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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第六九幕 「同じルーツ?」

前回のあらすじ:英才教育開始の予感(気のせい)

簪には気になっていることがあった。それは自分のIS、打鉄弐式に搭載されたシステムの事である。
それは、「HTLS」という簡素なアルファベットの羅列で出来た名前と「特定の脳波を拾って機体操作に反映させるインターフェイス」であるという2点を除いて全く訳の分からないシステムで、内部はほぼブラックボックスと言って差し支えない複雑さを誇っている。一度気になって調べてみたものの、結果は“取り敢えずISの操縦には貢献している”という曖昧な結論しか導き出せなかった。

流石に自分も良く分からないようなシステムを使うのはどうかと簪は倉持技研へ連絡を取ってこのシステムについて問い質した。すると、何とも恐ろしい回答が帰って来た。

『そのシステムは・・・名前は出せませんが、さるISの第一人者である技術者の方が勝手に取り付けた物でして、その・・・安全性は保障されていますが内部構造までは・・・』

それを聞いた時は流石に卒倒するかと思った。確かに専用機開発依頼をする際にこちらの要望を伝えた際、最終的な判断は技研の方に任せた。だが、どうしてそれで作った側が知らないシステムなど詰め込んだのか。普通ならそんな得体の知れないシステム即刻排除すべきである。
流石に抗議しようかと思った簪だったが、倉持技研第2研究所所長である篝火(かがりび)ヒカルノ直々に「問題ない」の一言を言われてしまっては流石に反論できない。彼女はIS開発者の篠ノ之博士を除けば間違いなく世界最高クラスの技術者なのだ。学生の自分が言い負かせる相手ではない。

まあ、それは置いておこう。このインターフェイスは確かに優秀極まりない。操縦面では普通のISでは手間取るレベルの微調整でもきっちり拾ってくれるし、マイクロミサイルのマルチロックオンやホーミングでは従来のシステムでは考えられないほどの処理速度と精度を叩きだす。それでいて反応が過敏すぎる訳でもなくISと体がとても馴染んでいるような錯覚を覚えるほどだ。

弐式のマイクロミサイルは予め多数の弾道変更マニューバが組み込まれており、本来ならばMRS(マルチロックオンシステム)をインストールすることで初めて実用レベルの精度に到る。それが無い場合はホロボードのキーとそれを対応させることにより複雑かつ正確な弾道変更が可能になり、二つを併用することも可能だ。
だが手動での入力は集中力を多大に削るし、常に操作ミスの危険がつきまとう。腕も塞がるので敵の攻撃に無防備になってしまう、かといってMRS頼りでは動きが単調になり迎撃されやすくなる。ここで登場するのがやはりHTLSだ。驚いたことにこのシステムを通せばすべてのマイクロミサイルを操縦者任意のタイミングで遠隔操作できるのだ。MRSの旨味を生かしたまま少ない負担で高度な操縦が可能になる。まるで夢のように都合のいいシステムである。

さて、ここで鋭い人間なら気付くかもしれない。複数兵器の遠隔操作技術・・・

「それって・・・BT兵器の運用理論と、同じ?」

そう、英国の第3世代兵器「ブルー・ティアーズ」も基本は脳波による遠隔操作を高度化した物であった筈。ならばBTの制御系にはこれと同じようなもの・・・下手をすればその上位互換が組み込まれているのでは?

・・・ISの第3世代兵器は基本的に試作段階であるがゆえに特許を取っていない技術が殆どだ。故に万が一情報が余所に洩れたり新兵器の技術が他国のそれとかち合うと最悪国際問題に発展する。ただでさえヨーロッパ圏は「イグニッション・プラン」による次期主力IS選定でバタついているのだ。このタイミングで日本がちょっかいを出すメリットが全く存在しない。

しかしそれでは・・・HTLSは何所の誰が何のためにどうやって作り、何を思ってこのISに搭載したシステムなのだろうか?これだけ革新的な技術、発表すれば日本だけでなく世界から脚光を浴びるだろう。それをしないというのは、「さるISの第一人者」というのは何者なのだろうか?

そこまで考え、簪はこれ以上は考えても仕方がないだろうと思考を打ち切った。これからISの自主訓練なのだし、これ以上探った挙句藪蛇な展開にならないとも限らない。頭を切り替えた簪は足早にアリーナの更衣室へと向かった。



= = =



「―――BT兵器の運用に脳波は関係あるか、ですか・・・どうして突然そんなことを?」
「・・・その、実は」

さして親しい訳ではないがユウを通して面識はあった彼女にそれを訪ねるかどうか散々迷った簪だったが、とうとう知的好奇心には勝てなかった。もしもBT兵器の制御機構に脳波が関係ないのだとしたらHTLSと英国の第3世代兵器は似ていて非なる技術という事になる。
関係なければ何も気にすることは無いんじゃないか?と考えた簪は結局そのことについて尋ねることにしたのだった。

「成程、話は分かりましたわ。まぁこの程度の情報なら漏らしても本国に文句は言われないでしょう」
「・・・ありがとう。それで?」
「その、結論から申し上げますと・・・私もBT兵器の中核を為す制御機構については専門的すぎて詳しく分かりませんの―――ただ、“特定の脳波を感知してBTの制御に応用している”のは確かですわ。ついでに付け加えると、この制御機構は・・・英国外部からもたらされたと」

「「・・・・・・」」

開発者不明。特定の脳波。一種のイメージインターフェイスであること。奇しくも3つの条件が一致した。



~その頃、とある秘密研究所~

「くしゅん!くしゅん!くしゅん!・・・くそ、このくしゃみが連発する体質どうにかしたいな・・・」
『チカ様~。やっぱり指数を見るに活性化してますよ?』
「・・・意外と早かったな。そんじゃこっちも新型の仕上げにかかるか」
『・・・チカ様。その悪趣味なIS誰に渡すんですか?』
「自分で推測しろ」

~side out~



BT兵器の制御機構とHTLSが同じ規格であるかどうかを確かめるには簡単な方法がある。互換性の有無だ。二式で譲渡したBTを使えるか、マイクロミサイルの制御権限をティアーズに渡して機能するか。それを調べてもしも互換性があるならば、恐らく2つを作ったのは同一人物、若しくは同一の組織ということになる。
とはいえ作った国が違うのだから例え企画が一緒だったとしても不具合が出るのが当たり前。・・・そう思っていた時期が、2人にもあったのだ。


美しい曲線を描きながら次々に発射されては激しくうねるミサイル群。変幻自在の方向転換と恐るべき精度を誇るそれを何とか避けようとする一夏だったが、ミサイルを斬ろうとする直前に不規則な方向転換でペースを崩され続け、とうとう――――

ちゅどどどどどどどぉん!!!
「ぎゃああああああああ!!」

煤で黒く染まる白式は蚊取り線香の餌食になった羽虫のようにふらふらと落下していった。

それと反対方向では空を駆ける打鉄とBT兵器が壮絶なドッグファイトを繰り広げていた。操縦者のユウは訓練などで幾度かお世話になっただけの打鉄を中々に使いこなしているが、それでもBTの追跡は留まることを知らず、ミサイルによる追撃を含めた6つの砲塔をひたすら避け続けるほかなかった。
やがて、とうとう耐えかねたユウが瞬時加速を使った直後、その進行コースに4つのBTがそっと添えられた瞬間、彼は自分の敗北が訪れたことを悟った。

びしゅしゅしゅーーん!!
「おわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

大地にひれ伏す2人の男を尻目に簪とセシリアは一層困った顔で話し合いを続けていた。

「どうしよう・・・全然問題なく、使用できた」
「いっそ清々しいほどに不具合がありませんでしたわね・・・」

互換性、ほぼ100%。二人はそれ以上互いのISのシステムを調べるとまた謎が増えそうな気がして、逃げるように追及を打ち切ることを決めた。




「ねえ、一夏・・・」
「・・・何だ」
「あれ、2人とも初めて使ったんだって。マイクロミサイルとBT」
「・・・自信無くすな」
「もっと強くなりたい・・・」

その日の空は、快晴の筈なのにやけにぼやけて見えたとか。
 
 

 
後書き
重要なんだかそうでもないんだかよく分からない話。

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あと感想ついでに偶に思い出したら評価してくれると嬉しいな。

得点のつけ方って個人的には・・・
1点 武士の情け
2点 がんばれ
3点 及第点
4点 なかなか
5点 良かった
って感じだと思ってます。 
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