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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第76話 少年達は離れてしまうようです

Side ―――

―――ザザザザザザザザアザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!

「石の槍………!まさか本物とは思いませんでしたね!」
ギュオン ギュオン ギュオン
「ハッ、こないな見え見えの魔法今更見飽きとるっちゅーねん!!」

「そう、見飽きてるんだよ。それに………!!」

「「あの人達(ら)の方が何十倍も酷かったよ(っちゅーねん)!!」」
ドッガァァァン!!

ネギ達の頭上へ迫った石化の槍は炸裂し雨の様に降り注ぐ。しかしそれはアルビレオの重力場とネギ・小太郎の

ラッシュでいとも簡単に迎撃される。それを見たフェイト、そしてフードを被ったままの二人が僅かに反応する。

幾ら中級魔法とは言えども、真の意味で最強種たる自分、そして自分と同等の存在の魔法が簡単に破られた。

命令に忠実と言えど反応せざるを得ない。―――いや、一人は違った。


「ハ、ハハ、ハハハハハハハハハハハ!!何ともはや素晴らしい!強化された『|運命を冠する者《ディアーション・フェイツ

》』の魔法を

人間の子供二人と古本が受け切るとは!なれば私も本気でお答えしなければいけませんなぁ!!」

「あの時の愁磨もどきまで………!これは厳しいですね。」


今度こそ姿を現したヴァナミス、そしてデュナミス。

それを見たアルビレオは珍しく汗をかき、小太郎は笑いながら纏う為の狗神を次々呼び出している。

そしてネギは・・・下を向いて、魔力を渦巻かせている。


「…………また、君かフェイト。君たちはそこまで僕の邪魔をしたいのか?」

「邪魔?……勘違いしないで欲しい、ネギ・スプリングフィールド。僕らはただ、僕らの王達に尽くすだけだ。

ここで会ってしまったのは……運命の悪戯、偶然だ。」

「偶然、だと……!?ふざけるな!!」

「ふぅ………やれやれ、残念ながら君と話している時間は僕らにはないんだ。

愁磨にお小言を言われてしまうだろうけど………邪魔をするなら、殺すよ。」

「…………なぜそこで愁磨の名前が出てくるのですか?」

「……失言だったね。これこそ文句を言われてしまうよ。………そろそろ時間だ、悪いけれどここまでだ。

後は頼んだよ、ヴァナミス、デュナミス。」

「ええ、ええ、了解いたしまして。」

「……ああ。」


フェイトは宙髙くへ浮き詠唱を始め、ヴァナミスは黒龍の様な鎧を、デュナミスは影の様な物を纏う。

ネギ達もそれぞれ武器を構え、最強の敵へと向かう。


「"ラステル・マスキル・マギステル!"『穿つ聖天(ラゥゾ・ヴェチェクニクタ)』!」

「"イーソ・リーソ・ヴォンヴァリーメ!"『押し潰す黒重(エァーベス・チャレ・ニエール)』!」

「ハッ、お先ィ!『狗神流 獣化連装・"黒狗神(モーザ・ドゥーグ)"』!オッラァ!!」

「遅れる訳にはいかないアル、よぉ!!」
ズッガァン!  ドッゴォア!
「新技の威力を試すにはちょうどいいでござるな!"忍 忍 忍"!」


ネギがフェイトへ光の柱を、アルがデュナミス・ヴァナミスへ重力球を幾十と放つ。

重力球を避けたヴァナミスは光の柱を掴み握り潰し、デュナミスは影を伸ばし攻撃を図るが、それを小太郎と古が

殴り、動きを止める。そこへ楓の爆鎖付き巨大手裏剣が絡まり、大爆発を起こした。


「おや『可能を関する者(デューエ・ルナミス)』。その様な攻撃をお食らいになるとは、腕が落ちられたのですか?」

「……巫山戯た事を抜かすな、『不可能を冠する者(ヴァール・レミリエス)』。避けるのが面倒だっただけだ。

貴様から先に始末するぞ。」

「これはこれは、冗談も解せないとは思いませんでした。貴方の性格は存じておりますよ。」

「この……!"久遠の空よ来たれり 敵を撃て戦神の矛 集え星の欠片 地より出でよ砂の鉄 空に伴え

御使いの剣"『熾使よりの天剣(シュワルト・ヴァンヒンメル・ファーレン)』!!」
ズドンッ!!
「少々五月蠅いですね、ネギ・スプリングフィールド。遊んであげているのですから少しお黙りなさい。」


ヴァナミスの台詞に、少々苛立った様子で煙を払い、無傷のデュナミスが現れる。

そこへネギの巨剣が落ちるが、またしてもヴァナミスが掴み砕く。


「(くそっ、本当に遊ばれてる・・・!逆に言えば、刺激しなければこのまま逃げる事も可能だけれど・・・。)」

「フフ、そんな事微塵も考えていないでしょうに。さて、どうしますか?」
ザッ
「待たせた!……が、芳しくないのう。ワシは本当に逃げる事を薦めるぞ。」


ネギ達が次の作戦を考えている所へゼクトが四人を連れ戻り、前線で戦っていた三人も集結する。

これで逃げるにしろ戦うにしろ、行動に移れる―――皆の考えがそう纏まった瞬間、フェイトの足元に

小さな魔法陣が一つ浮かび上がった。


「……残念だけれど、既に終わったよ。怒られるのは嫌だから、せめて避けてね。

―――『万里覆ウ石ノ天槍(ミスティトル・キオーン・アルーカトマデイン)』!!」

「拙い!ゼクト、転移!!」

「分かっておる!最低一秒は持たせるんじゃぞ!!」


フェイトの術が完成し、空港の外まで広がる超巨大な魔法陣と、更に千を超える大小様々な魔法陣が現れる。

それを見たアルビレオとゼクトは逃げる事を決断、十重二十重と重なる防御魔法を張り、転移の準備をする。

転移可能となったその瞬間、万里を石化させる槍の雨が、僅か半径300mに降り注ぐ。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「ぐぅぅぅぅうううう!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「……!しまった、このままでは………!死ぬよりはマシか!全員掴まれ!!」


ゼクトが一瞬の焦りを見せたが、それでも転移を敢行。アルビレオの防御が敗れるより僅かに早く、転移する事に

成功した。その転移する一瞬の間、ネギはフェイトの言葉を聞いた。


「君達は少し……お遊びが過ぎたね。現実を知ると良い。」

Side out


Side ネギ

ババババシュゥ!
「あだっ!」

「あうっ!」

「っと!皆さん、大丈夫ですか!?」


フェイトの攻撃からゼクトさんの転移で何とか逃げ、ジャングルのような場所に出た。けれど、近くに

転移したのは千雨さんとまき絵さんだけ・・・。恐らく、フェイトの魔法があまりに激しくて転移が阻害されて

しまったんだと思う。只でさえ難しい魔法だからね。


「オイオイオイ、ここ何処だよ。さっきの近代的魔法都市なんて見る影もないじゃんか。」

「ジャングルー!ジャングルだーー!ねぇネギ君、アーーアアー!ってやっていい!?」

「まき絵さん、少し落ち着いてください……。来る前に叩き込んで来た地図の通りなら、先程僕達が居た

メガロメセンブリアから約一万キロ西の地点、若しくは四千キロ南の地点です。」

「どっちにしろ遠いわぁ!!四千とか一万とか簡単に言うけど、どんだけ遠いんだよ!」


僕の(恐らく役に立たない)情報に、千雨さんが憤慨する。・・・そんな事言われたって!

まさか広域探索魔法を使うとは思わなかったから初級のしか習得してないし!

気配を探知するにしてもなんかここ、豪い強い気配がいっぱいあって、探せないんだよ!

グォォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「ふぁっ!?ちょ、ネギ君!?この声ナニ!?」

「魔獣……!?まずい、固まってください!!」

「バカ、コラ、どこ触って「静かにしてください!!」うぐっ………。」


急いで巨木の幹の間に隠れ、気配と熱・姿を生物から認識できないようにする。

直ぐにズズン、ズズンとまるで巨大な生物が歩くような音が聞こえ、僕達の目の前にその足(?)が落ちて来る。

ズズゥゥン!!
「……!………!………!?」

「(し、静かにしてくださいまき絵さん!黙ってれば何もしません!多分!)」

「(最後に余計なの付けんじゃねぇよボケ教師!お前もいい加減この環境に慣れろバカピンク!)」


僕と千雨さんで、騒ぎ立てるまき絵さんの口と体を取り押さえる。

その間に違う足音が二つ増え、直ぐに一つ減り、暫くしてもう一つも静まり、残りが遠くに去った所で、

僕達は三人同時にほっと息を付き、木の幹から左右を確認してから出た。


「ふざけんなぁぁぁあああああああああああああああああああ!!なんっっだよあの大怪物バトルは!?

振動だけで死ぬかと思ったわ!」

「ね、ネギ君?愁磨先生達の話だと、あんなのがうじゃうじゃわらわらいるのがこの世界って……ホント?」

「恐らくは………と言うかもうぶっちゃけますけれど、あれを遥かに凌ぐ化物がいると思われます。

ですが、問題の本質はそこではありません。」


僕が言うと、千雨さんは分かってくれていたようで、深く溜息をつきつつ頷いた。

・・・溜息をつくと幸せが逃げて行くって知らないのかな。いやもう不幸のどん底だから関係ないか。


「あたしらは三人も固まってっから幸運な方だぜ、佐々木。

最終ダンジョン級モンスター配置済みの二万キロちょいもある超広フィールドマップから仲間を探し出して、

更に帰る方法が分からないあたしらの世界に帰る方法を夏休み中……15日以内に達成しろっつーこった。」

「もし、一人でいる人が魔獣と出会ったら……。倒せるのは小太郎君、逃げられるのは明日菜さん・古さん・

楓さんくらいです。あとの人は…………。」

「た、大変じゃん!早く探さないと―――って、どこに居るかも分からないんだっけ……。どうすんの!?」

「それについては、私が説明しましょう。」

「「うわぁ!?」」


途方に暮れた所で、僕の影からゾリュンヌとアルビレオさんが現れた。

どうやら、この人は重力とか影魔法が得意なようだ。今はそんな情報いらないよ!


「残念ながら、私達にも彼女らの居場所は分かりません。どうやら世界中に阻害魔法が掛っているようで……。

君達はメガロメセンブリアに向かいつつ、その途中の街で情報収集と捜索をお願いします。

私とゼクトはもう一人の仲間と世界中を順に捜索していきます。」

「わ、分かりました。アルビレオさんも気を付けてください。」

「………フフ。ええ、あなた達も。ではご武運を。」


アルビレオさんは案内精霊を出して、来た時と同じく影の中に沈んで行った。

僕達は街だけ、か・・・。元々の約束の延長とは言え、歯痒いのも事実だ。


「行きましょう千雨さん、まき絵さん。僕達は僕達のやれる事をしましょう!」

「了解だリーダー。で、街ってどんくらい歩くんだ?」

「えーっと…………………………300キロです。」

「…………は?」

「300キロ、です。」

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


千雨さんの叫びに、鳥がバサバサと飛び去った。・・・あんまり叫ぶと、魔獣が来るんですが。

Side out


Side 愁磨

「………………………で、何か言い訳は?」

「「ありません…………。」」

「げ、猊下!無礼とは存じますが、発言する許可を頂きたく存じます!」

「発言を許す。言ってみろ、ヴァナミス。」

「ハッ!寛大なご処置、天上へ轟こう幸せの至り!そ、その、此度の失態は、私の出過ぎたが為の所業!

裁くのならば、どうぞこの私めを!!」

「ならん。今回の件は明らかにツェラメルとフェイトの責任だ。仮に貴様のせいだったとしても、

下の者が犯した責任は上の者が負うのだ。満足したのならば下がれ。」

「……ハ、御意に。」


俺の言葉に、若干の惑いつつヴァナミスは下がる。残されたのは俺と、素顔のツェラメル、そしてフェイト。

常と違うのは、二人が正座して項垂れている事と、俺がそれを見下ろしている事。

無表情のフェイトと違い、反省してます、と言った感じのツェラメル。歳は同じくらいだが、態度も姿も真逆だ。

フェイトが薄く青がかった白い短髪であるなら、ツェラメルは赤みがかった金髪ロングである。

・・・とまぁ、んなこたぁどうでもいいんだ。


「俺は何度も注意したよな?ここ一週間程度は事を起こすなって。

ゲート破壊で計画が遅延される日数など、一日二日で済む事だろうが。」

「しかしだね、愁磨。それでツェルにかかる負担はそれなりに大きくてね。」

「ならば尚の事だフェイト。高々10分も待てば、あいつ等は観光しに出かけた事だろう。

帰るとなれば俺が出向けばよかっただけの事………それをまぁややこしくしたな。

自分の女を慮るのは大変結構だが、お前はそれで些か以上に浅慮になる嫌いがある。分かっているだろう?」

「か、返す言葉も無い………。」


今度こそ項垂れるフェイト。こうして見ると、ネギと同年代の子供にしか見えないんだがな。

だが、こいつらは背負う覚悟と世界が違う筈だ。・・・・・・恋は盲目と良く言ったものだな。

しかしそのせいで、俺の目算と計画は台無しだ。ネギ達は一週間で帰り、騒ぎを知った時にはもう手遅れ―――

と言う筋書きだったんだが。久しぶりに修正力を目の当たりにした気がする。


「シュウマ、その、言い訳だと思われるかもしれないのだけれど……一応、聞いてくれる?」

「宜しい。発言を許可しよう、ツェラメル君。」

「あ、あのね?私も不思議だったけれど、何と言うか……待ちきれなかったと言うか、どうしようも無かったと

言うか……。体が勝手に?と言えばいいのか………。」

「…………はぁ。いや、俺も少々意地悪が過ぎたか。以前話したな、"修正力"と言うものについて。」


問いにフェイトは首を傾げ、ツェラメルは思い出すように米神に指を当てた後、同時にポンと手を打つ。

・・・無駄に可愛いな、こいつら。


「ええと、確か……"この世界における大まかな道筋・物語の帰結から大きく外れない様にする力"、だっけ。」

「そう。それに改めて加えるが……まぁ、察しはついているだろう。"それを成しているのは創造主神であり、

俺達も彼(彼女?)の力に抗えていない"、と言う事だ。」

「つまり私達はシュウマが言った通り、"ネギ・スプリングフィールド達に倒される。その為に彼等をこちらに

残す為、私を操った"………と?」

「操った、と言えば抗う余地があるように聞こえるな。"そうなる事は初めから決められていた"と言うべきだ。」


この僅かな事実で、この二人は事の大きさ、そして重大性を真に把握したのだろう。

フェイトですら顔が青ざめているように見える。そう、つまりは―――


「分かったか?俺達の計画を成すには、我に力を与えて下さった主神殿を倒すか欺くかしないといけないんだ。

その為の算段は、付いてはいる。」

「そんな馬鹿な……!彼の力の欠片でしか無い私達が倒せるとでも?」

「残念ながら、その方法は話せない。が、俺達とお前達が居てこそ成功する………とだけ言っておこう。」

「私達がやっている作業がそれの助けになると言うのならば、グズグズしていられないわ。

『フェイト、次の段階に移行する。急ぎ掛かれ。』」

「了解。」


いつものボロローブを纏い『造物主』モードになると、先程の消沈具合が嘘の様に命令を下すツェラメル。

その命に従い、フェイトも転移でどこかに行く。・・・さっき言ったの半分出鱈目だから、こいつらが

何やっているか分からないんだけどな。

さて、俺もそろそろ次の段階に移らないと間に合わんだろう。


「彼等もこんな気分だったのかな……?と、分かる訳も無いか。」


俺の計画の理念と良く似た事を成した二人の事を思い、独り言ちる。気にしても仕方ない事だ。

何故なら、俺はもっと多くの理解者が居るのだから。


「さぁ始めるぞ!絶対神を刈り取る祭りだ!!」

『『『Yes.mymaster!』』』

「は~い!」

「・・・はい。」


・・・若干、纏まりが無いせいで締りは無いが。それでも、それこそが俺達らしさだ。

Side out
 
 

 
後書き
暫くぶり更新。急な出張で書け無かったもので。
もう二~三週間ほどは不定期更新が続くかと思います。長引かなければ。 
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