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知ったかぶり

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第四章


第四章

「あの人な」
「ああ」
「何かやったのか」
「金貰ってるらしいぞ」
「金って!?」
 この話になるとだ。何人かが気色ばんだ。
「金ってどういうことだ?」
「あいつ何かやったのか?」
「金って何なんだよ」
「何でもな」
 それでだった。このことが話されたのだった。
「美味い店を紹介してな」
「それで?」
「紹介して?」
「謝礼として政治家やニュースキャスターから金を貰ってたんだよ」
「何っ、あんなに高潔ぶっていてもか?」
「そんな総会屋みたいなことしてたのか」
「そんなことしていたのか」
「とんでもない奴だな」
 それでだった。山原を難しい顔で見るのだった。
 そのうえでだ。彼を見るのだった。
「何かいかがわしい奴だな」
「そんなことしていたのか」
「正体はそんな奴だったのか」
「品性が見えてきたな」
 こうした話が出て来てだった。しかもだ。
 その潰れた料亭の話がだ。出て来たのだった。
「あいつあの店かなり絶賛していたよな」
「ああ、してたよ」
「もう持ち上げるなんてものじゃなくてな」
「そんなことしてたよな」
 こうした話になってだった。そのうえでだ。
 山原の評判は落ちていった。美食家ぶっているが実は味がわからないのではないかとだ。そんな風に見られだしたのであった。
 そうしてだ。その結果だ。
 これまで親しく彼にアドバイスを受けてきた著名人や有力者達がだ。彼から離れていった。そしてそれに伴う人脈も権勢もだ。翳ってきたのだった。
 翳ってからだ。それからだった。
 弟子達もだった。彼等もだった。
「では私はこれで」
「私もです」
「それでは」
 こう山原に話してだった。彼の前から去ろうとするのだった。
 山原はその彼にだ。言うのだった。
「わしを見限ったというのか」
「それは」
「その、あの」
「ふん、顔を見てわかるわ」
 山原は厳しい顔で彼に告げた。
「それでな」
「・・・・・・・・・」
「好きにしろ」
 そしてこう告げたのだった。
「御前達のな」
「はい、では」
「そうさせてもらいます」
 一人減り二人減りだった。やがて弟子は一人もいなくなった。
 彼の厨房もだ。気付けば殆どいなくなっていた。家族のない彼は孤独になろうとしていた。そして遂にであった。
 最後に一人残った若い男がだ。こう彼に言うのだった。
「あの」
「あの?」
「はい、料理を見て頂きたいのですが」
 こう山原に言ってきたのである。
 
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