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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第77話 少年達は指針を見つけるようです


Side ネギ

「あっ!街だ!街がありましたよ千雨さん!!」

「そ、そうか……漸くか……疲れたぜ………。」

「なはは、千雨ちゃん体力無いなぁ。もっと鍛えないと生きてけないよー?」

「せやで、メガネの姉ちゃん。愁磨はんに稽古つけて貰った割には柔いなぁ。

「精神的に疲れたって意味だよ犬っコロバカピンク!お前等みたいな異常者と脳内お花畑と一緒にすんな!!」


アルビレオさんと分かれてから数日。魔獣と戦っていた小太郎君を加えて、僕達は最初の街へ辿り着いた。

・・・何が大変だったかと言うと、魔獣を見る度に戦おうとする小太郎君を抑えるのが一番大変だった。

無理だから。野生の龍とか精霊系とか無理だから。

そして千雨さんから、街について一言。


「ファンタジー…………だな………。」

「おぉう!虎しゃんとか猫しゃんとか居るよ!あの耳本物かな!?触らせてくれるかな!?」

「いやー、やめといた方がええやろなぁ。」

「えーなんでよ!コタ君のケチ!」

「せやかてなぁ……。」


まき絵さんが小太郎君に噛みつくと、小太郎君が苦い表情で先にある店を指差した、次の瞬間。


ドカーーーン!
「食い逃げだぁーー!!」

「逃がしゃしないよーッ!!あんたが土下座して謝って金払うまで殴るのを!止めないッッ!」

「やったれおばちゃーん!」


「……な?治安悪いからやめとき。」

「うわぁ………街中なのに激しい。」

「辺境ですから……。」

「いやいやいや、問題そこじゃないだろ。一応街なんだから、メガロうんたらに電話でも魔法でも使って

連絡できねぇのか?」


千雨さんの当然の意見に、二人がポンと手を打つ。・・・小太郎君、まき絵さん・・・・。

取り敢えず近場の店で情報収集してからかな。それから長距離念話か電話で・・・。

ザザ――
『お昼のニュースです。数か月前から世界各所で起きている、ゲートポート破壊事件の続報です。』

「なんやもう昼かいな。通りで腹減ったわ。メシ食おうぜネギ、姉ちゃんたち。」

「そうだねぇ。でもさっきの見たら、少し勇気がいるなぁーなんて……。」


突然空中に浮かび上がった映像・・・言ってしまえば街頭テレビを見て、二人が呑気な会話を繰り広げる。

けれど、僕と千雨さんはその内容を注視していた。

ゲートポート破壊事件って言えば、フェイト達がやったアレに違いない。何か情報が―――


『犯行声明も無く背景が謎に包まれたままの事件でしたが、メガロメセンブリア当局より、今日新たな映像が

公開されました。ご覧ください。』


そう言うと、キャスターの後ろで流れていた映像が全画面へ拡大された。

そこにはローブを着た赤髪の子供が、『全きこの身を剣と化し(エントーティスキス・キ・モノ・アヴトーブリオラ)』でゲートポート内を攻撃している姿が

映されていた。顔までは良く見えないけれど、アレって・・・!?

バッ!
「フードを被って!」

「チッ、どないなっとんねん!」

「大方、あのフェイトとか言う奴らの仕業だろうがよ。にしても、これでメガロも安全じゃねぇってこったな。」

「え、ちょ、何、どういう事!?」


しどろもどろしているまき絵さんを連れて、少し離れた所でニュースを見る。

内容を統合すると、どうやら主犯格に近いとされた僕達は懸賞金を掛けられて指名手配されたようだ。


僕だけ金額30万っておかしくない!?他の皆3万円(Dq?がお金の単位らしいけど)とかなのに!

とにかく、一刻も早くみんなと合流しないと―――


「「ちょっと(ちょぉ)待て!」」

「グェッ!ゲホゲホ……な、何するのさ!早く皆さんを見つけないと、賞金首に狩られちゃいますよ!?」

「駄目だよネギ君!それはアルなんとかさんがやるって言ってたじゃん!」

「そうだぜ先生。だから、あたしらがやる事は情報収集。これに尽きる。

一番お馬鹿そうな佐々木、お前この状況正確に把握してるか?」

「ひ、一言余計だよ千雨ちゃん!私だってわかってるもん!」


そう言いつつも、むーんと唸り始めるまき絵さん。千雨さんと小太郎君は分かっているらしく、

ニヤニヤしながらその様子を見ている。
・・・性格悪いなぁ。


「え、えっと、私達は指名手配?されちゃった犯罪者で、仕掛けたのがあのフェイトって奴らなんでしょ?

で、安全だと思ってたメガなんちゃらはグルだから助けて貰えなくて、皆大変!」

「うん、まぁ大雑把に言えばそんなもんだ。まぁ態と捕まってメガロまで連れてって貰って、身の潔白を

証明出来りゃ一番いいが……まぁ無理だからこの案はポイだ。」

「はい。そうなると、メガロメセンブリア以外の国に頼るもの難しいですし、やっぱりアルさんが言った通り、

自分達で皆を探し出して、地球に帰るしかないと思います。」

「せやかてお尋ねモンじゃ情報収集もまともに出来んやろなぁ。どないする?」

「大丈夫。そこは僕に考えがあるんだ。」

………
……


カランカラーン
「…………ミ、ミルクティーを。」

「昆布茶。」

「あ、じゃああたしピーチジュースー!」

「オイオイ………。」


酒場に現れた新参者四人に僅かにざわめく店内。そして注文を聞いた途端ドッと笑いが起き、此方への興味を

無くす。しかし、数人はその奇妙な取り合わせに目を向ける人も数人いる。

僕達はエヴァンジェリンさんから餞別として貰った年齢詐称薬で、大人と幼稚園児の姿に変わっている。

僕と小太郎君が大人で、千雨さんとまき絵さんが小さくなってる。少なくとも子供四人で目を引くよりはマシだ。


「マスター、失礼。この写真の中で見かけた奴は居ませんか?この街で。」

「ん?何だいこりゃ……ああ、さっき発表された賞金首だね。」

「ええ、見ませんでしたか?」


カウンターに座った僕は、マスターにクラス名簿を見せる。

中には全く関係ない人もいるんだけど、こんな状況だ。また巻き込まれてるとも限らないからね・・・。


「ハハハ、君もバカだね。兎捕まえるより楽そうな賞金首に心当たりがあったら、私が捕まえに行くよ。」

「そ、そうですよね……。」


『アハハハー』と、マスターに合わせて笑う。けれど、内心では冷や汗が滝の様に流れる。

酒場のマスターまで賞金首狩りをしようとするような場所で情報が集められるとは思えない。

仕方なく席を立ち、次の店へ移動しようかとした時、肩に手を置かれる。ふと振り返った先には―――


「よう、新入り。テメェムカつく顔してっから殴らせろ。」

「うっわぁ……。むさ苦しい。」

「オイ佐々木、事実をそのまま言ったらこんなハゲマッチョでも傷つくんだぜ?

波風立てないように、せめて『き、鍛えられてますね』程度の世辞にしとけ。」

「つか、今時場末のチンピラか世紀末でもなけりゃ言わへん台詞やで…って、場末のチンピラか、この場合。」


ハ・・・禿頭の筋骨隆々で、上半身裸に袖無しジャケットを羽織った、いかにも言った感じの、分かり易い

やられ役さんがいた。と言うか皆が好き勝手言ったせいで、僕が発言する隙が無かったよ。

しかも顔真っ赤にして怒ってるよ、この人。あと後ろにいる、手下っぽい人達。


「て、テメェら!アニキのはハゲじゃねぇぞ!剃ってんだ!」

「むさ苦しいとかいうんじゃねぇ!こりゃ男らしいってんだよ!」

「お前らも少し黙っとけや!ったく、テメェみてぇツラしたバカに昔のされてなァ。それ以来赤毛の優男

見る度ムカついてなぁ。とりあえず殴られとけ!!」


意外と鋭いパンチが来るけど、座ったまま上半身だけをずらして避ける。その後のラッシュも片手で受け止める。

そんな事よりも、今言った『僕みたいな顔の赤毛のバカ』って、まさか・・・!


「その赤毛の優男って、まさか父さんの事じゃ・・・・・・!?」

「ああん?あいつにテメぇ見たいなデカイガキが居るなんて聞いた事ねぇよ!!

チョコマカ避けやがって!黙って殴られとけ!!」

「理由無く殴られるのはマゾヒストか聖人くらいですよ?」


幾ら打ち込んでも座ったままの僕に苛立ったのか、バックステップして距離を取る・・・マッチョさん。

そして僅かな魔力が練られると同時、他の客とマッチョさんから状況が説明される。


「あのガキやるけど……バルガスはアレで高位の魔法使いだ。相手が悪かったな。」

「良いだろうガキ、俺に本気を出させたな!!ぬぅん!」


掛け声と同時、『戦いの歌』の上位である『戦いの旋律』の拳速二倍の強化魔法を無詠唱で発動。

さらに無詠唱で『魔法の射手(サギタ・マギカ)』の地属性である砂の矢が五本、宙に浮かぶ。

・・・・・あれ?これで高位なの?もしかして、僕って今相当魔法の価値観がおかしくなってるんじゃ・・・。


「ハハハ悪ぃなニイチャン!一発喰らって貰うぜ!!」
ゴッ! ドドドドド!
「………まぁ一発も六発でも構いませんけれど。」

「んな、無傷だとぉ!?」

「あ、あの小僧何モンだ!?まさかあん時の赤毛の……!!」


僕が障壁だけで全部受け切ると、騒然となる店内。ああ、やっぱりこれおかしいのか・・・・・・。

まぁいいか・・・。今更どうにも出来ないし、こんな事でダメージ負ってるようなら、簡単に死んでしまう。


「まぁ、情報も持っていないようですし……僕達はお暇します。マスター、ご馳走様。」

「ああ、またいらっしゃい。お嬢ちゃん達の方は見つけたら教えるよ。」

「ん待てやテメェ!このまま帰れると「思っていますのでそろそろ黙ってください。」
ドンッ!
「あ、アニキー!?」

「テメェよくもアニキを!!」


正拳一発、僅かな声も上げずに地に伏すマッチョさん改めバルガスさん。

そして武器を手に取る手下の皆さん。・・・ああ、メンドクサイナァ・・・・。


「ハッ、雑魚共がワラワラ群れよって!後はワイが……片付け……へんから、どうぞ。」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ----
「うん、ありがとう小太郎君。」

「な、な、なんだテメェ、その魔力は!?聞いてねぇぞ!?」

「口を開く許可は出してないよ。」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
『『『『うっぎゃぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!』』』』


無詠唱で放たれた1331本の雷矢に撃たれ、手下さん達は聞き分け良く寝てくれた。

そして溜息を一つついて店を出ようとした時、マスターさんから声がかかる。


「あ、ちょっと待ってくれ。さっきの写真もう一度見せてくれないかい?」

「え?あ、はい。」

「んー………ああ、やっぱりだ。雰囲気が違ったから人違いかと思ったんだけど。ほら、この子だ。」


そう言ってマスターが指差したのは・・・僕達が探していた人とは違ったけれど、一縷の希望・・・いや、

全てを解決出来るかも知れない人だった。


「せ、刹那さん!?」

「せつなと読むのか。どうも旧世界の文字はね……。と、この子が一昨日だったかな、ここに来たんだ。

髪を下ろしていたけれど、珍しい黒髪の人間(ヒューマン)だったから間違いないよ。」

「それで、この姉ちゃんどこ行ったんや!?」

「『力試しが出来る場所は無いか』って聞いて来てね。グラニクスで近く拳闘士の大会が開かれるから、

それに出てはと薦めたんだ。二人一組の大会だから、相方はどうするのかね……。

ここから暫く南南東に1~200キロ行った所にある大きな貿易都市だ。ここよりも治安が悪いから、行くなら

気をつけてね。」


マスターさんの推挙に、漸く活路を見出せた僕達。刹那さんが居るという事は、その周囲に必ず誰かが

ついている。首尾良く行けば、地球に帰る方法だけは分かる!


「マスター、ありがとう!皆さん、急いで行きましょう!」

「おお!ついでや、その大会もサクッと優勝したろうや!」

「そっちは目的に入ってないから!どうしても出たいなら、皆さんを見つけてからだよ?」


小太郎君は暫く文句を言ってたけれど、渋々頷いてくれた。・・・そこは直ぐに頷いて欲しかったけれど。

目指す目標は貿易都市グラニクス。そして目的は刹那さんの発見。皆さん、もう少しだけ待っててください!

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