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カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
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しょうがないよね、効かないの彼だけだし。

「・・・ガッ!!!」

 深夜の船の甲板に、その声は響いた。全身を甲板に叩きつけられ、悶絶するその人影は、なんと【聖魔王】名古屋河鈴蘭その人だった。

「姉上!!」

 その場所で彼女の帰りを待っていた睡蓮は、行きとは全く違う鈴蘭の姿に驚いた。彼女の能力で作った、世界中のどんな魔術兵装も凌駕するメイド服も、いつも彼女が身につけているサングラスも、彼女自身の体もボロボロで、血が滲んでいない部分を探すほうが難しい状況である。

「敵状視察だけだと言っていたではありませんか!戦ったのですか!?」

 まつろわぬクトゥグアは、草薙護堂との決闘を望んでいる。その為の脅しとして、従属神二体も用意した。・・・しかし、護堂がクトゥグアを首尾よく倒せたとして、彼女に呼び出されたまつろわぬアフーム=ザーとまつろわぬルリム・シャイコースが消滅するという確証はあるだろうか?
 まつろわぬナイアーラトテップが呼び出した従属神、まつろわぬ闇をさまようものは、ナイアーラトテップが消滅した時点で現界を保てなくなった。・・・しかし、それはあの神が、ナイアーラトテップのアーティファクト”輝くトラペゾヘドロン”によって召喚されていたからである。『ナイアーラトテップが”輝くトラペゾヘドロン”を維持出来なくなったからこそ、闇をさまようものは消滅した』のだ。

 あの二体は、大元であるクトゥグアが消滅しても残る可能性がある。だからこそ、転移魔術のお陰で距離の概念が関係ない鈴蘭が、自分から偵察を望んだのだ。

 彼女たちには、隔離世という切り札がある。あの場所に取り込むことが出来たのなら、周りを気にせず戦うことが可能なので、精神汚染を持っている二柱の神とでも有利に戦えるハズだったのだが・・・。

「・・・気持ち悪い。吐きそう。」

「今、どくたーとりっちを呼んできます!」

 真っ青な顔をした鈴蘭。どうやら、かなり深いダメージを負っているようで、いつもの快活さは鳴りを潜めていた。立ち上がることさえも満足にできないらしく、甲板に突っ伏した彼女。そんな姉を見た睡蓮の行動は素早く、数分後にはドクターとリッチが、更に数分後には、他の【伊織魔殺商会】のメンバーがワラワラと集まってきていた。

「おやおや、盛大にやられたようだね。やはり、精神防壁では薄かったか。」

 実は、クトゥルフの神が精神汚染の権能を持っていることを知っていたので、リップルラップルに頼んで精神防壁の魔術を掛けてもらっていた。その上で、数十キロも離れた場所から偵察しようとして・・・見事に防壁を抜かれたのである。鈴蘭の傷は、全て自傷行為であった。恐らく、敵は自分が見られていたことさえ気がついていないだろう。無差別に狂わせるこの権能は、とても厄介で恐ろしい権能であった。

「私の防壁を抜いて、神殺しにすら効く精神汚染なんて、通常の人間じゃ耐え切れないの。周囲の人間の生存は絶望的。諦めたほうがいいの。」

 防御能力はアウター1とまで言われた彼女の防壁を容易く抜いて、本来魔術などが通用しない神殺しの精神を犯して見せた。間違いなく、クトゥルフ神話の神々が持つこの権能は、最上位の精神攻撃である。近づく事すら困難なのだから。

 しかも、これで精神汚染にのみ特化しているのならまだいい。・・・しかし、原作的には、クトゥルフの神々は一柱でも出現すれば地球滅亡の危機とさえ成りうる神々なのである。戦闘能力も最上位。手がつけられない状態であった。

「これを飲むといい。気が楽になる。よく、その程度の汚染で戻ってきたね。これならすぐに治るよ。沙穂くらい汚染されていると、完治も難しくなる。」

 薄れゆく意識の中で自分の状況を感じ取った鈴蘭は、理性が残っている内に撤退した。これが、沙穂のように完全に狂わされてしまえば、彼女のようにベッドに拘束した上で、様々な治療を受けなくてはならなくなる。

「・・・護堂君に任せるしか・・・ない、ね・・・。」

 漸く喋れるくらいにまで回復した鈴蘭が、途切れ途切れに話す。・・・しかし、その言葉に翔輝が反対した。

「しかし、神殺しになったばかりの彼に、戦いを連続でさせるなんて!」

「仕方があるまい。そもそも、わしらでは近づく事も出来んのじゃ。このわしですら、近づけば汚染される。恐らく、世界中全てを食い尽くしたくなるじゃろうな。翔輝よ、主は、自分で世界中を荒らし回りたいのかの?」

 みーこの言うことは正論であった。せっかくまつろわぬ神を倒せても、自分が汚染されてしまえば意味がないのだ。世界の全てを正しく認識出来なくなり、闇雲に暴れまわる化物が生まれるだけ。
 確かに、汚染には個人差がある。とは言え、『自分は汚染されない』と自信を持ってい言える者がいるだろうか?みーこですら、『汚染される』と言い切った。鈴蘭でさえ、汚染されかかった。そして、完全に汚染された人間がどんな行動を取るのかは、サルデーニャ島の住民と、沙穂が証明している。

「今、『汚染されない』と確実に言えるのはあの男のみ。ならば、あやつに任せるしかあるまい。もし奴が失敗したら、その時は主らが戦えばよいよ。」

「・・・クソッ!」

 自分の力不足に嘆く翔輝。こうして、護堂が知らないうちに、第三、第四の戦いの予約が終わっていたのだった。 
 

 
後書き
修正しました。
お姉さまって書いてた。誰だよwww
どうやら、今書いてるとある科学の論理回路(ロジカル・ダッシュ)の、黒子と混ざったみたいです。
 
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