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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS開発史
  陸戦用MS①

——地球への戦線移行とともに出現した陸戦用モビルスーツ——

陸戦用MSとは、文字どおり「地上」での運用を前提に開発されたMSである。この「地上」とは平地や山岳地帯、乾燥地や湿地帯、森林地帯や寒冷地など、「海洋以外の地球全域」を指す。

 兵器とは必要に応じて開発されるものである以上、「地球上におけるMSの運用」の必要性に迫られた組織こそが陸戦用MSの開発に先鞭を付けたわけだが、その組織は、本来なら陸戦用MSなど必要としないはずのコロニー国家、ジオン公国であった。

ジオン公国軍が陸戦用MSを必要としたのは、地球侵攻が決定していたためで、U.C.0076,12にスタートした局地戦用MSの開発計画の一環として陸戦用MSの開発も進められていった。

 最初期の実戦型MS、MS­-05ザクⅠは地球上での運用も可能とされており、少なくともコロニー内での戦闘には対応する性能を持っていた。しかし、基本的には宇宙戦仕様であるザクⅠをそのまま地球上で使用した場合、宇宙用装備がデッドウェイトとなるばかりか、防塵・防水対策も必要となった。これは後発機であるMS­06FザクⅡでも同じで、優れた運用性を持つ汎用MSであっても、地上戦、特に砂漠やジャングルなどの特殊な環境下での使用は、その能力を大幅に減殺することとなった。

 このように地域によって環境が異なる地球は、コロニー内のようにデリケートかつ均質な環境とは全く異なっており、宇宙戦にウェイトを置いて開発された汎用機ではその性能を十分に発揮することは難しいと考えられた。MSの発達途上であった一年戦争初期において、MSにとっての地球は、侵入を拒絶する「人外境」でしかなかったのである。

 公国軍は地球侵攻作戦に先立ち、地球上での運用を考慮した陸戦用MSの開発を進めていたが、コロニー国家である公国には地球環境についてのデータが絶対的に不足していた。このため公国軍は、地球環境の乏しいデータとコロニー内で得られたデータを機に、ザクⅡF型をベースとする最初の陸戦用MSを生み出した。

 これが一般に「陸専用ザク」と呼ばれるMS­-06JザクⅡJ型である。J型は、宇宙用装備の撤去や姿勢制御バーニアの削減、融合炉の空冷化、さらに1G環境に耐える間接やショックアブソーバー(振動する機械構造や建築物の振動を 減衰する装置)の強化、各部の防塵・防水処理など、公国軍技術者が必要と推測した地球環境対策が行われた期待であった。

 J型はU.C.0078,10の時点で80機が完成していたといわれているが、第1次降下作戦には投入されなかった。しかし第2次降下作戦以降の中核として地球各地に投入され、その実用性を証明した。MS-­06JザクⅡJ型は、陸戦用MSという新たなMSカテゴリーを確立するとともに、のちの陸戦用/局地戦用MSの始祖となっていく。





補足事項

——連邦軍の陸戦用MS ——

 グフ・シリーズやドム・シリーズに代表される、陸戦用MSを開発していた公国軍に対し、連邦軍には陸戦用MSシリーズは存在せず(ガンタンク・シリーズですら陸上戦専用機ではない)公国軍のMS­06Jのように従来機を改修して陸戦用MSを開発していた。MSの開発に立ち遅れた連邦軍にとって、開発期間の短縮が見込めるバリエーション化は、MSの早期投入を行う上で極めて重要なファクターだったのだ。

 またRXシリーズから改修・転用された陸戦用MSの特徴として、RX­-79[G](陸戦型ガンダム)やRX­-75(量産型ガンタンク)のように宇宙戦能力を排除して、局地戦専用機としていることが挙げられる。これは一種のデチューン機で、機能を特化させていた公国製陸戦用MSとの決定的な違いであるとともに、試作機をベースに低コストの一般機を生産するという連邦軍の方針が徹底されていた証拠でもある。
 
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