかというのだった。
「クローン技術を使ってはどうでしょうか」
「それを使ってですか」
「クローン技術を」
「そうです、死刑囚のクローンを作って」
 そのうえでだというのだ。
「実験材料としましょう」
「成程、クローンを使えばですね」
「数も幾らでも調達出来ますね」
「しかもクローンとはいえ死刑囚のものですし」
「何をしても構いませんね」
 ここでも連合独自の人権への考え方が出ていた、連合は基本的人権には厳しいが凶悪犯やテロリスト、彼等がそうなる死刑囚への人権は全く考慮する必要がないと考えているのだ。
 そしてだ、クローン技術については。
「クローン技術は中央政府が管轄していますが」
「各国政府でもなく」
「民間でもなく」
 重要な技術だからだ、この技術は中央政府が管理しているのだ。このことはエウロパやマウリアでも同じだ。クローン以外の重要な技術も中央政府が管轄し悪用を避けているのだ。連合は中央政府の権限は弱いがそれでもこうした技術は管轄しその確かな地位を保ってもいるのだ。 
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