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遊戯王GX~鉄砲水の四方山話~

作者:久本誠一
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ターン3 鉄砲水と光の天使

 
前書き
DDBとフィール版妖精竜、グングニール以外のレベル7シンクロ枠にどちらを入れるか真剣に悩む今日この頃。できれば両方入れたいんだけど、枠がなあ。
それと今回ちょっと短いです。理由は自分でもよくわからん。 

 
「はい、仕込み終わりっと。葵ちゃんどう?もう準備するものないよね?」
「そうですね。予約分でやっておくことはとっくの昔に終わってます。というかいくらなんでも作りすぎですよ先輩。注文のあてもないのにこんなに作って悪くなったらどうするんですか」
「あはは。だいじょーぶだよきっと、もうすぐやる新入生歓迎集会ですぐ捌けるはずだから」
「…………すごくそれっぽいこと言ってますけど、絶対それたった今考えましたよね」
「あ、ばれた?」

 まったくもう、と息を吐く葵ちゃん。さっきまでお昼だったはずなのに、ふと気が付けば太陽も沈みかかっている程度の時刻。つい熱中して商売(菓子作り)に精を出しすぎたようだけど、なんだかんだ言って最後まで付き合ってくれた葵ちゃんには感謝。

「さてと、夕飯も作らなきゃだしそろそろ帰ろうか。もうすぐ暗くなるし、近くまで送ってくよ」
「好き好んで自分で夕飯作ってる寮なんて先輩のオシリスレッドくらいのものですけどね。じゃあ、せっかくですしお願いしましょうか。………でも、たぶん今来ても夢想先輩には会えないと思いますよ?」

 あ、バレてた。これ以上ぼろを出すのは避けようとその言葉を最後に手早く片づけを済ませ、電気を消して外に出る。連れ立って歩くとはいえ特に何か話すわけでもないが、この距離感は割と気に入ってるので気まずくはない。いっぺん気を使って色々話しかけてみたこともあったけど、その時は彼女から別に気を遣わなくていいですよ、私もあの距離感は悪くありませんし、ってあっさり言われたのでその言葉に甘えることにしている。のんびり歩いていると、すぐにブルー寮が見えてきた。
 一応は男子禁制、あまり近づくわけにもいかないのである程度近くまで来たあたりでそれじゃあ、と手を振って帰ろうとすると、白いスーツ姿の少年が歩いてくるのとすれ違った。見ない顔だし新入生かな、と思いながら軽く会釈すると、あ、という返事が返ってきた。

「あの、もしかしてオシリスレッドの遊野先輩ですか?僕、新入生のエドっていいます。ぶしつけなお願いですが、僕とデュエルしていただけないでしょうか」
「え?」
「さっきレッド寮に行ったんですけどいなかったものですから今日はもう会えないのかと思ってたら………うわあ、嬉しいです」

 さわやかーな笑顔でそんなことを堂々と言ってくるエド。うん、まあ、悪い気はしない、かな。ただなんとなく、何となくだけど嫌な予感のようなものがする。よし、少し探ってみるか。

「それはいいとして、なんで僕のことが……?」
「そりゃあ、この学校で赤い制服を着ている人なんて数少ないですからね。すぐにわかりましたよ」

 うーん、悪い人には見えないなあ。こういう時はしょうがない、十代方式で行くか。
 いわく、デュエルすれば分かり合える。

「それじゃ……」
「あ、デュエルしてくれますか!ありがとうございます」
「うん。勝負と洒落込もうか!」

「「デュエル!」」

「先行は僕がもらいますね。僕のターン、ドロー…………は、もうできないんでしたっけ」

 む、予習不足かな?まったく、ルールぐらいしっかり覚えておかないとこの後色々困るよ?と言いたいのをぐっとこらえる。きっと先輩たちにとっては、去年の僕も同じようなふうに見えていたんだろう。先は長いんだ、僕らがこれからゆっくり教えていけばいい。あんまり頭ごなしに怒られると、やる気って急になくなっちゃうしね。

「まず、光天使(ホーリー・ライトニング)ウィングスを守備表示で召喚!」

 エドの場に翼、というよりも鳥の翼の彫刻のような形をしたモンスターが召喚される。光天使、一体どんな動きをするんだろう。

 光天使ウィングス 守1800

「そしてこの瞬間、ウィングスの効果発動!召喚成功時、手札からさらに光天使と名のつくモンスターを特殊召喚できる!光天使(ホーリー・ライトニング)…ブックス!」

 次いで、本の形を模した彫刻のようなモンスター。だめだ、この後の動きが全く予想できない。

 光天使ブックス 攻1600

「さらにブックスの効果を発動、手札の魔法カード1枚をコストに手札の光天使を1体特殊召喚する!魔法カード、サルガッソの灯台を墓地に送って特殊召喚、現れろ光天使(ホーリー・ライトニング)ソード!」

 光天使ソード 攻1400

 やっぱり剣というより剣をモチーフにした美術品といった方がしっくりくるモンスター、ソード。手札4枚を使ったとはいえ、まさか1ターン目からいきなり3体もモンスターを展開してくるとはね。

「そして魔法カード、トランスターンを発動。僕の場のブックスをリリースしてデッキから同じ属性、種族でレベルが1高いモンスターを特殊召喚する!光属性天使族レベル5、光神テテュスを特殊召喚」

 ブックスの体から後光が放たれ、あまりの眩しさに一瞬目をそらすとそこにはさっきまでとは似ても似つかない白い羽のお姉さんの姿が。こんなにあっさりと上級モンスターを出してくるなんて、たいしたもんだ。だけど、今の動きでもうエドの手札は0。このモンスターたちをなんとかできれば、立て直しはかなり難しいはずだ。

 光神テテュス 攻2400

「僕はこれで、ターンエンドです。先輩、どうぞ」
「さーて、このターンでどれくらい削れるかな?ドロー!」

 うーん、初手がシーラカンスにグリズリーマザー、白銀のスナイパーと安全地帯に激流蘇生。そして今引いたのがダブルフィン・シャークか。せっかくエドが手札を使い切った今のうちに攻め込んでおきたかったけど、これはどうしようもないか。むしろ一歩間違えれば手札事故なこの状況、出せるモンスターがいるだけありがたいと思おう。

「グリズリーマザー守備表示で召喚。カードを3枚セットしてターンエンド」

 グリズリーマザー 守1000

 エド LP4000 手札:0
モンスター:光天使ウィングス(守)
      光天使ソード(攻)
      光神テテュス(攻)
魔法・罠:なし

 清明 LP4000 手札:2
モンスター:グリズリーマザー(守)
魔法・罠:3(伏せ)

 白銀のスナイパーと安全地帯が伏せてあって相手の場には攻撃表示モンスター、今の状況なら大嵐なんてむしろ歓迎したいぐらいだ。ただ、激流蘇生が破壊されるのはちょっと困るけど。とはいえあっちだって3枚も伏せれば相当動きにくいはずだ。さあて、どう出てくるかな?

「僕のターン、ドロー……この瞬間、テテュスの効果を発動。自分がドローしたカードが天使族ならそれを公開して、さらにドローをすることができる。まず1枚目、光天使ブックス。2枚目、もけもけ。3枚目。おや、またもけもけだ。4枚目、神聖なる球体。5枚目、大天使ゼラート。6枚目、創造の代行者 ヴィーナス。7枚目………は、さすがに無理か」

 さすがに無理かじゃない。あれよあれよという間に手札0からドローフェイズだけで7参って、どうなってんのこれ。そんな思いをよそに、まるでこれだけドローするのはわかっていたといわんばかりに平然とターンを進めていく。

「光天使ソードの効果を発動、手札から光天使を1体墓地に送ることで、エンドフェイズまでその攻撃力を自らに加算する。ブックスを捨てて、攻撃力1600ポイントアップ」

 光天使ソード 攻1400→3000

「いくらエンドフェイズまでとはいえ、レベル4でお手軽3000打点って………」

 素の打点が低いことで有名な水属性に分けてもらいたいもんだ、まったくもう。

「そして最後にドローしたカード、手札抹殺を発動。お互い手札をすべて捨てて、その枚数ぶんだけカードをドロー」
「手札抹殺!?シ、シーラカンスがっ!」
「おや、ラッキーでしたね。でも、この程度じゃあ終わりませんよ?ウィングスをリリースして、裁きの代行者 サターンをアドバンス召喚」

 裁きの代行者 サターン 攻2400

「くっ……!」
「なるほど、今のサターンにも反応しない、ということはその伏せカードは召喚反応系ではない、と。なら、警戒するべきカードはミラフォぐらい………いいでしょう、このまま攻撃。まずはテテュスでグリズリーマザーを破壊!」

 光神テテュス 攻2200→グリズリーマザー 守1000(破壊)

「この瞬間、グリズリーマザーの効果によってデッキから攻撃力1500以下の水属性を特殊召喚できる!来て、ニードル・ギルマン!」

 ニードル・ギルマン 攻1300→1700

「なるほど、そのカードは確か場に存在する限り水、魚、海竜族のモンスターの攻撃力を400アップさせる効果を持ってましたね。実質攻撃力1700、なかなかの手だ」

 その言葉を聞き、にやりと笑ってみせる。こっちだってこの1年でいろいろな相手とデュエルしてきたんだ、最近来たばっかりの1年にそう簡単にやられてたまるものですかっての。

「さらに僕はこのカード、激流蘇生をグリズリーマザー破壊時に発動するのさ!このカードの効果で、破壊された水属性は復活!さらに500ポイントの効果ダメージも与えるおまけつきだよ」

 グリズリーマザーが地面から吹き上がった水流に乗って再び現れ、ヒゲアンコウの隣で防御の構えをとる。ふう、サイクロンとか引かれなくてよかったよかった。

 グリズリーマザー 守1000
 エド LP4000→3500

「くっ………なら、ソードでギルマンに攻撃!」
「しょうがない、その攻撃は通しだよ」

 手札にシーラカンスさえいれば安全地帯使ってでも守りきったんだけど、残念ながら2枚目はさっきの手札抹殺でドローできなかったからね。だからヒゲアンコウには悪いけど、ここは倒れてもらって安全地帯を温存する方がいい。

 光天使ソード 攻3000→ニードル・ギルマン 攻1700(破壊)
 清明 LP4000→2700

「サターンで攻撃……はやめておこう。メイン2に永続魔法、タイムカプセルを発動。デッキからカードを1枚選んでこのカードに封印し、2ターン後に手札に加えます。カードを1枚伏せて、エンドフェイズにソードの攻撃力は元に戻る。さ、ターンエンドですよ先輩」

 光天使ソード 攻3000→1400

「僕のターン!まずグリズリーマザーを攻撃表示に変更。ここは頼むよグリズリーマザー、ソードに攻撃、そして相打ち!」

 真っ青な熊のかぎ爪と、文字通りの剣がぶつかり合う。攻撃力が同じなためどちらも戦闘破壊されるが、こっちにはグリズリーマザーの効果がある。

「そして戦闘破壊されたグリズリーマザーの効果で、デッキからキラー・ラブカを特殊召喚する」

 キラー・ラブカ 攻700

「そんな弱いモンスターをわざわざ出して、一体どうするつもりなんですか?」
「む。まだまだ甘いね1年、確かにこのモンスターのステータスは戦闘向きじゃない。だけど、このカードはサポーターとしてはこの上なく有能なのさ。メイン2にラブカをリリースして氷帝メビウスをアドバンス召喚、そして効果発動フリーズ・バースト!このカードのアドバンス召喚成功時、場の魔法、罠カードを2枚まで破壊する!僕が選ぶのはそっちの右側に伏せてあるカードと、僕の場にあるこの伏せカード!」
「何!?」

 2本のつららが、それぞれエドと僕の場の伏せカードめがけてまっすぐ飛んでいく。あっちの場の撃ちぬいたカードは………装備魔法に対策するカード、アーマーブレイクか。あんまりうまみがないもの破壊しちゃったかな。

「だとしても、僕のやることは変わらないけどね。チェーンしてトラップ発動、安全地帯!対象はその光神テテュス!ふっふっふ、このコンボを使えば……」
「なるほど。安全地帯は対象になったモンスターを破壊から守る効果を持っている反面、自身が除去されるとそのモンスターを道連れにする効果を持っている………そういうことですね」
「う、うん」

 くっ、なかなか詳しいじゃないかエド。僕が去年そのコンボを思いつくのにどれだけかかったと思ってるんだ。

「ま、まあいいや。さらにフィールド魔法、忘却の都 レミューリアを発動。ターンエンドするよ」

 氷帝メビウス 攻2400→2600 守1000→1200

 エド LP3500 手札:2
モンスター:裁きの代行者 サターン(攻)
魔法・罠:1(伏せ)
     タイムカプセル(0)

 清明 LP2700 手札:1
モンスター:氷帝メビウス(攻)
魔法・罠:1(伏せ)
場:忘却の都 レミューリア

「僕のターン。フィールド魔法、天空の聖域を発動!」

 僕の後ろにそびえるレミューリアの白い建物の真正面に、これまた真っ白い天使の城が地面からせりあがってくる。一見よく似た建物に見えるが最大の違いは、レミューリアの周りは海が取り囲んでいるのに対しあちらは雲に包まれていることだろう。

「そして伏せてあった魔法カード、盗人ゴブリンを発動。相手のライフを500奪い、自分のライフに変換します」

 清明 LP2700→2200
 エド LP3500→4000

「そしてこの瞬間、サターンの効果を発動!天空の聖域が場にある状態で自分のライフが相手よりも上の時、このカードをリリースすることで相手ライフにその数値ぶんのダメージを与える!」
「そのために盗人ゴブリンを………うわっ!」

 サターンの体が真っ白く光りだしたかと思うと一つのエネルギー弾になり、それがこちらに向けて突っ込んでくる。とっさに止めようとしたメビウスをひらりとかわしたそれは、僕にぶつかって爆発を起こした。

「ライフの差は1800、さすがにこれは効いた……!」

 清明 LP2200→400

「この効果を使うターン、バトルフェイズが行えませんので。カードを1枚セット、これでターン終了です。やれやれ、闇の力を持ったカードの持ち主だっていうからどんなすごいデュエリストなのかと思ったらこの程度か。遊城十代といい遊野清明といい、何がそんなに気になるんだか」
「ん?今何か言った?」

 ターン終了です、からのセリフが声が小さくてよく聞こえなかったからちょっと聞き直す。はて、十代がどうとか言ってたような気がするけど。

「ああいえ、なんでもないですよ。なんでも、ね」
「ふむ。まずは僕のターン、ドロー」

 そのことについては後でゆっくり聞いてみよう、と思いながらカードを引く。こっちのライフはもう危険領域、だけどエドのライフはさっきの回復のせいで実質削れてないに等しい。
 割とまずい状況だ。だけど、だからこそ面白いともいえる。

「オイスターマイスターを攻撃表示で召喚。そしてメビウス、攻撃!アイス・ランス!」

 オイスターマイスター 攻1600→1800 守200→400

「それにはトラップカード、ガード・ブロックを発動!戦闘ダメージを無効にして、カードをドロー」
「ならオイスターマイスターでさらにダイレクト、オイスターショット!」

 オイスターマイスター 攻1800→エド(直接攻撃)
 エド LP4000→2200
 
 ようやくまともに戦闘ダメージが通った。だけどそれはそれとして、何となく気になることが1つある。さっきからどうも、自分のモンスターがやられたことへの悲しみというかなんというか、とにかくそんなものが全然感じられないのだ。そんなものいちいち感じてられない、なんてのはデュエルディスクでデュエルをしたことのない人間だけが言える事だろう。ソリッドビジョンで立体化した、自分が信じてデッキに入れたモンスターがやられるのを見るのは意外と心に来るものがあるのだ。
 だけど、目の前で平然とデュエルを行うこの男からはその意思が全く感じられないのだ。例えて言うならそう、そこらへんで適当に拾ったカードをモンスターゾーンに置いてデュエルしているかのような。
 それとも僕の気にしすぎ、なんだろうか。

「これでターンエンド」

 エド LP2200 手札:2
モンスター:なし
魔法・罠:1(伏せ)
     タイムカプセル(1)
場:天空の聖域

 清明 LP400 手札:1
モンスター:氷帝メビウス(攻)
      オイスターマイスター(攻)
魔法・罠:1(伏せ)
場:忘却の都 レミューリア

「僕のターン。そろそろ終わらせますよ、先輩。ゼラの戦士を召喚、そしてこのモンスターをリリースすることで手札から大天使ゼラートを特殊召喚!」

 たくましい体つきの仮面をつけた剣士が聖域の奥に入ってゆき、神々しい光とともに白い翼をもった大天使になってゆっくりとエドのもとへ帰ってくる。エド、まだそんな切り札がいたのか……!

 大天使ゼラート 攻2800

「ゼラートは1ターンに1度、手札の光属性モンスターを捨てることで相手モンスターをすべて壊すことができます。つまりゲームエンドですよ、先輩」
「じゃ、じゃあその今ドローしたカードは………」
「ああ、これは残念ながら光属性モンスターじゃありませんでした。僕、ドロー運はそんなにいいわけじゃないんですよ。だけど運に頼る必要なんてない。お忘れですか?僕が2ターン前に発動したタイムカプセルのことを。このターンのスタンバイフェイズ、あの時除外したカードはもう手札に加わってるんですよ?手札からそのカード、神聖なる球体を捨ててゼラートの効果発動、聖なる光芒」

 ゼラートが剣を掲げると後ろの神殿から光が走り、メビウスと牡蠣の戦士をいっぺんに焼き尽くす。だけど、こっちにだって効果があるんだ。

「オイスターマイスターがバトル以外でフィールドから墓地に送られたことで、オイスタートークンを特殊召喚するよ」

 オイスタートークン 守0→200 攻0→200

「ええ、知ってますよ。ですがそちらの墓地にはキラー・ラブカもいる、どのみち攻撃は通らないですから。これでターンエンドです」

 おかしい。先攻ドロー廃止すら忘れかけてたような人間が、どうして自分が使いもしないカードの効果まで完璧に把握してるんだろうか。逆ならわかる。だけど、普通そっちを忘れるものだろうか。
 このデュエル、やっぱり何か裏がありそうだ。だとしたら、狙いが何にせよさっさと決着をつけないと。

「僕のターン、ドロー。よし!魔法カード発動、クロス・ソウル!このカードは、自分モンスターの代わりに相手モンスター1体をリリースすることができるようになる。当然大天使ゼラートと、僕の場のオイスタートークンをリリース………七つの海の力を纏い、穢れた大地を突き抜けろ!アドバンス召喚、地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)っ!」

 2体のモンスターが消え、レミューリアの奥から悠然と巨大なシャチ型モンスターが泳いでやってくる。

 地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア) 守2400

「これが……闇のカード!」
「正解だよ、コングラチュレーショーン。さあチャクチャルさん、効果発動やっちゃって。1ターンに1度このモンスターの攻撃を放棄して、守備力の半分、ダメージを与える!ダーク・ダイブ・アタック!」
「ぐう……っ!?」

 エド  LP2200→1000

「あいにくと、もう手はないんだ。これでターンエンドさ」

 これで、エドのライフは1000。チャクチャルさんを維持できれば次のターンでほぼ確実に1200ダメージを与えられ、そうすれば僕の勝ちだ。そうしたら、一体何をたくらんでるのか話してもらおうかな。

 エド LP1000 手札:3
モンスター:なし
魔法・罠:1(伏せ)
場:天空の聖域

 清明 LP400 手札:0
モンスター:地縛神 Chacu Challhua(守)
魔法・罠:1(伏せ)
場:忘却の都 レミューリア

「なるほど。うすうす気づいてるみたいだからこの際言っておきますけど、今日のところの僕の目的はその闇のカードをこの目で見ること。目的は果たせたし、この勝敗はどうでもいいですよ。何もせずにターンエンドです」
「目的………まんまと乗せられた、ってことか。ったく、完全にやられたよ。…………ダーク・ダイブ・アタック」

 エド LP1000→0





「ふー………今日のところは勝ちを譲りますよ。それでは、またいつか会いましょう」
「あ、こら!ちょっと待………!」

 呼び止めようとしたときには、その白い姿はすっかり日が暮れていた夜の闇にまぎれてしまい。一瞬サッカー、僕のシャーク・サッカーの精霊にあとをつけてもらおうかとも思ったけど多分それも手遅れだろう。

「むう。残念」
『少なくとも、今年も退屈はしなさそうだな』
「またそんな……でも、ポジティブに考えればそういうことになるのか。頭いいねチャクチャルさん」
『私の過ごした歳月は5000年弱だからな。当然だ』

 少しは謙遜することもいいと思うの、この強いんだけどしょっちゅう手札で腐る上に下手すると自爆する神様は。
 もっとも、そんなところもひっくるめての邪神なんだろう。ひとたび暴れだせば相手を一瞬で倒す力があるけど、失敗するとそれはそれは邪魔になる。一筋縄ではいかないけど、どこか間の抜けた。本当に、困った神様だ。

『それはそうと、1ついいだろうか』
「何、チャクチャルさん?」
『貴方の住むべきところから、激しい空腹とそれに由来する負の感情がひしめき合っているのだが。早く帰らないと大変なことになるのでは?』
「……………あ」

 たっぷり3秒ほど思考停止して、すっかり夜になったあたりを見回して。

「だーっもう、夕飯作るの忘れてたー!?」

 レッド寮の皆に心の中で土下座しながら、大慌てで走って帰るのだった。すると、そこにいたのは。

「ん、お前は誰ザウルス?おーいアニキ、探してた人っぽいのがこっちに来たドン!」

 …………誰? 
 

 
後書き
時系列的にエド戦と剣山戦が同じ日なのは無理がある?まあ固いことは言わずに。
一応島に着いたのは同じ日だし、ちょっと変更すればそこまで無理はないはず。 
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