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美しき異形達

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第五話 二人目の持ち主その七

 その姿勢でだ、こう薊に言うのだ。
「目立つ」
「いいことだね、車によく見付かってはねられずに済むよ」
「俺に見付かってもいいのだな」
「構わないね、やるつもりならね」
 それならとだ、ここで。
 薊はその手に七節棍を出してきた、そのうえで。
 両手に持って構える、そうして言うのだった。
「やるだけだしね」
「言葉は多くはいらないな」
「ああ、じゃあやるか」
「貴様は俺には勝てない」
 怪人はここでこうした時代にはよく出される言葉を出した。
「ここで死ぬ」
「おいおい、お決まりの台詞にも程があるだろ」
「これからそうなる事実を言ったまでだ」
「そう言うんだね、じゃあどうやってあたしを倒すんだい?」
「こうしてだ」
 こう言ってだ、そのうえで。
 怪人は姿を消した、まるでその場に溶け込む様に。
 そうしてだ、こう言って来たのだった。
「これでわかったな」
「ああ、あんたカメレオンだからな」
「カメレオンは身体の色を変えられる」
「それはあたしも知ってるさ」
 あまりにも有名なことだ、薊も知らない筈がない。
「勉強は得意な方じゃないがな」
「それなら話は早いな」
「まあね、じゃあ来るんだね」
「そうだ、死ぬのだ」
 こう言ってだ、何処からかだった。
 怪人の一撃が来た、それが薊の腹を打った。
 その一撃に蹲りそうになる、だがそれを耐えて態勢を立て直しつつ言った。
「効くねえ」
「今のは挨拶代わりだ」
「へえ、挨拶はもう済んだと思ったけれどね」
「闘いの挨拶だと思え」
 それだと言うのだ。
「これならわかるな」
「まあね、姿が見えないんだね」
「さて、これならどうする」
「どうするって決まってるだろ」
 薊は一旦間合いを離した、そうして。
 あらためて構えを取りそれからまた怪人に言った。
「闘うだけだよ」
「逃げることはしないか」
「それも手だろうけれどね」
 だが、というのだ。
「今は闘うさ」
「そして死ぬのか」
「いやいや、違うね」
「違う?」
「死ぬのはあんただよ」
 にやりと笑っての言葉だった。
「生憎ね」
「減らず口か」
「あたしはそういうのは言わないよ」
 また返すのだった、言葉を。
「やる時はな」
「闘うだけか」
「口はまあ付録だよ」
 そうしたものに過ぎないというのだ。
「そういうことでな」
「はじめるのだな」
「手加減はしないよ」
 鋭い目になりだ、薊は怪人に対して言い切った。構えを取っている。
「それじゃあね」
「いいだろう、ではだ」
「ああ、じゃあな」
「死ね」
 こう言ってだ、そしてだった。
 怪人は姿を消したまま薊に攻撃を仕掛けて来る、その攻撃はかなりのもので姿が見えないだけではない。
 速さ、そして威力もだった。かなりのもので薊は見えないそれを受け続けながら周囲の気配を察しつつ言った。 
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