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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第46話 バカンス(後編)

 
前書き
お久し振りです、blueoceanです。

気が付けば一か月も空いてしまいました………すいません、何か気持ち的に気持ちが乗らず、中々進みませんでした。

取り敢えず今回でほのぼのは終わりでシリアスな感じで最後へ向かっていきます。
もうしばらくお付き合いをお願いします……… 

 
「零治君大丈夫かい!?」
「はい、何とか。………今も頭がグワングワンしてますけど何とか………」

神速中の転移。その影響で海の中で完全に気を失っていた俺。
気が付けば最初に居た崖の所で寝かされていた。目が覚めた時の3人の顔で何が起こったかを察する事が出来た。………3人は世界の終わりの様な顔で俺を見ていた。

(折角のデートが台無しだな………)

自分の安易な行動で3人には迷惑をかけ、更にわざわざスカさんまでも出向く羽目になってしまった。

「みんな、本当にごめん………」
「いいんです、レイが無事で帰って来てくれれば………」
「良かった、本当に良かった………」
「呼んでも反応しなかったから一時はどうなる事かと思ったんだからな!!」

星やライは優しく、夜美は少々怒りながらだが、やはりその目は赤くなっていた。

「悪かった………」
「一応簡易な検査だけど今の所、脳に異常無しだ。恐らくダイバージャケットで魔力を消費している中、零治君が使う神速の時に使った魔力に加え、転移したことで一度に使える魔力量の上限を超えてしまったんだと思うよ」
「まあ神速を使う時も魔力も使わないと持たないからな………」

もっと冷静になって考えれば分かる事だ。

「反省ばかりだな………」
「そうですね、レイはしっかり反省するべきです」
「僕もそう思うよ!レイはもっと僕達の意見を聞いて行動するべきなんだよ!!」
「それだと俺の自由は?」
「我等と逐一一緒なのは嫌なのか?」
「嫌な事は無い。………だけど俺がエロ本買ってくるときもいちいち許可が必要なのか?」
「エロ本は要らないでしょ?僕達がいるんだもん」

そんなライの軽々しい発言に星と夜美は顔が赤くなった。
こんな風に深く考えず言葉に出来るライは本当に凄いと思う。

「と、取り敢えず!!その話は置いておいて、スカさんもご迷惑をおかけしました………」

話題を変えるのにもってこいの人物がいてくれて助かった。

「依頼したのはこちらだし構わないさ。むしろ良いデータも取れたしレリックも回収出来た。本当に助かったよ」

そう笑顔で答えてくれるスカさん。これがアロハシャツに短パン姿でなければ最高だったんだけど………

「あっちでウーノさんが待っていますけど………」

白いワンピースに麦わら帽子………どこをどう見ても立派な家柄の若奥様にしか見えない。白のワンピースと聞くと少し子供っぽいイメージがあったがウーノさんが来ているとむしろ大人っぽく見える。

「ああ、この後2人でのんびりしようかと思ってね。そのダイバージャケットは君達にプレゼントするからもう一度潜ってきたらどうだい?」
「いいんですか!?嬉しいです」

気を失ったのはともかく、かなりの高性能だったダイバージャケット。
魔力は必要だが、好きなように海の中を移動でき、楽しめる。
こんな素晴らしい物は他に無いと思う。そう思わせてくれるほど素晴らしい物だった。

「スカさん、あんたやっぱり凄い科学者だよ………」

仲良くウーノさんと歩くスカさんを見ながら俺はそう呟いたのだった………












「やっぱいいなぁ………青い空、綺麗な海、そして外でのキンキンに冷えたビール。そして………水着の女性陣」
「そうっすよね………もっと際どい水着でも似合うと思うんスけど………」
「エローシュ、カメラは?」
「没収されました………」

「「くっ!!」」

そう言って互いに抱き合うヴァイスとエローシュ。

「なに馬鹿な会話してるのよ………」

そんな2人を冷たい目で見ながらティアナが2人の元へやって来た。

「………」
「な、何よ………」

そんなティアナをエローシュは瞬きもせずじっと見つめていた。

「エローシュは感動しているんだよ。ティアナも水着似合ってるしな」
「………本当ですか?」
「そしてその光景を忘れない様に目に焼き付けている」

そんなエローシュの言葉を無視し、「本当ですか………?」と再度問いかけるティアナ。

「あ、ああ本当だとも」

エローシュの気持ち悪さに突っ込むだろうと思っていたヴァイスは少々驚きながらもそう答えた。

「ふふ………」
「爆死すればいいんだ………」
「何物騒な事言ってんだよ………」

冷たい目で見ながらそう言ったエローシュに少々冷や汗をかいたヴァイス。ヴァイスの言葉を聞いてもエローシュの態度は変わらなかった。

「俺はエリオの所に行きますから後は好きなようにイチャイチャして下さい………ちっ」

そう言い残し最後に舌打ちをしてエローシュは行ってしまった。

「全くあいつは………」
「………ヴァイスさんは泳がないんですか?」
「俺は動くより水着の美女を眺めてビールを飲むのが好きなんだ」
「………変態」
「い、いや、冗談だからな!!」

凍りつくような冷たい目で見られたヴァイスは慌てて弁解した。

「だったらその手のビールは何ですか?」
「これは飲もうと思って………別に水着を見たいからじゃないぞ?………って、水着は見せる物なんだから変態って言われる必要無いような………」
「ち、違うわよ!!水着は水の中でも動きやすいようにって………」
「だったらビキニタイプじゃなくて競泳水着の方がいいだろ?」
「そ、それは………」

そう言って口ごもるティアナ。そんなティアナを勝ち誇った顔で見るヴァイス。

「まあ競泳水着も体のラインが強調されてそれはそれで俺得な気もするな………」
「やっぱり変態です………」
「男なんてそんなもんだよ」

そう言いながらビールを開けようとした。

「ま、待って!!」

しかしビールを開ける前にティアナがヴァイスの持っていたビールを奪い取った。

「ちょ!?俺のビール………」
「ビールの前に運動しませんか?」
「運動………?」
「じ、実は………」










『それじゃあビーチバレー始めるで〜!!』

マイク片手にはやての言葉と共に盛り上がる会場。
そこはビーチバレー競技用のコートだった。ちゃんと観客席もある。しかしロングアーチで来ていた男子メンバーの少数と見に来た新人達少数なのだが………

『今回の対決はトーナメント方式の一発勝負や!優勝したペアには私から賞金も出すから気張ってや!』

それでもはやての調子はいつも通りで、ひらひらと金一封が入っているであろう封筒を見せた。

『それじゃあ早速1回戦………グリフィス、アルトペア対ヴァイス、ティアナペアや!!』

説明を受け、コートで向かい合う2組。

「ヴァイスさん、出るんですか!?」
「本当はビール片手に見る方に回りたかったんだけど………まあティアナにどうしてもって言われたからな」
「ど、どうしてもなんて言ってません!!」

顔を赤くして慌てて否定するティアナ。

「あらあら、ティアナも勇気出したんだ〜」
「違うって!!私はただスバルに勝つためにヴァイスさんに協力を………」
「男なら一杯いるのに?」
「知り合いはヴァイスさんくらいしか………」

そう言ってもじもじするティアナ。そんなティアナの姿にアルトは楽しそうにニヤニヤしながら見ていた。

「グリフィス、ルキノはどうした?」
「観客席の方でさっき来たシャーリーと一緒に見てるよ………はぁ………」

そう言ってため息を吐くグリフィス。

「もしかして無理矢理か?」
「僕はどちらかと言うと体を動かすのは苦手なんです………なのにアルトの奴が………ルキノは直ぐに逃げるし、シャーリーは運動音痴だって………」

そう呟いて横目でアルトを見た。

「……まあ何があったか察しが付いたよ。まあ頑張れ」
「善戦したようにゲーム進めてくれません?じゃないと終わってからも………」
「気合入れて頑張るって選択肢は無いのな………」

『それじゃあゲーム始めるからさっさと各コートに分かれてな。それと今回使うボールはこれや!!』

そう言ってはやてが皆に見せたのはビーチボールだった。

「ん?ボール違くないか?」
「はやてさん、本当にそのボールで?」
『そや。普通のビーチバレーじゃ運動神経で大きな差が出来るからビーチボールを使う。名付けて、ビーチボールバレー!!』
「最初のビーチバレーって言葉はどこいったんっすか………」

そんなグリフィスの言葉は観客の歓声にかき消された。

『ボール自体は軽いから少しの風でも軌道が変わったりするから気をつけてな。ボールを割ったら相手に得点が入るからそれも注意な』
「なるほど、これなら卓越した運動神経を持つ相手が居ても良い勝負が出来るな」
「そうですね………」

そう言ってティアナとヴァイスは観客席に居る2人を見た。

「スバル………」
「姉とコンビか………身体能力が高いから勝ちは薄いと思ったけどビーチボールと風を利用すればいくらでもやり様はある」

そう言い合い互いに笑みを溢した。

「なんだかんだヴァイスさんも乗り気だな………」
「相手は私達なのに………グリフィス君、返り討ちにするよ!!」
「まあそれは………」








「無理だよね、やっぱり………」

ぐったりしながらそう呟くグリフィス。

「グリフィス君体力無さ過ぎ!!」
「僕はロングアーチだって………」

試合は一方的だった。
最初こそ善戦していたがグリフィスのスタミナが切れてからティアナとヴァイスが一斉攻撃。

「余裕ね」
「まあ初戦だしこれからだろ。頑張ろうぜティアナ」
「!?あ、当たり前よ!!ヴァイスさんも途中でバテたりしないでよね!!」
「それは………な。俺は一応ヘリパイロットなんだけど………」
「つべこべ言わない!!」

そう言ってズカズカとコートから出て行くティアナ。

「はぁ………取り敢えず気張らないと後が怖いな………」

そんな事を思いながらコートを出て行くのだった………









「雷撃一閃、クリティカルブレード!!」

パン!!

『はい、バルトさん風船割ったから相手に得点な』
「ああちくしょう!!」
「バルトさん、手加減手加減………」
「力加減て苦手なんだよ………」

そう言って恨めしそうに対戦相手を見るバルト。

「へっ、バカ力なんて目じゃねえぜ!なっ、加奈」
「そうね、最初はヴィータと出ることに決まった時はどうなるかと思ったけど意外に勝てそうね………」

二回戦目。なのは、バルトペア対ヴィータ、加奈ペア。
最初こそなのは、バルトペアの有利と見ていたが、バルトの力にボールが耐え切れず破裂してしまい、思うように点が取れない。しかもヴィータと加奈も堅実にボールを拾い返した事によって次第に点差は離れていった。

その結果………

『ヴィータ、加奈ペアの勝ち!』
「よっしゃ!!」
「本当に勝てちゃったわ………」

試合はヴィータ、加奈ペアの勝利になった。

「バルトダサ~い!!」
「うるせえ!!あれ位の力で割れるボールがいけねえんだよ!!」
「バルトさんもムキになってチョップで返すから割れるんですよ!!何で普通に返さないんですか!!」
「そっちの方が変な変化がかかって点が取れるだろうが」
「ボールが割れたら意味がないです!!」
「そうだよ~!!」

試合後ヴィヴィオとなのはに問い詰められたバルトは多少押され気味だったがすぐさま反撃を開始した。

「だ、だがなのはも碌にボールを返せてなかっただろうが!!」
「あ、あれは風にボールが流されて………」
「私に任せて!!ってでかい口叩いたと思ったら大きく万歳した時は………」
「ああ、なのはお姉ちゃん顔真っ赤で固まってたね………」
「や、やめてぇ………」

その時何秒か時が止まったのではないかと思うほど静寂が支配していた。
皆、我に返った時も真っ赤な顔のなのはに気を使い、何事もなかったかのようにゲームを再開したが、それでも皆、笑いを堪えていた。

「私だって気が付いてたよ、皆が何事もなかったかの様に接してくれたのは。笑いも一生懸命堪えてくれていた事も。だからこそ無かった事にしたかったのに!!」
「無かった事なんて出来やしねえよアホなのは」
「そんな事ないもん!!口封じにここにいる人を全員消せば………」
「どんだけ言われたくないんだよお前は!!」

涙目でそう訴えるなのはにつっこむバルト。

「ヴィヴィオも混ぜて~!」
「ややこしくなるから入ってくるな!!」
「え~つまんない〜!!」
「元はと言えばお前が出ろって言ったのが始まりだったよな………」
「ええ~?そうだっけ?」
「あのな………!!」
「バルトさん、何逃げてるんですか!!」
「逃げてねえ!!なのはは少し落ち着け!!はやててめえも少しは手伝え!!」

『口論を始めた3人はほおっておいて次の試合に行くで~』

そう言ってトーナメント戦を進行させるはやて。

「逃げやがった………」

そんなはやての姿を見て、バルトは諦めたのだった………









『第3戦はエローシュ、真白ペア対フェイト、シグナムペア!』
「勝てない!!」

はやての紹介が終わった瞬間、エローシュが叫んだ。

『何言っとるん、諦めたらそこでゲーム終了やで?』
「スペックで圧倒された上にこの戦闘狂の2人ですよ!?勝負と分かった途端大人気ないえげつない行為で圧倒しますよ!!」
「そ、そんな事しないよ!!」
「テスタロッサ落ち着け。これはエローシュの作戦だ。エローシュならむしろ俺にもっとボールを当ててくれって叫ぶだろう」
「俺はMじゃないですって!!なっ、雫ちゃん?」
「えっ?」
「あれ?何で”お前何言ってるの?”って顔してるの?」
「えっ、だって………」

真白に困った顔をされ、エローシュも今までの自分を振り返ってみる。
訓練での扱き、何らかの罰ゲームと様々な光景が流れていく。

「そ、そう。確かに色々と罰を受けてきたが決して一度たりとも喜んだ事はな………」
「フェイトさんに踏まれた時、満たされてる顔しなかった?」
「いつの話!?」
「えっとね………確か食堂の時で………」

『もう無駄話は後でや!!さっさと試合始めるで!!』

はやての怒鳴り声の後、試合が始まった………







『フェイト、シグナムペアの勝ち!!』

結局このゲームも一方的だった。
そもそも子供対大人の上、身体能力にも圧倒的な差があるフェイトとシグナムにエローシュと真白は全く歯が立たなかった。
そしてそれ以上に………

「………」
「真白睨むな。俺はとても満足だ………」
「………もしかして最初からそれが狙いだったの?」
「バカを言うな、俺がそんなに欲に忠実に見えるか?」
「うん」
「相変わらず即答………」
「じゃあエローシュ君、私の顔を見て正直に“僕は欲望を抑えて一生懸命戦いました”ってハッキリと言える?」

今日かいのシスターの様に手を組み、目を瞑り、天に祈りを送るように祈る真白の顔を見たエローシュ。

「うっ………」

その姿にエローシュは大いに動揺した。

「や、やめろ………俺をそんな目で見るな!!」
「エローシュ君、男の子なんだし仕方が無い部分もあると思うよ?だけどね嘘は良くないよね?」
「はい、すみません。思いっきり揺れる胸から目が離せませんでした!!」

「エローシュが素直に全てをさらけ出した!!」
「こんな対処方法があったとは………!!」

真白の言葉に懺悔するエローシュを見て驚きを隠せないフェイトとシグナム。

「でた、女神真白モード………」
「純粋無垢で真白だからこそ出来る技だね」

そんな真白とエローシュを観客席から見ていたライトニングの他3名。

「だけどあれが狙って出来れば良いんだけど………」
「それが出来たら………」
「私達もエローシュの事に苦労しないんだけどね………」

エリオの言葉にキャロとルーテシアが揃って深くため息を吐いた。

「夏穂ちゃんが居てくれたらもっと大人しいんだけどね………」
「まあ真白も頑張ってくれてるし、私達も協力すれば………」
「そう言ってもう夏だけどね」

そんなエリオをキャロとルーテシアは睨んだ。

「そもそもエリオ君は男の子でいつもエローシュ君と一緒にいるのに何で暴走を止められないの?」
「いい加減行動パターンだって読めるでしょ?しっかりしてよ!」
「しまった、地雷踏んだ………」

そう呟いて後悔するエリオだったが、時すでに遅し。

「エローシュ、今度仕返しするから……」

そんな思いを胸に、エリオはひたすら2人の説教に耐えるのだった……












『それじゃあ第4試合行くで~!!これで参加チームは最後や!先ずは今回本命のこのペア、スバル、ギンガペア!!』
「やっと試合だー!!」
「久し振りね姉妹で何かに挑むのは」

その凛と立つ姿に会場が湧いた。

『おそらく今大会最高のチームワークを持つ2人。さて対するは………今大会飛び入り参加!近くの海に海水浴に来ていたカップル、零治、ライペアー!!』
「えっ、お兄ちゃんお姉ちゃん!?」
「レイ兄何で?」









「ねえバルト、なのはお姉ちゃん零治だよ!!」
「そうだね………って何で居るんだろう?」
「彼女達とデートじゃねえか?」
「あっ、本当だ。おーい!星ちゃ~ん!夜美ちゃ~ん!!」

観客席に現れた星と夜美を見つけたなのはは大きく手を振って呼んだ。

「お久し振りです」
「元気そうで何よりだ」
「ようお2人さん。零治の奴とデート中だったのか?」
「はい。隣の海岸からダイビングを」
「ここは沖縄の海より綺麗だから最高だったぞ」
「ほう………ダイビングか………」

そんな他愛もない話だったが、なのはは鋭かった。

「………何か地球の別荘で会った時よりも仲良くなっていなせんか?」
「な、何を言っているんですかなのは!?」
「我等は別に普通の会話をしているだけでないか」

疑う眼差しで見つめるなのはに星は少々ドキリとしたが、夜美の冷静な返しに落ち着きを取り戻した。

「そうですか………?」
「それに我等にはレイがいる。他の男には興味がない」
「そうですよなのは」
「べ、別にそんな心配は………」

赤くなって小さくなるなのは。

「ふふっ、可愛いではないか」
「おい、あんまりからかうなよ。こいつまだ慣れてねえんだから」
「バルトさんが言うな!!」
「うおっ!?逆ギレか?」
「逆ギレじゃない!!」

そう言って口論が始まるなのはとバルト。

「全く………」
「仲が良いですね」
「うん。とっても仲良しだよ2人は!!」

星と夜美の呟きにヴィヴィオが嬉しそうに答えた。

「それは良かったです。では私達はキャロ達の所へ行くので」
「じゃれあってる2人によろしくな」
「うん!じゃあね!!」

笑顔でそう答えたヴィヴィオを見て星と夜美はキャロ達の所へ向かうのだった………












『しょ、勝者零治、ライペア~!!』

白熱した試合は両者一歩も引かず均衡していた。
そして最後に零治からのトスで上がったボールをライがクイックでスマッシュした事で勝負が決まった。

「まさか決勝用まで残していた僕の必殺技を出さなくちゃいけなくなるなんて………」
「流石姉妹か………俺達もかなり危なかった………」

相手に確認を取らなくても動きが分かる。そんな事が出来るのは俺達だけと思っていたが………

「強敵だった………」
「うん………」

俺達はコートから去る2人を見ながら話していたのだった………









「スバル!!」
「あっ、ティア………ごめん負けちゃった」

苦笑いしながらそう答えるスバル。

「でも惜しかったな」
「はい。………でもあそこでいきなりクイックで来るとは流石に予想出来ませんでした」
「凄かったわ。かなり速かったし………」
「あの大きな胸もたゆんと揺れウゴッ!?」

ティアナに肘で鳩尾を喰らい悶絶するヴァイス。

「スバル、あの2人は私達が倒すわ!」
「相手は強力だよ」
「その方が燃えるわ」
「ティア………うん、頑張ってね。私も応援してる!」
「ええ、必ず勝つわ。頑張りましょうヴァイスさん」
「あの2人に勝てる気がしないが………まあ簡単に負けるのが流石に悔しいからな」
「その為には先ず………」
「フェイト隊長、姐さんペアだな」

そう答えたヴァイスにティアナは少し寂しそうな顔をした。

「………こっちも気になるねギン姉」
「私としてはヴァイスさんとシグナムさんが互いにどう思っているかも気になるわ………」

2人を見て、勝手にこそこそと話す姉妹だった………












「うわっ!?」
「ヴィータ!!」

タイミングを外され打たれたスマッシュは綺麗な放物線を描いて地面へと突き刺さった。

『決まった~!!勝者、零治、ライペア~!!』

「「イエ~イ!!」」

ハイタッチをする俺とライ。

「くそ~っ!!」
「兄さんはともかくライの運動神経には驚くばかりね………」

加奈の言う通り俺の上げたトスをライは持ち前のジャンプ力や瞬発力を使ってタイミングをずらしてスマッシュする。もちろん壁もタイミングが狂うし、拾う方も違和感を拭えない。

そして俺自身驚いたのが縦の跳躍ではなく、横の跳躍。
後ろからダッシュして勢いを付けて飛んだライは鳥のように空を舞い、トスされたボールを勢いそのままに相手コートに叩きつけた。
その威力はバルトさんのスマッシュと同じ威力位。バルトさんの場合はそれで大半のボールを割っていたがライは問題ない。

「凄え………」

ライはバスケをやらせたら世界でも通用するのではないかと思った瞬間だった。

「レイ、決勝だね!!」
「ああそうだな。賞金が手に入ったら4人で何か食べに行くか」
「うん!行こう行こう!!」

テンションを上げ、「次も絶対に勝つぞ………!!」と小さく呟きながら闘志を燃やすライ。

「さて、俺達の決勝の相手はどうなるかな………」











「ヴァイスさん!」
「任せろ!!」

返事と共に綺麗なトスが上がる。

「くっ、しぶとい………」
「シグナム来るよ!!」
「はぁ!!」

ティアナがベストタイミングでスマッシュを繰り出す。

「任せて!!」

負けじとフェイトもボールを拾う。

「よし、ナイスボールだ!!よし、行けテスタロッサ!!」
「もらった!!」

コートの隅を狙いスマッシュを繰り出すフェイト。

「うおっ!?」
「ヴァイスさん、トス上げますよ!!」
「ああ!!」

元気良く答えたヴァイスはティアナの上げたトスを力強くスマッシュした。

「くっ……!!」

コートの横隅を狙ったスマッシュはズレる事無く隅に向かって行く。

「はっ!!」

シグナムは間に合わないと判断し片腕を伸ばして飛び込んだ。
しかし触りはしたものの、ボールはコート外へと飛んで行ってしまった。

「ああっ、惜しかったのに………」
「仕方が無い。次は拾うさ」
「姐さん、付いた砂払ってあげましょうか?」
「しても良いが少しでも手が滑れば体が2つになると思え」
「遠慮しときます………」

ニヤリと笑みをこぼしたシグナムにヴァイスは恐怖心を覚えながら直ぐに断った。

「ヴァイスさん………」
「睨むなよ、冗談だってティアナ」
「今は敵味方です。時と場合を考えてください!!」
「いや、戦闘してるわけじゃないんだし………」
「良い覚悟ではないか。ならば私達も真剣に応えなければな」
「えっ、姐さん……?」

ヴァイスが呆れながらティアナに言ったティーダだったが、シグナムの答えに愕然した。

「いや、これ一応勝負だし………」
「負けたくないんです、特にシグナム副隊長には………」
「ふっ、良いだろう。ならば全力で来いティアナ!!」
「はい!!」

闘志を燃やす2人に対し、互いのパートナー2人は付いていけずにいた。

「えっ?良いんですかねフェイトさん?」
「まあ良いんじゃないかな………でも足を引っ張ったら………」
「何言われるか分かったものじゃないですね……はあ、バカンスに来たはずなのにな………」

とボヤきながら再びポジションに着く。
そしてゲームが再開された………







「レイはどっちが勝つと思う?」
「そうだな………」

コートの脇でライと見ながらそんな話をしていた。
ゲームはかなり接戦で進んでいった。遊びの筈が甲子園を決める地区予選決勝の後がない試合の様な勝利への執着心がひしひしと感じる。

「攻撃ならシグナムさんとフェイト。守りならヴァイスさんとティアナって感じだな」
「そうだね………特に守りの2人は確実にボールを拾うよね」
「粘り強い。………そういうコンビこそ強敵そうだな」
「じゃあ勝ちはヴァイス、シグナムペア?」
「まあ俺はそう思うかな」

しかしここまで来るとどっちが勝つかは分からない。
だけど………

「俺達の勝ちは貰ったな」

そう確信が持てた………










「はぁはぁ………」
「ティアナ、マッチポイントだ………」
「わ、分かってるわ。ここを確実に取るわ………!!」

互いに既にバテバテの状態だった。激戦は熾烈を極め、マッチポイントとなりつつも相手に阻まれ今までの試合の中でダントツのゲーム時間となっていた。

「全く対したものだ………」
「シグナム、ここまで来たら負けたくない。ここはしっかり取ろう!!」
「そうだな」

対してフェイト、シグナムペアにはまた幾分の余裕があった。それでもティアナとヴァイスよりかはマシと言った具合で疲労は2人にもあった。
この2つのペアの大きな違いは自分の疲労をちゃんと把握していたか。

「ぐっ!?」

相手のサーブを何とか腕を伸ばし、相手のボールを拾ったティアナ。しかしその後が中々立ち上がれない。

「くそっ………」

悔しそうにボールを相手コートに打ち返すヴァイス。

「よし、チャンスだ!」
「うん、任せ………えっ!?」

しかし軽く返したボールは急に吹いた風に流される。

「シグナム、そっちに行った!」
「何!?くっ!!」

ボールは後ろ側に行くと思っていた所を向かい風で押し返されネット側に居たシグナムの方へと向かって行った。
咄嗟に反応してボールを上げるが、ちゃんとボールは浮かばなかった。
更に……

「風で流された!?」

ボールは流され、ティアナ、ヴァイスペアのコートへ流れてしまった。

「くそっ、速い!!」

ふわりと浮いた球は強風を今度は追い風となり、急加速した。

「ティアナ!!」

そう叫んだと同時に前に居たヴァイスを通り過ぎてティアナがジャンプしていた。

「はああ!!」

ティアナは追い風でスピードが付いたボールに向かって飛んでそのまま相手コートに打ち返した。

「なっ!?」
「シグナム、失速する!!」
「分かっている!!」

フェイトの言う通り、ボールは失速してただの力の無いボールになった。

「よし、ここから打ち返して………なっ!?」

そしてもう一度驚く出来事があった。
向かい風で失速したボールが再びティアナ達のコートへ流れて行ったのだ。

「不味い!!」

先程とは違い、弾道が低かった。

「ネットに当たる!!」
「させん!!」

慌ててネットに当たる前に返そうとするシグナム。腕を伸ばしボールを返そうとするが………

「ネットに!?」

先にネットに当たったボールはシグナムの腕から軌道がそれ、そのまま地面に落ちていった。

『ゲームセット!!ティアナ、ヴァイスペアの勝利!!いやぁ、ナイスゲームや!!』
「やった……!!」

仰向けに寝転んだティアナはそのまま力強く拳を握り締めた。

「最後のは驚いたぞティアナ。だけどナイスファイトだ」
「ヴァイスさんこそ………私の方が先にバテてしまって………」
「元は姐さんの下で働く武装隊員だからな。幾ら何でも新人にはまだ負けねえよ」

そんな互いを健闘しあう2人にシグナムが声をかけた。

「負けたよ………最後のティアナに関してはまんまと虚をつかれた」
「はい、私の勝ちです」
「ティアナ………?」

ヴァイスは何故かそのティアナの一言が妙に感じた。

(何だろう………ティアナのその言葉に強い意志を感じる)

「そうか………だからティアナは………なるほど、なるほど………」

そんなティアナの様子を見て何かを感じたシグナムはニヤリとヴァイスを見ながらそう呟いた。

「まあそうだな、今回はティアナの勝ちだな」
(何で今回はって所を強調したんすか姐さん……?)
「次も負けません」
(何でティアナはそんなに姐さんに喧嘩腰なんだ?)

2人が視線で火花を散らす中、何も分からず固まっているヴァイスだった………

『あっ、悪いんやけどもうコートの使用時間ギリギリやから次のゲーム直ぐやるで』

「「えっ………?」」
















「もう無理………ビール、ギンギンに冷えたビールをくれ………」
「動いて直ぐにビールなんですか………?」

互いに寝転びながら話すヴァイスとティアナ。
決勝は先程のゲームとは違い悲惨なゲームとなった。

「しかし何なんだよあのフェイト隊長似の爆乳の彼女………」
「セクハラです………でも確かに凄かった………特にスピードが。まるで鳥の様に跳ねてましたね………」

先ほどのゲームを思い出しながらそう呟く。
時間の関係で連戦となった2人。シグナム、フェイトとのゲームで体力を使い果たした2人は全く歯が立たなかった。
その姿はまるで弱い者いじめの様だった。

「えっと………何かすいません………」

申し訳なさそうに謝る零治。

「そう思うならもっと手加減して欲しかったぜ………」
「俺はともかく、ライの奴はいつでも全力で挑む奴だから………」

そう言いながら2人は横目でライを見る。

「いやった~!!賞金だ~!!星、夜美、キャロ、ルーやったよ!!」
「ライお姉ちゃん………」

ピョンピョン飛び跳ねて嬉しさを体で表現するライ。
揺れる胸に男共は釘づけになっていたが、星を含めた4人は申し訳なさで一緒に喜ぶ事なんて出来なかった。

「全く、空気を読めバカ者………」
「レイも途中から気まずそうにプレイしてましたからね………」

「ね~え~!何で無視するの~!!」

そんな星と夜美の会話も知らず、ライは相変わらず1人で盛り上がっていたのだった………


















「それじゃあ俺達はこのまま軍資金も得たし、飯でも食いに行くか」
「うん」
「そうですね」
「さて、どこにするか………」

「これからバーベキューなんやけど食べていかへんの?」

夕方。
ゲームの後も、俺達は機動六課のメンツと一緒の海で遊んでいた。
折角のデートだが、キャロと遊ぶのも久しぶりなのでそちらを優先した。

「一応デートだからな。これからは4人でしっぽりやらせてもらうわ」
「そうなんか………」

残念そうに俯いて呟くはやて。
久しぶりだし、デートは今度で今日は………

「じゃあ………」
「ごめんなさい、それじゃあ私達は行きますので!!」
「じゃあねはやて!!」
「また今度!!」

俺が口を開こうとしたら3人が遮って俺を無理矢理はやてから離してしまった。

「おい、3人とも………」
「今日は私達だけで一緒に過ごすんです!!」
「別に他の日でも………」
「いいの!!」
「だけど………」
「グダグダ言うな!!」
「すいません………」

………まあ元々その予定だったし、はやてには悪いけど今日は4人で過ごすか。

「じゃあ行くか」

俺の言葉に嬉しそうに頷いた3人を連れ、海を後にした………































「最終調整は完了かな」
「はい、お疲れ様でしたドクター」

そう言って男に紅茶を差し出す女性。
クレインは匂いを味わい、紅茶に口を付けた。

「美味い。………さて、これを見つけられたのは私達にとって幸運だった」
「そうですね、一番の不安要素だった高ランク魔導師との戦闘に関しても問題がクリア出来るかと」
「彼等に物量を挑んでも足止めが精一杯だろうしね。特に神崎大悟に関しては全力で相手されればいくら改良したマリアージュシステムでも足止めも出来ないだろう」
「さらにそれを可能に出来る魔導師がまだ複数居ます」
「ああ。八神はやて、高町なのは、フェイト・テスタロッサ。そしてバルトマン・ゲーハルト、バルト・ベルバイン………」
「しかし本当に可能なんでしょうか?」
「彼女の言葉からすれば可能だと言う。それに古代ベルカ時代の事はまだ私も分かっていない事が多い。それならば信じるに値すると思うよ」

そう嬉しそうに答えるクレイン。

「ドクターにとってはリスク等よりも興味があるかどうかが重要なのですね」
「そうだよ、私は貪欲だからね。だから一番の興味のためなら何でもするよ。………例え、その結果世界が滅んでもね………」

そう言ってディスプレイを操作するクレイン。そして一枚の画像を映した。

「エンジェルソング。その天使の歌声は戦争を止め、世界を滅ぼした。この世界はどうなるかな………その為には………」

そう呟き、もう一枚映し出す。

「彼にも協力してもらわないとね………」

その画像には白いコートを着て刀を振るう男が映し出されていた。

「どうだい彼は?」
『………さあね。実際会ってみない事には分からないわ』
「恐らく、この世界で君を一番に扱え、なおかつ一番強い、刀を使う魔導師だよ」
『そう………優男で私の好みじゃないけどまあ構わないわ。私は目覚めさせてもらったあなたに協力するだけよ。そしてあの人を今度こそ私の物にするの。私の愛しのベルガント………!!』
「………ドクター本当に彼女を使用してもよろしいのですか?」

そんな会話を続けるクレインにイクトが小声で耳打ちした。

「何故だい?イクトが言っていた様に彼女の力があれば、不安要素を一掃出来るだろう」
「ですが彼女は狂っています………」

『聞こえているわよ人形』
「………失礼しました」

頭を下げるイクト。

『………まあいいわ。それでいつ決行するの?』
「君の調整が今終わったばかりだからね、此方の準備が終わってからかな。取り敢えず夏明けと言った所か」
『まだまだ時間がかかるみたいね………つまらない』
「それまで眠っていればいい。起きた時にはパーティの始まりだ」
『楽しみ………!!じゃあお言葉に甘えて………』

それから声がしなくなった。

「………デバイスが眠る………ですか?」
「このデバイスは彼女自身なのだよ。恐らくエンジェルソングを逃れるために自分の人格を移植したんだろう。それはデータをインプットしたのとは違った方法で。………出来るのなら古代ベルカに行ってみたいよ………」
「ドクターなら何時か時間さえも越えられる様になるでしょう」
「ぜひそうなりたいね」

そう言って立ち上がったクレインは近くの机に置いてあった刀を手に取った。

「聖騎士クレア。その彼女が使っていた刀、ホムラ。………さて、次の準備を始めよう。それとゆりかごにラボの移動を始めてくれ」
「それじゃあここを………」
「ああ。ここを餌にして有栖零治を呼び出す。そして私達の障害になるであろうバルトマン・ゲーハルト、真白リク、そしてスカリエッティを始末しよう。その後は順に有望な魔導師を消していけば良い」
「残る問題は、ゆりかごのキーですね………」
「それも大丈夫だ。バルトマンのお蔭で特定している。しかし今挑むのは無謀と言うものだよ。だから順を追ってだ」
「分かりました」
「さて、この夏は私達は忙しくなるぞ………ククク、ハハハハ!!!」
 
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