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White and Black

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第二章


第二章

「そういう奴じゃないな」
「別にな。肌の色なんてどうでもいいだろ」
 ロバートも真面目な顔で答える。
「それで歌が上手くなるのか?肌が白いとか黒いだけで」
「それならいいさ」
 店員も彼の言葉を聞いて納得した顔で述べた。
「ここでニガーとか言ったらな」
 アフリカ系への蔑称である。日本語に訳すと黒んぼとなるだろうか。
「店から追い出してるところだ」
「おいおい、厳しいな」
「そういうあんただって白んぼとか言われたら怒るだろ」
「ああ、ぶん殴る」
 真面目な顔で答えるロバートだった。
「相手が誰でもな」
「そういうことだよ。だからな」
「そういうことか」
「こう言えばわかるな」
「よくな」
 そのアフリカ系の店員に応えてからだ。彼はあらためて言うのであった。
「しかし。本当に多いな」
「だから人気があるからだよ」
「人気か」
「どうしてもアフリカ系のが多いな」
 店員はここでもこうロバートに話す。
「まあそういうことだ」
「それでお勧めの曲は何だ?」
「ジャンルは何だい?」
「カントリーロックな」
 自分がそれを歌う歌手とは答えない。しかしそれでも問うのだった。
「それな」
「カントリーロックか」
「ああ。あるよな」
「あるぜ」
 店員は気さくな笑顔になってロバートに答えた。そうしてだった。
 すぐにだ。一枚のCDを出してきた。それは。
 CDのジャケットは落ち着いたものだった。だがそこにいるのは。
「こいつは」
「アルバート=ヒューイックか」
「それがそいつの名前か」
「ああ、そうだよ」
 そこにいたのもアフリカ系だった。何処かデンゼル=ワシントンに似た男が湖のほとりで佇んでいる。そうしたジャケットだった。
 それを見てだ。店員は言うのだった。
「いいぜ、この歌手は」
「カントリーロックもなんだな」
 ロバートは考える顔でこう述べた。
「やっぱり」
「アフリカ系か」
「歌うんだな」
「どのジャンルでもいるな」
 店員も実際そうだというのである。
「クラシックでもそうだしな」
「キャスリーン=バトルにジェシー=ノーマンか」
 どちらもオペラ歌手である。ソプラノである。
「あの二人とかだな」
「まあバトルはな」
 店員はバトルについては困った笑顔になって述べた。
「今はな」
「メトに出られないからな」
「問題起こしてな」
 このことは二人共知っているのだった。
「それでだからな」
「あれはバトルが悪いな」
「やっぱりな。まあとにかくな」
「我が国の音楽はか」
「ああ、アフリカ系が多いからな」
 そこに行き着く。やはりだ。
「カントリーロックでもな」
「そうなんだな」
「そうだよ。それでこれ買うかい?」
 店員はそのCDを見せ続けながら問うた。
 
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