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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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一部:超絶美少女幼年期
  二十一話:私たちの密談

 見知らぬ美女を連れて帰った私を、サンチョは少なからず困惑気味に迎えてくれましたが。
 そこは、『私』が。

「旅の途中で、この村に立ち寄ったのですが。手入れの行き届いた素敵なお宅があるのに、目を引かれまして。つい、見入ってしまっていたところを、お宅のお嬢様に声をかけて頂いたのです。誘われるままについてきてしまいましたが……、ご迷惑、だったでしょうか……?」

 と、キラキラしい笑顔で主夫心をくすぐるセリフを吐いた後、僅かに哀しさを滲ませてご挨拶してくれまして。

 私もここぞとばかりに、

「この、おねえさん。はじめてあったのに、なんだか、なつかしいかんじがして。もっと、おはなししてみたく、なったんです。……だめ、ですか……?」

 と、たぶんママンに似てるとこもあるだろう『私』の雰囲気と、母のいない子供の寂しさを存分に生かしてダメ押しをしたところ、はっとしたように表情を変えて、歓迎してくれまして。

 こんな事態に備えて多目に買っておいたお土産のお菓子とお茶を出してくれた後は、そっとしておいてくれてます。

 不意の来客とか、あるかもとは思ってたけど、まさか自分とはね!
 予想外だわー……。
 来るのは知ってたけど、今日来るとか、家に来るとか!思ってなかったしね!さすがに!

 サンチョを騙しているようで少々気が引けるが、今からする話の重要性を考えればサンチョも、例え将来バレても、わかってくれるはず!



 サンチョの気配が部屋から離れたところで、私が話を切り出します。

「パパンのことだけど。助けられないかな?」
「無理」

 早ッッ!!
 聞かれることも、結果もわかってるんだから、当たり前だけどさ!
 多少は間を持たせるとか、してみてもいいんじゃないの!?

 ……しないか。
 『私』が、私を相手にしてるんだからね。
 そんな、意味の無いこと。

 ……だが、しかし!
 『私』が言うならそうなんだろうとか考えつつも、碌に確認もしないで、簡単に引き下がれるような話では無いんです!!

「ラインハット行きを止めるのは?」
「無理。友人の頼みだから。誰がどう言っても、パパンは行く」

 だよねー。
 これは、そう思ってた。

「私が、ついて行かないのは?」

 これなら、私が人質に取られるという事態は避けられるからね!

「ヘンリー誘拐に、手遅れになるまで誰も気付かない。パパンは王子誘拐の濡れ衣を着せられ、村ごと私を人質に取られて、無抵抗で処刑される。王様には事後報告で、止める間も無く」

 ……それって、ヘンリーもパパンも死ぬってこと?
 もしくは、ヘンリーだけ奴隷ライフ?

「パパン処刑後、サンタローズの村も攻められ、私を庇ってサンチョ死亡。私は」
「わかったもういい。それはしないから」

 碌なことにならないというのは、よくわかった。

「遺跡で、パパンとずっと一緒にいるのは?」

 離れたから人質にされたのであって、一緒にいれば大丈夫なんじゃないの?

「無理。遺跡に来る魔物が、結構強い。パパンでも、瞬殺はできないレベル。パパンひとりなら負けないとは言え、一瞬の隙も無く私とヘンリーを守り切るとか、無理」

 ……だよね。
 レベルがようやく二桁に届こうか程度のお子様と、箱入りの王子様だもんね。
 あんなに強いパパンが、子供を人質に取られるゲームのあの演出って、そういうことだよね。

 ……でも!
 なんか!
 なんか、あるんじゃないの?
 なんか、もっと、考えれば!!

「その他にも、想定し得るあらゆる状況が、ここに纏めてあります」

 私の思考を読んだかのように(実際わかってるんだろうけど)『私』が一冊の、分厚い書物を取り出します。

「なにこれ」
「チートの書ーー」

 ネコ型ロボットがドヤ顔でポケットからアイテム取り出すような言い方はやめてほしい。
 しかも、楽しそうでも無いし!

「……なにそれ」
「パパンの死亡回避のために、過去の、未来の『私』たちが、試行を重ねた結果を纏めたもの。読めばわかるけど、なにやっても、余計酷い結果になるか、なにも変わらないか。なんにしても、パパンは助けられない」

 過去の未来のって、ややこしいな!
 言いたいことは、わかるけど!

 ……そんなことより。
 ダメなの?
 ……どうしても?

「それが、地の章」
「章立てなの!?」

 そういうパクり……いやパロディならドーラの書とかにするべきだろ、いやいやそれじゃ万一誰かに見つかったときに私がピンポイントで怪しまれるからやっぱ無いか、とか妙に冷静に考えつつ、『私』の次の言葉を待ちます。

「死ぬのが、避けられないなら。生き返らせるだけ」
「あるの!?方法が!!」

 それも、聞こうとは思ってたけど。
 出来れば死なせない方向で考えたかったから、まだ、私からは聞けなかった。
 でも、別の可能性を検討するのは、後でも出来る。

 とりあえず、今は!
 わかってることを確認するのが、先!

「海の章では、パパン復活や、戦闘に役立つ技術を、主に魔法を中心に纏めております」

 今度はセールストークみたいになってきたが、相変わらず楽しくなさそう。

 ……そりゃ、そうか。
 パパン死亡が避けられないことなら、この『私』の『パパン』は、もう。

「世界樹の花でもあれば、良かったけど。そんな都合のいいもんは無いので」

 別作品(ドラクエⅣ)の、後付けチートアイテムね!
 チートでもなんでも、あれば良かったよね、ホントに!
 神竜とかもね!

「べネットじいさんの、協力の元ー。従来は不可能だった、適性の無い魔法の習得とー。合体魔法の開発に、成功しましたー。」
「ええっ!ホント!?ザオリクとかベホマラーとか、覚えられるの!?合体魔法って、右手にベギラゴン、左手にイオナズンとかいう、アレ!?」

 ここでメドローア出さないとこがポイントね!
 アレもカッコいいけど、アレはアレだけだからね!

「そう。その、アレ。無理矢理習得したザオリクとベホマラーを、組み合わせることによりー。単品のザオリクやザオラルでは不可能な、死体も残さず消し飛んだ魔物をー。直後に復活させるところまでは、成功しましたー。」

 棒読みが酷いが言ってることは凄い!
 何気に非人道的な実験があったような、気がしなくも無いが!

 でも、ということは。

「……パパンは。まだ、なの?」
「うん。魂が、この世にいないと、ダメなんじゃないかと思ってる。消し飛んだ魔物も、時間が経ちすぎると、復活出来ない」
「……じゃあ」
「だから。チャンスは、一回だと思ってる。ママンを、迎えに来るとき」
「……それって」

 ママンを、一度は瀕死にさせないといけないってこと?
 たぶん、復活できるだろうとは言え?
 散々苦しんできたであろう女性を、目の前で見捨てて?

「…………」

 黙り込む私に、『私』が淡々と言葉を続けます。

「気付いてると思うけど、それも結局は、可能性の話だから。実際に成功したわけじゃないから、そこまでやっても、パパンが生き返るかはわからない。だけどこれまでの『私たち』と、今ここにいる私自身が、散々考えた結果、辿り着いた結論は、それ。後のことを選んで決めるのは、あなた」
「…………」
「私は、未来のあなただけど。あなたは、私が動いた通りにしか、動けないわけじゃない。それは、過去の『私たち』が証明してる」
「…………」
「……まだ、聞きたいことは、ある?」

 聞きたい、こと。
 ぶつけたい疑問なら、山程ある。

 でも、それは、『私』にぶつけても、仕方の無いこと。
 私が、考えて、答えを出さなければいけない、こと。
 この『私』は、もう散々考えて、その結果を、ちゃんと教えてくれたんだから。
 それだけでも、十分なチートだよね!
 ゲームの主人公は、なんの予備知識も、未来からの手助けも無く、自分で全てを乗り越えて行ったんだから!

「ううん。大丈夫。あとは、自分で考える。ありがとう」
「そう。それじゃ最後に、空の章だけど」
「まだあるの!?」
「このネタなら、三章立てに決まってるでしょ!」

 分厚いチートの書の後ろのほうのページを開き、急に生き生きとした瞳で、熱く語り出す『私』。

「チートの書のラストを飾る空の章では、回復魔法を利用した美容法など、これまたべネットじいさんのご協力を得て開発した、イケメン美女形成に役立つ情報が満載!」
「おおっ!それは、スゴい!」

 べネットじいさん、万能!
 イケメン美女は、素質に胡座をかいていてはなれませんからね、きっと!
 重要!
 超、重要!!

「もう書いてあるから、『あなた』がじいさんにお世話になることは、無いとしても!感謝の気持ちは、常に忘れないようにね!」
「了解です!あ!あと、そっちの話をするなら、まだまだ聞きたいことが!」

 と、さっきまでの重たい空気を忘れたように、急に軽い雰囲気で女子トークに興じる私たち。

 こんな時間も、必要だと思います! 
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