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蘇生してチート手に入れたのに執事になりました

作者:風林火山
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ショッピングとアウトドアにはサプライズがつきもの

「・・・・で?」

「・・・・・・」

「・・・で、だから何でお前がここにいるのかって聞いてるんだよッ!」

「・・・宏助さん!声を荒げないで下さい!周りの人が見てます!」

「・・・でもッ・・・・!」

「・・・・・」

「何とか言えよ!蘭ッ!」

宏助が声を荒げたことで、何事かと周囲の人々が視線をこちらに向ける。

それに気付いた明が宏助を止めようとするが、目の前にいる相手から目を離せない。

「・・・・静かにして、お兄ちゃん」

目の前にいる相手ーーーーつまり『伊島蘭』、俺の妹から・・・・目を離せない。









「さぁ、あらいざらい話してもらおうか。俺を監視しているであろうことは予想がついたが・・・・・」

真は聖気で無力化した目の前の男に強い語気で語りかける。

「別にただ監視していただけで、話すことなど・・・・・」

「では何故お前にコレがついているッ!」

「・・・・!」

壁に力なく寄りかかっていた男の身体が真の懐から出したものによってビクっと震える。

真が出したのは、小さい小型のピンバッジのようなもので、黒く、複雑な形をしている。

「これは複合部隊が、派遣されるときに支給されるピンバッジだ!そうだろう!

つまり、このハワイに・・・貴様ら死神の複合部隊が派遣されているッ!

その理由をいえっ!」

「・・・・・・・」

男は完全に黙り込んでしまう。真はひとつ小さくため息をつくと、

「・・・・手荒い真似は麗の前だし避けたかったんだがな・・・・」

「いいわよ別に、慣れてるから」

麗に一応渋っていた、とアピールすると、しれっとそう答えられる。

「聖弾ッ!」

「んぐッ!」

真は即座に男の額に二本指を突き立て、聖気を放つ。

「・・・・大丈夫なの・・・コレ・・?」

麗が聖弾を受けたことで地面で悶え苦しむ男を一瞥し問う。

「さぁ、お前の持っている情報をあらいざらい吐け」

麗の問いをあえて無視し、目の前の男に意識を傾ける。

すると男は突然悶えるのをやめて、立ち上がり、機械的な声と無感情な瞳で、情報を話始めた。

「・・・!?これどういうこと?」

今度こそ本当に不思議そうにする麗に今度は答えてあげる。

「奴の脳内に注入した聖気は、『考える』という機能を行う脳の部分を無力化する、つまり考えられなくする。

『考える』ことが出来ない奴の脳は、最早言われたことに従うしかない」

「・・・・そんなこと出来るの・・?」

疑い深い麗に真もはっきりとは言えない。

「・・・・・この技を習得する為に人体の脳の構造や働きは全て頭に叩き込んだし、

聖気の扱いも1mmレベルで微調整できるが・・・・・最悪記憶喪失とかにさせるからな、この技・・・」

「結構ギリギリじゃない!?この技!」

「そうだな、ギリギリだ。でも、どうやら今回『も』成功のようだ・・・・」

しかし、真と麗はその男の話す情報から会話をしながらも耳を離せなかった。

情報はある意味このタイミングで聞けたことが最高でありーーーーまた、内容は最悪の情報だった。









~約十時間前~

「本日、明日の二日間は、全員自由行動とします!」

麗が朝放った一言はSP全員をその宣言の一時間後にホテルに一人も残さない、という効果を持っていた。

既に宏助たちがハワイに訪れてから二日が経ち、集会までは本日を含めて四日間。

その内二日間を麗が自由行動にする、と言ったのだ。

当然残った二日間は全て集会の総準備に当てられるのだが、それにしたって嬉しいものである。

何せ年中無休のSPたちが、ハワイで二日間自由に過ごせるのだ。

宏助も久々の休みに興奮してさっさと出かけようと思ったのだが(真も同じく)

「貴方たちは明さんの警護でしょう。というか、海での競争の罰ゲームは?」

「「・・・・あ」」

「私と麗が課す罰ゲームは、宏助さんと真さんとハワイ観光することです!」

「「・・・拒否権なしですか・・・」」

「「・・・はい(二コリ)」」

そういう訳で宏助と真はハワイへ連れ出される結果となってしまった。

まずは有名なとある牧場に向かい、乗馬体験をさせてもらう。

「あの~、宏助さん?ちょっと私と乗ってもらえませんか?」

「え・あ、いや別にいいですけど・・・」

明が一人では馬に乗れないというなんともお嬢様らしい雰囲気を醸し出し、それを宏助が助けるまでは良かったのだが

「あッ!馬が・・!」

「え?ちょ!ひゃあ!(ギュッ)」

馬が暴れ始め、(そりゃ二人乗ったからね)明が前に乗っていた宏助の背中に思い切り抱きついて来る。

「・・・・なんか・・・いろいろ・・・・あた・・・」

「も、もう暴れないで下さい~!(ギュッギュッ)」

「あたるぅ~!(ビキビキッ!)」

なんか色々当たって大変なことになりました。

今回の皆の服装は、全員麗が持ってきたアロハシャツに、大きく「hawai」と書かれたTシャツ。

更に派手な柄でチェックのバミューダパンツ(男性陣は嫌がったので、柄なしになった)を着ている。

ここまで見ると完璧に何の飾り気もないハワイ観光客(同じ格好をしている人、すみません)だが、それで終わらないのが明と麗だ。

ただアロハシャツを着ているだけで遮られるものがなくなり、その猛威を振るっている明のアレ。

バミューダパンツから遠慮なく露出される肌色のアレ。

麗もそのモデルが如く体型を存分に露出し、これだけで宏助は一杯一杯だ。


そんな訳で一杯一杯の宏助に変わり意外と真は冷静で、

「え?お前苗字変えてたのか?」

「だって死んだと思ってたのよ。勝手に変えちゃった」

なんか今更結婚してもないのに、真の苗字に自分の苗字を変えたことを突っ込んでる。

「じゃあ結婚式しなくてもいいじゃないか」

「何言ってるのよ!苗字を変えるだけが結婚式じゃないの!絶対やらなきゃ駄目よ!」

「じゃあ、ハワイで挙げるか。教会ならあるし」

「そんなふっつ~の声で言う普通!?混乱して普通二回言っちゃったわよ!」

「あ~、そうするとやっぱり出費と、あとは場所だな。どうするか~、指輪も考えなきゃいけないしなぁ~」

「人の話を聞け~!」

「「「・・・・・・」ヒヒン!ブルブル!」おい、何で馬まで恐縮してんだ」

そんな夫婦の会話に宏助たち(馬も含める)は完全に硬直してしまっていた。

その後は、有名なショッピングモールで、ハワイお得意のプレート料理を食べる。

「あ~ん」の流れになったのは言うまでもなく、真すらも人目を気にして頬を紅くしていたが

「「・・・・食べないんですか?」」

「「・・・・・・」」

勿論、食べない訳ない。というか、そんな選択肢ない。

その後は、流れで当然ショッピングということになった。

真と麗は結婚式について色々考えたいというので、宏助と明は空気を読んで別行動にさせてもらった。

という訳で、宏助と明は、モールをブラブラし、真と麗は結婚式を挙げるために必要な段取りを神条財閥と相談するらしい。

・・・・・なんというか、馬上で結婚式を挙げるのを決めるとは、勢いとはおそろしいものである。

あんな夫婦漫才の最中に決められては、結婚式もたまったものではない。

そんなことを麗と真に対して(軽く引き気味)考えていると・・・・

「宏助さん!ここ入りましょう!」

明が宏助の服を引っ張って店の中に入る。そこはありふれたゲームセンターだ。

「あれ?明さんこんなところに行きたかったんですか?」

てっきりお洒落な洋服やかなんかだと思っていた。

「こういう普通の人とっては「当たり前」な場所も、私は全然行ったことがなくて・・・・」

「ああ、そうか~。なら入りましょうか」

確かに明にとってはこんな場所も物珍しいのだろう。

そんな訳で宏助と明はゲームセンターへと繰り出した。

身体を動かす系のゲームだと、

「えい!」プルん

「・・・・・」

「えい!」プルん

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「やぁ!」プルん

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

こんな風に揺れるアレに気を取られて全く集中できないので、頭脳系のゲームにしたのだが・・・

「クソ~!勝てないッ!」

「ふふふ。私も結構やるでしょう」

明晰な明に勝とうというのが間違いだった。

そんなこんなで二時間が経過し、何故かビリヤードをしようという時だった。

「あ、やっと見つけたよ」

知らない女性が声をかけてきた。いや、否、

「こんなところにいたんだ、【お兄ちゃん】」

久しぶり過ぎて、一瞬、知らない人かと思った【妹】が声をかけてきた。

「・・・・・・!!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!??????」

目を見開く明と、その十倍は驚いている宏助が【妹】を見る。

「本当に・・・・お前なのか・・・?」

宏助は目の前の妹をまだ認識できない。

「またまた~、まだ分からないの?」

目の前にいるのは、かろうじて宏助が三年前にいた実家に住んでいた妹の面影を残した大人の女性。

ほどよいサイズの胸を露出した、大きく胸元の開いたカットシャツ、細くスラーッと長い脚を包み隠すようなスウェット。

ポニーテールと、身体に似合わない童顔、クリクリッとした大きな目でやっと妹だと分かる。

「・・・・・宏助さん・・妹がいたんですか?」

「・・・はい・・。でも・・お前なんでココに?」

「あら~。お兄ちゃん明さんに私のこと話してなかったの?はじめまして、明さん。伊島蘭といいます」

「!お前なんで明さんの名前を!」

おもわず身を乗り出しかけた宏助に、

「・・・!待ってください宏助さん!この人、神条財閥専属のSPです!SPが皆つける、家紋を刻んだピンバッジをしている!」

明の以外な一言が釘を刺す。

「よく分かりましたね。さすがの観察眼。私は、神条総帥の専属SP。今日は、フリーですけどね」

「・・・!なんでお前がそんなことやってんだ!?」

さっきから驚かされるばかりである。

「・・・・・・それについては、議論する必要があるようですね」

「・・・・!」

突如、明さんの眼から鋭い光が蘭を刺す。宏助はその雰囲気に気圧され何もいえなくなる。

「アナタ・・・・・」

「何?これのこと?」

明が何かを言おうとした瞬間、

蘭はビリヤードの机を、

ヒュン!

「「・・・・・・なッ!!!!」」

バキッィッツ!

思い切り叩き割った。

「・・・・なんだこの力!!」

「・・・・宏助さんと同じ力・・・・」

宏助と明が戦慄するなか、当の本人は至って呑気だ。

「お兄ちゃんはこれより強いんでしょ?勝負しようか?」

まるで世間話のようなその口調に苛立ちが溢れる。

「テメェ、なんでこの力を持ってやがるッ!

なんでここにいるんだよ!お前が!」



















「で、真?」

「うん?」

麗に質問された理由はなんとなく分かっていたが敢えて聞き返す。

「ったく・・・・もう分かってるんでしょ?」

「・・・・・!」

こんなことまでお見通しとは、流石は麗だと関心を覚える。

「私と真が回ったのは確かに結婚のプランを立てる為の相談所数店。普通に見れば結婚間際のカップル。

でも、アナタはさっきから一度も気を抜いていない。こうやって歩いているときでさえ。

表面上は気を抜いているように見せて、実は神経をこのモール中に張り巡らせている

どうして?その理由を教えて?」

「ま、そこまでお見通しなら仕方ないな。言うよ」

そこで一息間をおいて、真はその言葉を吐き出す。

「このモール内に、【化け物】が二匹ほどいる」

「・・・ッ!」

「勿論、俺と宏助を除いて、だ。だがそいつらは別行動をしている。それぞれ別の組織だ。

片方は宏助の方へいった」

「・・・・!大丈夫なの!?」

「ま、アイツなら何とかするだろう。実力も二匹ともせいぜい有馬クラスだ」

「・・・・・」

一応、一時は取りみだした麗が落ち着く。

「問題は、もう片方の、俺たちに着いてきた化け物だ」

「・・・・!」

バッ、と真が後ろを振り向き、麗も驚き後ろを見る。

既にここは、人気がない、ショッピングモールのテラスの一角。それでもハワイのショッピングモール。

流石に人は来るはずなのだが・・・・

「【聖壁】・・・・・。聖気は魂を強制的に浄化するもんだ。

人間が本能的に嫌と感じ、そこには近づくはずが無い。

これは化け物を捕らえる為の罠だ」

真は真、麗、【化け物】を聖気の壁で囲い、人を来させないようにしていた。

そして、

「【聖鎖】!!!」

「んぐッ!」

既に、真に気付かれたと知って逃げようとしていた、【化け物】は聖壁に動きが阻まれ逃げられず、

真の聖気の鎖の餌食になる。

「・・・・お前は・・・」

捕まったのは、複合部隊で、普段は単独部隊にいるので、真も知っている。つまり・・・・

「・・・死神・・・」

「ビンゴ!」

真と麗の呟きは同時だった。

真は既に【死神】をやめた自分に追っ手がくることは承知の上だった。

しかし、

「お前一人だけということは監視か・・?何故だ?なんで俺を監視する?」

「・・・・・」

その死神は答えない。

しかし、真の目の色が変わったのはその瞬間だった。

「・・・・!」

真が見つけたのは死神の着ているスーツの襟についた複合部隊のピンバッジ。

これは複合部隊の派遣があるときのみ、つけられる。つまり・・・・

(複合部隊が派遣されているのか・・・・!!?)

最悪の事態だ 
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