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美しき異形達

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第六話 水と氷その二

 二人になったところでだ、薊はにやりとした感じの笑みで菖蒲に問うた。
「あんた、力あるだろ」
「力・・・・・・」
「こうした力だよ」
 その笑みでだ、薊は自分の右手を顔の横に掌を何かを軽く掴む様に挙げてだった、その掌に赤い炎を出した。そのうえで菖蒲に問うた。
「あんたも持ってるよな」
「隠せないわね」
「今の言葉は返事かい?」
「そう思ってくれていいわ」
 菖蒲は今も感情を見せない、そのうえで薊に言うのだった。
「私としてもね」
「そうかい。じゃああんたも訳のわからない連中と戦ってるんだな」
「人と動物の合いのかしら」
「そうそう、そうだよ」
「やはりね、そうだったのね」
「あの連中のことは知ってるかい?」
「動物の力を持っていて私を殺そうとしていることはね」
 薊と同じ事情だった、このことは。
「知っているわ」
「それ以外は?」
「生憎だけれど」
 菖蒲は今もクールに薊に答えた。
「おそらく貴女と同じ位よ」
「そうか、お互い殆ど何も知らないんだな」
「そうよ。けれど貴女が彼等と闘うのなら」
「怪人っていうらしいな」
「その呼び名ははじめて聞いたわ」
 菖蒲としてはというのだ。
「彼等は怪人というのね」
「向こうもそれでいいって言ってたぜ」
「公認ね。それで貴女は私に何を求めているのかしら」
「何をって?」
「だから。何かしら」
 こう薊に尋ねてきたのだ。
「力のことを話したけれど」
「いや、そう言われてもな」
 菖蒲が自分の目をじっと見てきているがわかった。視線と視線を合わせたままそのうえで菖蒲の言葉に戸惑った。
 そのうえでだ、こう彼女に言葉を返した。
「あたしはそうしたことは」
「考えてなかったの」
「ただあんたが力を持ってるかどうかな」
「確かめたかったのね」
「そうだよ、けれどな」
「他のことは考えてなかったのね」
「そうだよ、何を求めてるってな」
 そう言われてもだ、薊としても。
「あたしも困るな」
「そうなのね」
「いやさ、あたしも力持ってるし」
「そして怪人と闘っている」
「連中のことを何か知ってるかと思ったけれどな」
「私の彼等への知識の程度は貴女と同じ位よ」
 つまり殆ど知らないというのだ。
「彼等が何処から出て来るのか、何故私達を襲って来るのか」
「わからないんだな」
「ええ、一切ね」
「そうなんだな」
「同じよ。だから教えることは出来ないわ」
 同じ位しか知らないならというのだ、このことは薊にとっては残念だった。
 だが、だ。菖蒲からその残念さを顔に出していた薊に言ってきた。
「けれど。一人より二人よ」
「二人?」
「怪人と一人で闘うよりもね」
 二人ならというのだ。
「有利に立てるわね」
「つまりあたしと一緒に戦いたいのかよ」
「これまで私は一人で戦ってきたけれど」
 このことは薊と同じだ、だがというのだ。
「何度か危うい場面があったわ」
「そうそう、それあたしもだよ」
 薊は右手の人差し指を立ててその指を前後に小さく振ってその通りだと言った。 
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