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何処までも

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第三章

「それで全然終わらないってな」
「不思議よね」
「ああ、けれど果てはあるよな」
「絶対にね」
「それならな」
「このまま行くのね」
「ああ、行こうな」
 ひたすら西にだ、進もうというのだ。
「このままな」
「そうね、食べるものも水もあるし」
「進めるからな」
「冬になってもね」
「冬位じゃな」
 厳しい冬、それが来てもだというのだ。
「モンゴルの冬を考えたら」
「普通の冬ではね」
 モンゴルの冬は厳しい、それこそ家畜の額が割れてしまうまでに。しかも長い。
 その冬に毎年耐えているからだ、二人もこう言えるのだ。
「大丈夫よ」
「そうだな、じゃあ行くか」
「このままね」
 二人で微笑んで話す、そのうえで西にさらに行くことをあらためて決めた。二人は草原を西に西にと進む。
 草原は続き時折狼もいれば鹿もいた、二人と同じ遊牧民も時折いて彼等から空の話を聞くが誰もがこう言うのだった。
「空の終わりかい」
「はい、知りませんか?」
「何処までなのか」
「そんなのあるのかい?」
 誰もがこう言うのだった、二人に。
「空は何処までも続いているだろう」
「いえ、はじまりがあれば」
 ドルゴはこう返すのだった、いつも。
「絶対に終わりがありますね。それなら」
「空もかい」
「僕達はその終わりを見ようと思って西に進んでいますが」
「西って。ここよりも西にかい」
「はい、そうです」
 その通りだと言うドルゴだった。
「草原が終わるまで」
「草原もね」
「終わらないですか」
「何処までも続いているよ」
 この草原もだというのだ、今彼等がいる。
「街もあるけれどな」
「時々見ました」
 その街もだというのだ。
「けれどどの街にも寄らずにここまで来ました」
「そうだったのか」
「そうです、それで今も」
「行くのかい、西に」
「そうします」
 ドルゴは言い切る、ボンテも彼の横で確かな顔で頷く。
「絶対に」
「そうかい、じゃあ頑張るんだね」
 誰もがこう返した、その言葉を聞いて。
 二人はさらに進んだ、街を見ても基本目もくれずただ進んでいく。そして二人はある日のことだった。
 草原を進む一人の旅人にこう言われたのだった。
「もう少し行きますと」
「空が終わるのですか」
「そうなるのですか?」
「いえ、次第に人が多くなってきます」
 そうなってくるというのだ。
「東方、壁の南程ではないですが」
「人がですか」
「多くなってくるのですか」
「そうです、森も多くなってきます」
 草原とは違う緑も増えてくるというのだ。
「そうなってきます」
「森ですか」
「それも増えてくるんですか」
「それでも草原は続いています」
 旅人はこのことは確かだと話した。
「私もその果てはわかりませんが」
「そうですか、それでは」
「私達はまだ」
「西に行かれますか」
「何処まで続くかわからないですが」
「それでも」
 進むとだ、そう話してだった。 
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