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箱庭に流れる旋律

作者:biwanosin
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歌い手、初のギフトゲーム

 さて、箱庭に来て二日目、クズタイガーとのギフトゲームのために居住区画とやらに来たんだけど・・・なんか、怖いです。木が脈打っています。
 あれ?木って脈打つようなものじゃないよね?箱庭ではよくあることだったりするのかな?

「皆、ここに“契約書類”が貼ってあるわよ」

 そんなことを考えていたら、飛鳥さんがそういって皆を呼ぶ。ええっと、内容は・・・

『ギフトゲーム名“ハンティング”

 ・プレイヤー一覧 久遠飛鳥
          春日部耀
          ジン=ラッセル
          天歌奏

 ・クリア条件 ホストの本拠地内に潜むガルド=ガスパーの討伐。
 ・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。
       指定武具以外は“契約”によってガルド=ガスパーを傷つけることは不可能。
 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
 ・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗のもと、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
            “フォレス・ガロ”印』

 なんだか・・・ルールが面倒くさい。
 ここまで細かく決めるものなんだなぁ・・・ギフトゲームって。

「ガルドのみを指定武具に・・・指定武具で打倒!?」
「こ、これはまずいです!」

 何か黒ウサギさんとジン君が驚いてるけど・・・多分、“契約”とやらのことだろうな・・・

「このゲームはそんなに危険なの?」
「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールでして、」
「“契約”のせいでクズタイガーに指定武具以外の攻撃が効かない?」
「ええ、“契約”のせいで・・・って、何故分かったのですか!?」

 あ、驚いてる・・・

「だって、ギフトゲームに人を賭けることすら容認される世界だし、ギフトゲームは、この世界において絶対なんだろうなって思って」
「その通りですが・・・よく分かりましたね?」
「僕はただの歌い手だからね・・・冷静な観察力がないと生きていけないかな、と」

 なんで僕を呼んだんだろう・・・?他の三人に比べて一人で出せる力が少ないのに・・・

「まあ、ここで悩んでても仕方ないし、三人とも行こう?早くあんなやつは消しちゃいたい」
「それもそうね、行きましょうか」
「うん、早くしよう」

 そして、僕たちは森の中に入っていった。



♪♪♪



 さて、今クズタイガーを探しているわけだけど、全然見つかりません。
 それでも、隠れる場所はたくさんあるあらどこから出てくるか分からないし・・・そう思って警戒していると、春日部さんが

「大丈夫。近くには誰もいない。においで分かる」

 そう言ってくれた。春日部さんは動物並みの五感を持っているのでこんなときにすごく頼もしい。

「あら、犬にもお友達が?」
「うん、二十匹くらい」
「犬かー・・・久しぶりにモフりたい」

 ここ数年触ってないなー・・・箱庭にいないかな?普通の犬。

「奏は犬が好きなの?」
「うん、一番好きな動物は犬だよ。何でかは、自分でも分からないけど」

 そのことについて春日部さんと話をするのは楽しそうだけど、今はそれどころじゃないよね。

「それより、あのクズタイガーがどこにいるかとか分かる?」
「それは分からない。けど、風上なのに全然匂いを感じないから、どこかの建物の中にいると思う」
「そうか・・・皆、ちょっと止まってくれない?」

 一つやりたいことが思いついたので、その場に止まり目を瞑る。

「どうしたの、奏君?」
「いや、このあたりにいるのかどうかだけ確かめようかと思って。動かれると分からないからちょっと時間を頂戴。後、春日部さんは耳をふさいでおいたほうがいいと思う」

 さて・・・春日部さんが耳をふさいでくれたので、そのまま四方八方に超音波を放つ。
 そのまま音の跳ね返り方から、ぶつかったものが動いているのか、そのものの大きさ、命を持つのかを把握していく。
 やっていて思ったけど、多分これが“音響操作”なんだと思う。
 “音”と“響き”を意のままに操作する、そういう感じなのかな?

「ふう・・・この辺りにはいないみたい。多分、あっちの方にある建物の中じゃないかな?」

 このあたりに建物は、あそこしかない。間違いないと思う。

「そう・・・なら、そこにいると仮定して」
「ううん、間違いなく奏の言ってる建物の中にいる。今確認した」

 いつの間にやら、グリフォンのギフトで飛んでいた春日部さんがそういっている。
 目がいいってレベルじゃないよな・・・となると、何か目のいい動物のもの?何がいたかな・・・

「その目・・・そういえば、鷹のお友達もいるのだったわね」
「あー、なるほど。確かに鷹なら見えそうだよね」

 ほんとにたくさんの友達がいたんだなぁ、春日部さん。
 その生活も楽しそうだ。

「でも、ちょっと気になることが」
「それは何ですか?」

 あ、やっとジン君が喋った。何か周りにある木を見ながら考え事でもしてたみたいで、一切喋らなかったから、ちょっと心配だったんだよね。

「館まで植物に飲み込まれてた。勝つためとはいえ本拠の建物まで壊すのはおかしいし・・・」
「確かにそうですね・・・ガルドに何かあったんでしょうか?」
「それは行ってみれば分かるでしょ」
「そうね。ここで悩んでいても何も始まらないわ」

 さて、あの後しばらく歩いてその館に着いた。
 確かに、気味が悪いほどにボロッボロだし、脈打つ植物だらけだな・・・

「さて、まずは一階だけど・・・この様子では、誰もいないわよね?」
「うん、間違いないと思う。そんなに強い匂いはしないし」
「何より、隠れるような空間がないからね。となると・・・残るのは二階か」

 階段もあることだし、普通に上がっていけるだろう。

「じゃあ、私たちは二階に上がるけどジン君はここに残ってもらえるかしら?」
「ど、どうしてですか。僕だってギフトを持っていますし、コミュニティのリーダーです。行かないわけには」
「そうじゃないんだよ。ここに来るまでの間に色々イレギュラーなことがあったでしょ?ここでも何があるか分からないから、退路を守って欲しいんだよ」
「・・・・・・分かりました。お気をつけて」

 ジン君は、渋々といった様子で了承してくれた。
 物分りがよくて助かるよ。

「じゃあ、行きましょうか」
「うん、もうすぐそこにいるだろうし」

 そして、僕たちはそのまま階段を静かに上がり、一番奥にあった部屋の扉の前に立つ。
 そのまま扉を開き、中に入ると・・・

「――――・・・・・・GEEEEEYAAAAAaaaa!!!」

 そこには、変わり果てた姿となったクズタイガーと、その背に守られる白銀の十字剣が有った
 
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