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ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝

作者:あさつき
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キラーパンサーに転生
  9雪原を通って洞窟へ

 村の外に出て、ドワーフさんの洞窟を目指して雪原を歩いて。

「モモ、だいじょうぶですか?つめたく、ないですか?」
「ニャー」

 うん、大丈夫!
 もちろん足は冷たいけど、ドーラちゃんがいろいろ着せてくれたおかげで、体はあったかいし!
 雪の上ほどではなくても、いつも歩いてる地面だってそれなりに冷たいんだから、これくらいならまだ大丈夫!
 だからあたしのことは心配しなくてもいいからね、ドーラちゃん!

 ドーラちゃんに答えるあたしの前で、ベラさんが震えてます。

「ううー……寒いわね!急ぎましょう、風邪引いちゃうわ!」

 やっぱり、妖精さんでも寒いんだ。
 あたしも今は大丈夫だけど、あんまり時間をかけたらやっぱり寒くなってきちゃいそうだし。
 あたしも戦ってみせたり、ドーラちゃんのお願いのための練習をしたり、あんまり時間がかかることは、ここではできないかな?


 ドーラちゃんはなにも言わなかったけど、あたしが気付くようなことならドーラちゃんだってきっと気付いてるわけで。
 ブーメランを使って、あたしやベラさんが手を出すまでもなく、どんどん敵を倒して進んでいきます。

 うん、敵ならドワーフさんの洞窟でも出るからね!
 そこなら少しはあったかいだろうし、ドーラちゃんが倒してくれてる間にあたしのレベルもまた少しは上がるだろうし!
 あたしの活躍は、それからでも十分だね!


 ドーラちゃんの活躍で、あっという間に洞窟について。
 あたしの体についた雪もドーラちゃんが払ってくれて、冷えた足にはホイミをかけてくれます。

 ケガしてたわけじゃないんだけど。
 なんだろう、血行がよくなったっていうの?
 感覚が鈍くなってたのが、楽になったような気がする!
 ありがとう、ドーラちゃん!

 ベラさんはドーラちゃんが強いのにびっくりしたみたいで、そんなことをドーラちゃんとお話ししてます。

 あたしはゲームを知ってるから、ドーラちゃんが戦うのを見たのは初めてでも、たぶん強いんだろうってわかってたけど。
 それでもこんなに可愛いドーラちゃんがあんなに強いだなんて、実際に見たらやっぱりびっくりしたからね!
 なにも知らないベラさんが見たら驚くのは、当たり前だよね!

「わたしが、ぜんぶ、たおせればいいんですけど。フルートをとったひとが、すごくつよかったら、わたしひとりじゃダメかもしれませんから。このどうくつなら、そとよりは、さむくないし。ベラさんと、モモにも、ためしに、たたかってもらいますけど。いいですか?」
「もちろんよ!そのために、ついてきたんだから!剣は使えないし、杖で殴っても、ドーラほど強くはないけど。魔法が使えるし、攻撃を避けるのは得意だから!役に立って見せるわ!」

 ドーラちゃんに聞かれて、ベラさんが杖を握りしめて気合いを入れて、答えてます。

 あ、ずるい!
 ドーラちゃんの役に立とうって決めたのは、あたしが先なのに!
 お話しできるからって先に答えちゃうなんて、ベラさん、ずるい!

「ニャ、ニャー!」

 ドーラちゃん、あたしも、あたしも!
 あたしだって、戦えるんだから!
 魔法は使えないけど、同じくらいの強さの兄弟たちより、ずっと上手く戦えたんだから!
 ドーラちゃんとパパさんのおかげでレベルも上がってるし、あたしだって絶対に役に立ってみせるからね!

 必死に訴えるあたしに、ドーラちゃんが優しく笑って答えてくれます。

「モモも、だいじょうぶなんですね?いままでは、おとうさんが、たおしてくれたし。ここまでは、わたしがたおしちゃったから、モモがたたかうのは、はじめてみますけど。むりは、しないでくださいね?」
「ニャー!」

 うん、大丈夫!
 無理して余計なケガなんかしたら、ドーラちゃんに迷惑かけるだけだもんね!
 ちゃんと頭を使って、ちゃんと役に立ってみせるからね!


 パパさんを見て学んだ経験を生かして相手の急所をきちんと狙って、まだ弱いあたしとしてはずいぶん上手くダメージを与えながら、戦って。
 ベラさんは妖精さんらしく身軽に動き回って、攻撃力はやっぱり低いけど、上手なタイミングで魔法を使って、敵を倒して。

 その辺の魔物なら一人でも十分に倒せるドーラちゃんの役に立つって言えるかどうかは微妙なところだけど、それでもそれなりに戦えるところをちゃんと見てもらって、ドーラちゃんに合格点はもらえたみたいです。
 しばらく様子を見て、あたしたちの実力が十分にわかったあとも、それなりに戦わせてもらえるようになりました!

 もうちょっと慣れたら、いよいよ練習をしなくちゃね!
 ドーラちゃんのために、あたしがパパさんの邪魔をする練習を!


 と言ってもドワーフさんのいる場所まではそんなに遠くないので、練習なんかの前にドワーフさんのところに到着します。

「うわっ!ぼ、ぼくじゃないよ!アイツだよ!ぼくは、わるくないよ!いじめないで!」

 ドワーフさんと一緒にいたスライムくんが、なんだか怯えてます。

 ドーラちゃんは優しいし、あたしだって乱暴なんかしないのに。
 妖精の村のスライムくんはのんびりしてあたしのことだって全然怖がらなかったのに、同じスライムでもずいぶん違うなあ。

 ところでその辺のスライムはしゃべれないのに、なんでこのスライムくんたちはしゃべれるんだろう。
 あたしも、頑張ればしゃべれるようにならないかなあ。
 無理かな、キラーパンサーじゃ。

 あたしがそんなことを考えてる間に、ドーラちゃんが優しくスライムくんに話しかけてます。

 うん、やっぱりドーラちゃんは優しいね!
 なにもしてないのにいきなり怯えるってちょっと失礼なような気もするけど、それに怒るなんてしないんだね!

 でもドーラちゃんはとっても優しく話しかけたのに、なんだかスライムくんが。

「……ハッ!す、すみませんでした!フルートを取ったのは、ザイルです!」

 命令でもされて従うみたいに、急にピシッとして説明を始めてくれました。

 ……よくわからないけど。

 あたしにもちょっと、覚えがある。
 ビアンカちゃんの手をすり抜けてドーラちゃんに擦り寄っちゃったときに、空気読めって言われた気がしたの。

 ドーラちゃんにそういうつもりがあるのかわからないけど、目を合わせて見つめられると……なんだか、そんな気がしちゃうときがあるんだよね……。
 ドーラちゃんの意思が伝わってきて、それに従わないといけない、みたいな。

 ……いつもじゃ、ないんだけど。
 いつもは目だってとっても優しいし、見つめられると安心して、落ち着くんだけど。
 従わないといけない気がするときだって、あたしもそうしたいみたいな気がするから、全然嫌ではないんだけど。
 これも、モンスター使いの素質なのかな?
 ゲームのイメージとは、ちょっと違うけど。
 このスライムくんにはいま会ったばかりで、あたしと違って最初からドーラちゃんが好きだったなんてこともなさそうなのに、そんないきなり、従わせるみたいな……。

 ……あたしはドーラちゃんに怒られたことはないし、このスライムくんだってそうだけど。
 もしも、もしもだけど。
 相手が悪い子で、ドーラちゃんが怒ってるときに、こんな風になったらどうなるんだろう……。

 ……すごく、怒ってる気持ちが伝わってきたり、するのかな?
 自分がドーラちゃんを怒らせちゃったのがわかって、でも従わないといけない、従いたいみたいな気持ちになったりするのかな?

 ……それって、結構怖いかも……。
 怒ってもきっとドーラちゃんが怒鳴り付けることなんてないだろうけど、それでも怒ってる気持ちだけは間違いなく伝わってきちゃうなんて……。
 いつも優しい、おとなしい人ほど、怒ると怖いっていうし……。

 ……あたしはきっと大丈夫だけど、でも絶対にそんなことにならないように、気を付けよう。


 ドーラちゃんが大好きで一生一緒にいようっていう気持ちは変わらないけど、また新たなドーラちゃんの一面を知ってしまったような気がして、また新たな決意を固めてみる、あたしでした。 
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