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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS戦術解説
  ゲリラ戦①

——一年戦争下から戦後における各勢力のゲリラ活動と、正規軍によるゲリラ戦——

 弱者には弱者なりの戦いがある。人権が過度に発達した社会では、“弱者”(社会的マイノリティや「消費者」など)であること、または“弱者”を装うことが、最大の武器となりえる。

 “弱者”を振りかざせば大抵の人は口を閉ざし、少々無理な要求も受け入れられる。もし、“弱者”である彼らに楯突く者がいるなら、非人道的とのレッテルを張り、考えられる限りの罵声を浴びせて叩きつぶせばいい。

 このような戦法は、高圧的かつヒステリックな手法から「言論テロ」とも呼ばれる。これとは逆に人権が極端に制限される戦時下や圧制下などにおいて、“弱者”(民間人やレジスタンス)が用いる戦法が、ゲリラである。

 ゲリラとは、正規軍に属しない民衆が武装化したもので、フットワークの軽さや地の利を武器に、不意打ちや側面攻撃(補給部隊などの後方部隊への攻撃)を多用する遊撃戦を行うことで知られる。

 旧世紀末頃には、平時であっても反体制勢力によるゲリラ活動が増え、テロリズムとの区別が曖昧になっていたが、正規軍ではこうしたゲリラの手法を取り入れた遊撃戦を遂行する「ゲリラ部隊」が組織されることも多くなった。

 宇宙世紀、特に一年戦争中や戦後の混乱期においても、正規軍が組織したゲリラ戦部隊やゲリラ化した民間人や軍人が数多く出現している。

 前者の代表例が、ジオン公国軍宇宙攻撃軍所属のランバ・ラル大尉が率いた、ランバ・ラル隊である。正規軍のゲリラ戦部隊は、単体での戦闘能力も侮れないものがあるが、基本的には後方錯乱や補給船の遮断といった正規部隊の補助が主任務となっていた。

 しかし、ラル隊はゲリラ戦法を得意とする戦闘部隊としての側面が強かった。ラル隊は、生身による白兵戦で敵艦を撃沈するほどの戦闘技術を持っていただけでなく、どのような環境下においても部隊単体で任務を遂行するだけのサバイバビリティも併せ持った、精鋭部隊であった。

 宇宙攻撃軍司令ドズル・ザビ中将が、ラル隊にガルマ・ザビの仇討ち=WB隊の撃破を命じたのも、このような能力を見込んでのことだろう。

 特に公国軍は、ゲリラ戦部隊を戦闘部隊の一形態と考えていたようで、波状攻撃によって敵軍を疲弊させるような、真の意味で“ゲリラ”的な運用は行われていなかったようである。

 これは公国軍が、電撃的勝利を目指した短期決戦型の組織であると共に、一年戦争前半を優勢に進めた“強者”であったためで、むしろ公国軍はゲリラ化した一部の連邦軍部隊や民間人に悩まされていた。

 やはり、ゲリラ活動は“弱者”の戦術であったのだろう。そして、敗戦によって決定的“弱者”となった公国軍の残党は、“弱者”の特権とも言えるゲリラ活動によって連邦に抗戦することになってゆくのだった。





補足事項

——民間レベルのゲリラ組織や正規軍の不正規戦で使われた武装——

 一年戦争時の民間ゲリラや不正規軍戦部隊の武装は、A.D.20世紀後期以降のゲリラ活動で多用された小銃や対戦車ロケット・ランチャーが多かった。

 戦車以上の重装甲を誇るMSを相手に戦う宇宙世紀のゲリラ戦では、ロケット・ランチャーなどの対装甲兵器の重要性が特に高い—————と言うよりは、MSに対抗可能な数少ない人間用火器であり、これに頼らざるを得なかった。

 こうした火器もMSの装甲を貫通できるわけではないので、関節やバーニア・ノズルなどの弱点に命中させ、その戦力を奪うことが目的だった。

 
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