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舞台神聖祝典劇パルジファル

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第二幕その九


第二幕その九

「感じ取りだ。神聖な血が燃えることも。全ての人々の心を震えさせる」
「心を」
「そう、これを」
 そう話してであった。
「胸の中だけに消える気配がない。主の嘆きが」
「私はあの時に」
「その嘆きだ」
 クンドリーが何を言いたいのかもわかっていたのである。
「その嘆きこそがだ」
「わかっているというのね」
「汚された槍の嘆きもまた」
 それもだというのだ。
「罪に汚れたる手より我を救え」
「それが槍の声」
「わかtっている。その嘆きは恐ろしいまでに強い」
 今の彼には全てがわかっているのだった。
「私の心にまで呼び掛けてくる。しかし私はそれに気付かなかった」
「今気付いた」
「主よ、慈愛の父よ」
 こう話していくのであった。
「罪深い私はどうしたらこの罪が償えるのでしょうか」
「私を」
「御前を?」
「もうこのまま去りたい」
 クンドリーは彼の前に来て話すのだった。
「救われたい。神の御力で」
「まだだ」
 しかしであった。パルジファルは彼女のその言葉を拒むのだった。
 そのうえでだ。彼はクンドリーに告げた。
「御前は罪を犯した」
「罪を」
「そう、その罪によってだ」
 こうクンドリーに話すのだった。
「御前は王を惑わしたな」
「それも知っている」
「全てがわかってきたのだ」
 そうだというのである。
「その唇も首筋も使って王を惑わしたな」
「しかしそれは」
「全てを使い王を今の苦しみに誘ったのだったな」
 クンドリーを厳しい目で見据えながらの言葉だった。
「それも知ったのだ」
「御前が心の中で王の苦しみを感じ取った」
「それは事実だ」
「ならば私の苦しみも」
 切実な顔でこう告げるのだった。
「私を救う為に」
「せよというのか」
「そう、私はかつて主を待った」
「そうだったな」
「しかし彼が丘に向かうその時に」
 遥かな過去の話であった。
「私は彼を罵った。私への救いはまだだと告げた彼を」
「そして呪いを受けたのだったな」
「死のうと生き続けようと寝ても覚めても私を責め苛む」
 まさにそうだというのだ。
「私は未来永劫続くこの苦しみの中であの主を見た。私を救おうというその主を」
「見たのだな」
「そして私に笑顔を向けてくれた」
 それはあったというのだ。
「しかし」
「しかし?」
「その度に私を拒みそのうえで私は目覚める」
 そうしてだというのだ。
「私は二つの世界の中を彷徨い笑い叫び怒る」
「泣けはしないな」
「泣くことは許されない」
 全てを彼に対して話すのだった。
「暴れたり狂ったりしながら暗い夜に包まれ続け」
「そうして生きてきたな」
「悔い改めて逃れることもできなかった」
 その時からだというのだ。
「私が焦がれ死にたいまでに憧れたあの主、愚かにも嘲ったあの主」
「あの方は全てを知っておられた」
「あの主の下に。これからは」
「まだだ」
 しかしここでまたこのことを告げるパルジファルだった。
 
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