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美しき異形達

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第五話 二人目の持ち主その六

「こうしたのも」
「慣れると最高よ」
「ここがお家になりますから」
 まさにだというのだ。
「このお部屋がね」
「お家ですよ」
「そうか、ここがなんだな」
 しみじみとした口調になってだ、今度はこう言う薊だった。
「面白いよな」
「先輩のお家は」
「孤児院だよ」
 横須賀にいた頃はだ、そこだったというのだ。
「まさにそうだったよ」
「そうですよね」
「いい家だったよ」
 にこりと笑って言う薊だった。
「また戻れたらって思うけれどな」
「戻れないですか?」
「いや、今は寮が家でさ」
 二人との話をそのまま返す。
「大学に行ったら大学の寮がその時の家になって」
「就職したら、ですね」
「就職したらアパートになるかな」
 そこに住むのではないかというのだ。
「一人暮らしかね」
「先のお話ですね」
「まあ暫くは寮さ」
 高校、大学ではというのだ。
「こういうのも馴染めてるしいいかなって思ってるよ」
「寮に馴染めたらそれに越したことはないわよね」
 朱美が笑顔で言う。
「やっぱり」
「そうなんだよな、そこは」
「じゃあ薊ちゃん今は」
「ここに馴染めてきてるからな」
 だからだというのだ。
「有り難いよ」
「じゃあ紅茶を飲み終えたら」
 伸子も言ってくる。
「またお勉強して」
「それからだよな」
「はい、お休みですね」
 薊は寮の部屋の中でも学園生活に馴染んできていた。それは彼女にとって決して悪いものではなく親しみを感じだしていた。
 それは学園でも同じだ、クラスでも薊は浮くことなく充実した学園生活を送っていた。しかしその中で、だった。
 拳法部の部活の時薊は一人学園の中をランニングしていた、他の部員達と一緒だったが八条学園はあまりにも広く学園に来て間もない薊は道に迷ったのだ、今彼女がいる場所は森の中だった。
 森の中に入ってしまってだ、こう言うのだった。
「大学の農学部のところか?」
 裕香から聞いた話を思い出しながらの言葉だ。
「そこか?随分広い学園だよな」
 このことについても言うのだった、だが。
 道に迷っていることを自覚してだ、とりあえずは森から学園の大通りに出てそこから高校に戻ろうと考えた、それでだった。
 そちらに向かおうとしたところでだ、目の前に。
 怪人が出て来た、今度の怪人はというと。 
 緑の怪人だった、目はそれぞれ離れていて大きい。皮膚は細かい鱗で赤く細長い舌が嘴に似た口から出て来た、その怪人を見てだ。
 薊は怪人を見据えてだ、こう言った。
「トカゲ?違うなカメレオンかね」
「カメレオンだ」
 そちらだとだ、薊に答えた怪人だった。
「俺はな」
「へえ、そうなんだな」
「そうだ、貴様を探すことは容易だな」
「それはどうしてだい?」
「目立つからだ」
 だからだというのだ。
「貴様はな」
「この格好だからかい」
「赤いジャージは目立つ」
 今二人は森の中にいる、緑の森の中なら尚更である。
「だからだ」
「あたしは赤が好きだからね」
「上下共に赤だからな」
 このことをだ、怪人は指摘する。見れば立っていて人型だが腰はやや曲がっている。手は人間のものだがだらりと下がっている。 
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