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IS 〈インフィニット・ストラトス〉×トリコ 食を探求する夏の毒!

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最後のけじめ 一夏VS千冬 決戦の果てに 後編

「一夏、来たぞ」
「よくきたな織斑 千冬、俺はお前とのけじめをつける」

ファルザーとグレイヴァは一夏の後ろで低く唸り千冬を威嚇する。力では自分の足元にも及ばないものだと理解はしているが一夏の敵であるのであれば威嚇しない訳にはいかない。一夏は手を上げた、二匹はそれを見て唸り声を静めた。

「こいつは俺の獲物だ、お前達は警戒をしろ。何者であろうと島に近づかせるな、入れさせるな」
「キルッ!」「バルッ!」

二匹は素直に従って地を蹴って島の警戒へと当たり始めた。二匹が移動する際に起きた暴風が一夏と千冬を揺らす。が二人は凛とした体制を崩す事無くにらみ合っていた。

「一夏、私の元に返って来い。また姉弟水入らずで二人っきりで暮らそう。私ならお前を幸せに出来る」

千冬は胸の前で握り拳を作って強気に言い放った。何処から自身が溢れ出しているのか非常に疑問だが。一夏はそれを鼻で笑った。

「残念ながらそのご希望には答えられないね。俺は既に優奈という妻がいる、てめぇの女を残して他の女と暮らすなんて真似、俺には出来ないね。なんせ俺の愛は優奈だけの物だからな」

一夏は煙草を銜えながらそう答え火をつけた。

「一度は俺を捨てた女と暮らすなんて虫唾が走る」
「私はお前を捨ててなど!「ああ解ってる」!?」

一夏は千冬の言葉を遮っていった。解っている、一夏だって理解しているのだ、千冬が自分を捨てたのではないと。

「解ってる。あの時、俺からしたら7年ぐらい前か。あんたの対戦相手の国が戦乙女を棄権させようとして俺を誘拐したが、日本政府はそれを隠してた。日本人一人と世界最強国の座、どちらを取るかは明白だ。俺とアンタを引き離したのは政府だって事は解ってる。認めるよ。俺があんたを恨むのは筋違いだ」
「なら、私達はまだやり直せる筈だ!政府の正式に抗議して、始末をつければいいんだ!」
「けどな…割り切れなかったんだよ…」

一夏は辛そうに声を絞り出した。握り拳を震わせながら口をあけた。

「あの時彼の中に何があったと思う、深くて底も見えなくて真っ黒な虚無感と絶望感だった。今まで織斑 一夏、彼は傷ついていた、優秀で偉大すぎる姉に比べられる日常に」

一夏は千冬から視線を逸らして悲しそうに自虐するような言葉を選んでいた。そして嘗ての自分の事を第三者のように彼と呼んでいた。そこにどれ程の感情が込められていた事だろうか。

「出来て当然といわれ続ける日々、何か出来なければ出来損ないと呼ばれ、好奇、嫉み様々な目で見られてきた。彼は理不尽な怒りで体を傷つけられてきた。磨耗していく心、何時壊れてしまっても解らない状態だった精神(こころ)を繋ぎ止めていた物が解るか?一夏(かれ)は家族だけは自分の味方だと信じていた。事実、彼の姉が彼の精神を繋ぎとめる鎖の様な役割をしていた」

優秀な家族がいれば、その子供や弟や妹に期待をかけるのは当たり前の事だ。だがまだ大人にもなっていない一夏(かれ)には負担になりすぎていた。まだ純粋な心に期待という重圧は、徐々に心を犯して毒していった。心は腐っていき、腐敗していく。段々脆く壊れやすくなっていく。何時崩壊しても可笑しくなかった織斑 一夏の心、それを繋ぎ止めていたのが唯一の家族である姉である千冬であった。姉がいるから、彼女がいるから生きて来れた。姉がいるから耐えて来れた。どんな言葉にも、力にも耐え来れた。でも

「私が…」
「そうだ、一夏(かれ)の心は辛うじて崩壊を間逃れていたがあくまでそのば凌ぎの延命処置に過ぎなかったのだ。何時までもお前だけで維持出来るはずもなかった。一人になる度に心はほんの少しずつ欠けていった。舞い落ちる桜のようにな、その決定打になったのが政府のあの決定だった」

3年に一度行われるISの世界大会、モント・グロッソの第2回大会、一夏(かれ)は誘拐された。重武装の大人に囲まれ、声を上げれば拳銃を突きつけられ、死の恐怖を煽ってきた。それでも心が壊れずにいたのは姉が絶対に助けに来てくれるという願いだった。自分にとっての救いの正義の味方である家族が助けに来てくれると信じていた。だが現実は非情だった。

「だが現実はお前は助けに行かなかった。正確には行けなかっただがな、だが一夏(かれ)に訪れたのはどんな感情だっただろうな。心に刻んだ心を繋ぎとめておく鎖、それが崩れ去ったのだ。そして次の瞬間に湧き上がったのは憎悪と怒りだった」

千冬は全身が痙攣するような感覚を晒されながら話を聞いていた。だが聞くほどに辛かった。胸が締め付けられ、なきたくなってくる。だが泣いては全てが崩れ去ってしまう気がしてならない。

一夏は自虐に満ちた目で千冬から目を逸らした。今にも何かを爆発させそうな雰囲気を持ちながら

「そうしなければ心を保つ事が出来なかったんだろうな一夏(かれ)は。無造作に引き裂かれた心を修復するにはそれらの黒い感情で亀裂を埋めるしかなかった。どれ程だったろうな…彼の、いやこんな回りくどい言い方は辞めよう。正直、俺はあそこまでの憎しみを抱いた事は、あの時が一番深かっただろうな、ハァッハッハッハッハッハッハ!!!!」

笑っている、一夏が笑った。しゃっくりにも似ている引き攣っているような悲しげで狂った声を上げて笑っている。一夏の目には涙が溜まっていた。

「何がお前は私の宝だ!私だけが家族だ!!結局俺は国に見捨てられてたのさ!母国に、日本国家代表が属する国にな!!憎くて憎くてお前をどれだけ殺したくなった事か理解出来るか!?例えこの怒りと憎しみが正しく無いものだと解っても沈める事が出来ない無限に心から湧き上がってくる怒り!!どんな麻薬食材を使っても、薬物を使って心を殺して殺して殺し尽くしても怒りと憎しみがまた心を形成する!この怒りが理解出来るか!?」

何度も何度も心を殺そうとした。もう命は粗末にしない、自分を救ってくれた食の感動とそれを教えてくれた人の思いがあっても心からその憎悪が消える事はなかった。だから一夏は心を消して楽になりたかった。だが何度心を殺しても憎悪がまた新しく心を芽吹かせる。一夏は叫んだ、永年、溜まりに溜め続けていた毒を吐き出すかの如く。

「もうそれが何度繰り返されているのかも覚えていない、記憶に刻み込まれた憎悪は消えずに俺を呪縛し続けた、でも優奈と龍兄はそんな俺を救ってくれた…俺を見てくれていた。俺自身を、俺個人を見てくれていた。織斑 千冬っという存在の弟ではなく、一夏っという一人として見てくれたんだ…俺がずっと欲しかったものをあの二人はくれたんだ」

何よりも欲しかったのは自分個人を見て欲しかった事、それは一夏の心からの願い、それはグルメ時代にはあっさりと叶った。グルメ時代ではISは存在しない。織斑 千冬の弟として見られる事は無かった。そして優奈、龍人、ココ、トリコ、サニー、ゼブラ様々な人達が一夏の兄代わり、親代わりをしてくれた。心から嬉しかった。常に傍に家族がいてくれる、何時も愛情を持って自分を包み込んでくれる。

「そして俺は、優奈と結婚して解った。俺は逃げているだけだと、織斑 千冬の弟の一夏としての宿命から背を向けて逃げていた。憎悪を心の奥に封じ込め、蓋を閉じた。だが俺はもう逃げる訳には行けないんだ」

一夏は右手の上に左手を置き、素早くスライドさせるように腕を大きく開いた。右手に付けられていた超獣龍が輝き始める。千冬はそれに応じるように自らのISを起動させる。自身が現役時代に使用していたIS『暮桜』。

「俺はけじめを付ける。俺の中にある憎悪にも、お前という存在にも、この世界にも」

千冬が目にしたのは騎士だった。灼熱の甲冑を頭にかぶり、命の生まれた場である壮大な海の青とをした鎧を纏っていた。左手には自身の半分の大きさはある巨大な盾、右手には炎と水、それら二つによって形成された剣が握られてた。

「………ふぅぅぅぅ………」

一夏は深く息を吸ってから息を吐けるだけ吐いた。体から力を完全に抜いてリラックスしている。

「もう憎悪になんて囚われない。怒りになんて身を任せない、いくぜっ、これが俺が、7年間の集大成だ!」
「こい一夏!!私は、姉として嫌!一人の女としてお前の全てを受け止めて見せる!!」

千冬も雪片を抜刀し、エネルギーを回していた、嫌そのエネルギーが過剰すぎる。ISが装備を出す為のエネルギー、雪片を維持するだけのエネルギーを除いて全て雪片へと集中させている!

「炎は大地を持ち上げ陸を生み出した、海は母なる力で命を創った。炎と海、二つの力は我が魂を豊かにする、目覚めの時だ!」

一夏は剣を振りぬいた。それと同時に盾が四散し、剣の柄と融合した。大地の炎、マグマのような真紅、大いなる海、押し寄せる波のような蒼。美しい色合いをした龍のような柄。その剣を一夏はしかと構えた。

「はぁぁぁあああ!!!零落・白夜!!!」

千冬は大きく腕をふるって真一文字に剣を振った。雪片からは自ら全てのエネルギーを捧げた最強の一撃が放たれた。空気は渦巻き、風を巻き起こすほどの一撃が。

「大地と海、炎と水、いまこそ!ブレイズ・レイ・シュロォォォオオオオオム!!!!!届けぇぇええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」

その瞬間、太陽が生まれた。島を中心とした太陽が命を授かった。その光はあっという間に地球全土を一周し命を誕生を喜ぶように光った。だが、その命は短かった。直ぐに光は収まっていき、太陽は短かった命に終止符がうたれた。

「…一夏…」

千冬が目を開けると、そこには一夏は既にいなかった。千冬は瞳を閉じて剣を落とした。

「ああ…終わりなんだな…今更遅いだろうがすまなかった一夏…私は、今からでも出来る限りの事をするよ…」



全ての命は生まれた時から死に向かって歩き続けている。肝心なのは死にたどり着くまでにどう過ごすかだ。

千冬との決戦後、一夏、龍人、ココ、優奈、アリトは必要なアフターケアをすませてから、仲間達とともにグルメ時代へと帰還していった。彼らがいなくなってから、IGOは束と明久が引き継ぐ事になった。今までと違うのは食材だけではなく、ISの管理もするっという点が加わった事。二人は世界をリードし、導く役目を選んだ。

千冬は自らの罪を告白し、贖罪の為にIGOの職員として生きている。飢えで苦しむ人達の腹を少しでも満たしてやり、麻薬贖罪の取り締まり、監視を行っている部門の最高責任者になりながら、罪を償なっている。

そして…

「貴方~急がないと遅刻するよ~?」
「誰のせいだと思ってんだ誰の!!」
「お父さん~!早くいこうよ~!」
「親父!早くしろよ!」
「はやくいこ!」
「あ~はいはい!!」

「ったく、それじゃ行くか!優奈、鷹一、士郎、千冬!」

IS 〈インフィニット・ストラトス〉×トリコ 食を探求する夏の毒! 完
Thank you for reading with me. 
 

 
後書き
IS 〈インフィニット・ストラトス〉×トリコ 食を探求する夏の毒!ついに終了!

長い間ご愛読してくださった方、有難うございました!

正直回収しきれてない複線とかあるきがしますが…まあいいか!こまけぇことはいいんだよ!!
気が向けば全ての複線回収した場合のリメイク版をうpしようとおもいます! 
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