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White and Black

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第四章


第四章

「けれど。今一つなんだよ」
「そうか、そういう意味か」
「あれだ。もうちょっと練習したらいい」
「それでいいのか?」
「他のカントリーロックの歌手を聴きながらだ」
 話は少し具体的なものになってきた。
「そうしたらいいさ」
「あれか。またアフリカ系のをメインにか」
「そうだ。カントリーロックもアフリカ系が多いからな」
「それでなんだな」
「あんたがレイシストならそんなことは言わないさ」
 それはないというのである。
「けれどあんたはそうした偏見はないからな」
「だから音楽に人種とか関係ないだろ」
 この考えは変わらない。ロバートの美点でもある。
「そうだろ?やっぱり」
「そうさ。何度も言うが俺はな」
「そういう奴にはだよな」
「CDも紹介しないし売らないし話もしない」
 話は三連続であった。
「絶対にな」
「だから俺にもか」
「それでだ。何か違うだろ」
 店員は話を音楽に戻してきた。
「アフリカ系の演奏もな。歌手によるけれどな」
「そうだな。何かな」
「具体的に言うと他の音楽が入ってるな」
「ああ、そうだな」
 その通りだった。ロバートもそのことはもう感じ取っていた。
「何かな」
「それだよ。カントリーロックに他の音楽も入れてるんだよ」
「それを演奏に出してるんだな」
「そうさ。具体的にはそうさ」
「他の音楽か」
「ジャズにしてもロックにしてもな。入れてるからな」
 そうした音楽のものをだ。アフリカ系の歌手達は入れているというのだ。
「それを演奏に入れてるんだ」
「音楽にはじゃなくてか」
「あんたは音楽もいい」
 作曲という意味である。
「歌詞はまあ普通レベルだけれどな。とりあえずそれは置いておいてな」
「要は演奏か」
「そうさ。あんたはそれだ」
「演奏がどうかか」
「練習しながら聴いてみるんだな」
 店員は二つのアドバイスを合わせて一つにして述べた。
「そうしたらいいさ」
「わかった。じゃあな」
 こうしてだった。彼はまたCDを買ってそうしてそれを聴いてそのうえで練習をしてみる。するとその中でだ。感性でわかったのだ。
「ああ、そうか」
 ギターを演奏しながら述べた。自分の部屋の中でだ。
 下手の中にはステレオがある。そこにCDを入れているのだ。その他にはテレビとベッドがあるだけだ。質素といえば質素な部屋である。
 その中でベッドの上に座ってだ。彼は今わかったのだった。
「ここをこうしてだな」
 演奏の中で呟く。
「こうしたらいいんだな」
 指を動かしてだ。それを確かめるのであった。
 そうしたことをやっていってだ。それでだった。
 ライブの時、小さな会場でそれをやってみた。するとだ。
 既に彼を知っている観客がだ。まず言った。
「あれっ、変わった?」
「ああ、変わったな」
「いい感じになったら」
「一層な」
 これが彼等の感想であった。
「これまでストレートだったのにな」
「それが変化球も入ったな」
「ああ、そんな感じだな」
 こう話をしていく。
 
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