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古の鉄の巨人を駆る他世界への介入者

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終了

「今回の神殺しの力の回収の任、お疲れ様でした」
「いえ、最高神様に其処までのお言葉を掛けて頂くまでの事ではありませんでした」

キョウスケは神界に帰還しエクナに報告をした、結果から言えばキョウスケは千夏を殺した。迷い迷った結果、キョウスケは準最高神として、引き金を引き千夏を、初恋の人であり、愛し愛し合った女性を殺した。それがどれだけ辛い事だったか。

「ですが貴方の行動は容認出来ない事もあります」
「…」
「何故、加賀見 千夏を蘇生したのですか?」

キョウスケは顔を背け、口を噤んだままだった。そうキョウスケが千夏を殺し、力を回収した後に千夏を蘇生したのだ。キョウスケは優しい、他の者は厳しい、恐怖などの印象をあげるがキョウスケは本当は、優しすぎるほど優しいのだ。幾ら割り切っているとはいえ、今回は割り切れなかった。自分が愛した女性を、完全に殺す事など自分には出来なかった。

「何故ですか?あの人間を生かしておく理由があったのですか?」
「…」
「何故黙るんですか?私は貴方の問題行為を追及している訳ではなく、理由の意味を問い質しているだけですか。答えてください、キョウスケ」
「……った」

キョウスケは振り絞るように声を出した。だがそれはとても小さい声だった、そして声に乗っているのは悲しみ、その一つ。エクナはここまでキョウスケの声に悲しみが乗っていることに驚いた。自分が知っている限り、これ程の悲しみは転生した世界で、命を奪い続け、遂に自分の心が限界に達した時に、自分は壊れてしまったのか…?っという自分に対しての問いだけだった。

「見たく…無かったんだ……彼女が死ぬ所を…神として与えられた仕事を完遂しなかったのは情けないと思う……。でも、それ以上に、彼女の、千夏の死ぬ所を見たく無かったんだ!!」

キョウスケは顔を上げながら叫んだ。目からは大粒の涙が溢れ、顔はぐじゃぐじゃになるほどまでに泣きじゃくっている。キョウスケが泣く等という事は全く無かった。数億年、否それ以上の年月緩む事がなかった涙腺が遂に決壊したのだ。

「俺はあいつが、千夏の事を愛してたんだ!結婚して、夫になって、父になってもあいつの事を思ってた!!でも俺は何時も心の奥にそれを押し込めてた!!もう死んだから、未練は断ちけれ…?それ言われるかもしれない、そう言われたら終わっちまう気がしたんだ……俺の初恋で……初めて、だったんだぁ…初めてだったんだよぉ…」

キョウスケは遂に泣き崩れてしまい、床に突っ伏して床をどんどんと殴る。殴る音は鈍くも高い。ぐちゃぐちゃになってしまったキョウスケの心中とは真逆のようにも聞こえる。エクナは自分がどれほどまでに、夫の心を感じてられなかったのかを心苦しいまでに感じてしまった。思えばキョウスケは転生してからずっと、今日まで重要な役職に立ちぱなっしだったでは無いか。

転生した世界では、自ら望んだとはいえ大財団の創立者として、社員達の前では立派に振舞いパイロットとしてアルトを駆って戦場を駆け抜けた。いざその人生を終えてみれば自分の我侭に答えてくれるように神になるための研修を受け、自分の傍にいる為に最短で研修を完了させて、いざ終わったと思えばとんでもない役目を与えられて休む暇も無いほどの重労働。そして、初恋の相手を殺す仕事が回ってきた…。

それがどれ程までに辛かったのか、自分には想像も付かない。でもキョウスケは今日まで誰にも自分の心の中で思ってきた本当の声を出さないで来た。上に立つ者として、示しが付く様にと、心配をかけまいと気丈に振舞って来たのだろう。

「今でも、思い出すと震えが止まらなくなるんだ!!千夏の身体に穴が開いて、血が流れて、一瞬で絶命して、俺を、恨めしい目で笑いながら見つめてる千夏が!!俺は…俺はぁ…」

もうキョウスケは普段の姿とは思えなかった。其処に居るのは戦神ではない、準最高神でもない。ただただ、泣き崩れている一人の男だ。今まで溜め込んだ分、それが一気に溢れだして来たのだ。エクナはそっと立ち上がって、キョウスケの傍に座って、優しく抱きしめた。キョウスケはびくりと身体を震わせて、エクナを怯えた目で見つめる。もう、其処に居るのはキョウスケではない、南武 恭介という少年だ。

「キョウスケ様……全ては私が悪いのです…、許してくださいというのはもう遅いでしょうし可笑しいでしょう。しかし、貴方がした行為は神としては良い行為とはいえません。ですが」

エクナはキョウスケの頭を撫でながら呟く。女神という名に相応しい、優しさに満ちた笑みを浮かべながら。

「貴方は人間として正しい事をしたと言えるでしょう。愛した人を、救いたかった人を救ったのですから。例え、誰がなんと言おうともです。そして…貴方という神は、もう…」

エクナはキョウスケの頭を撫でながら幾つかの選択種を示した。それが、エクナが出来る精一杯のキョウスケへの愛だった。キョウスケはその選択種の中で、一つを選んだ。


それは――――――

神として、今後も生き続けることだった。キョウスケは、涙を流しながらも、愛する人を一度殺してしまったという事を経ても尚、キョウスケはエクナの手を取った。そうしなければならないと思ったから、そうしなければ、自分は何もかも失うと思ったから…。



「世話を……掛けたな……エクナ」
「いいえ、妻として当たり前の事をしたまでです」
「俺が、他の選択をしたら…お前は失望していたか…?」
「いいえ、私はそれを選んだとしても、貴方だけを愛し続けます」
「そうか…少し眠い、胸を貸してくれ」
「はい、ゆっくりお眠りください」 
 

 
後書き
別の選択種

all mind END

GOD END 
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