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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第三十幕 「織斑一夏の有意義な休息」

 
前書き
総合評価が250ポイントを越えました。こんな自己満足全開の小説でも評価してくれる人がいるのは嬉しいですね。
そして前回のアンケートですが、みなさん意外と暇がないのかそれとも自分が暇なのか・・・
とりあえず現状維持になりました。

5/9 誤字修正がてら文を調整 

 
前回のあらすじ:病弱少年、選択する

すっかり言い忘れていたが、結局クラス対抗戦は所属不明のIS襲撃の所為で中止になった。
表向きにはアリーナのシールドが故障したため全面見直しのために中止という事になっている。代価案として学年別トーナメントという話が進められているそうだが、内容は生徒たちの与り知らぬところである。

そしてそんな中、織斑一夏は人知れずストレスを溜めていた。ベルーナと未だに打ち解けられていない事。ISの腕も勉強も周囲に追いつけていない事。幼馴染の箒に、自分の知らない間に精神的な差をつけられた(と一夏は思っている)こと。
対抗戦そのものが中止になったことでクラスの期待そのものが無駄になったこと。事件で敵ISをぶった切っておきながら、その後に気を抜いて結局助けられた未熟さ。ついでに周囲が女性だらけであったことも、知らず知らずのうちにストレスとなっていた。そのストレスは本人にも然程自覚のないまま、まるで膨張を続ける風船のように一夏の精神を圧迫し始めていたのだ。

そんな折に手元に届いた『IS学園外外出許可証』。だいぶ前に発行を頼んでいた代物だった。これさえあれば一夏はしばしの間、学園の外でガス抜きが出来るということだ。そしてようやく待ちに待った許可が下りたことで束の間の自由を得た一夏は―――


「うははははぁ!!俺と白騎士を止めるなんてなぁ!!出来るわきゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「なぁめぇるぅなぁぁぁぁ!!俺のメイルシュトロームのやりこみがあればリア充と最強キャラの一つや二つ!!」
「この白騎士凄いよぉ!流石全ISのお姉さぁん!!」
「負けるわけがない・・・!俺は今、絶っ好ぉぉぉぉ調ぉぉぉぉであぁぁぁぁる!!」


―――ちょっと引くくらい盛大にはっちゃけていた。

現在一夏は親友である五反田弾(ごたんだだん)の家にお邪魔していた。やっているのは・・・世界的大ヒットを記録したハイスピードアクションTVゲーム『 I S / V S (インフィニットストラトスヴァーストスカイ)』。オンライン対戦では同時に8機まで参加可能なこのゲームは第2回IS世界大会の参加機体が準用されており、特に発売元である日本製はかなり綿密な調整と度重なるバージョンアップによってすべての機体で勝ちが狙えるように調整され尽くした傑作である。
・・・より具体的に言うと、隠しにして最強機体である白騎士さえも油断をすれば即死ルートへ持って行けるという逆の方向にぶっ飛んだ調整が施された。対戦相手である弾の駆るメイルシュトロームは今まで最弱キャラと言われていたが、度重なる調整によって順調に即死ルートが増え、現在では大規模大会でも上位に食い込むことさえ起きるようになった位だ。

誰かが言った。このゲームに弱キャラはいない。いるのは強キャラと凶キャラだけだ。
誰かが言った。このゲームは一つの油断が即死に繋がる最高にリスキーなゲームだ。
誰かが言った。一周回って神ゲー、異議は認める。
誰かが言った。たまにナギナギとかジョイヤーとかヒャッハーと言う謎の声が飛び交う。
そして誰かが言った。こんなのISじゃねえ、世紀末だ、と。

「はははは・・・ふぅわぁ!?コマンドミスった上にゲージ足りねぇぇーーー!?!?」
「隙ありだアホが!調子に乗って魅せコンボなんか使うからからそういうことになる!」
《You Lose !!》
「クッソもう一回だもう一回!」

2人がゆっくり話をするのは、それから30分以上も後の事だった。



 = = =



「で?で?どうなんだよ学校は?男子4人に残りは全員女子ってもはやラノベの世界じゃね?ハーレムですか?ウハウハなんだろ?ハハッもげろ。そして一人ぐらい紹介してくださいお願いします」
「んな訳ねえだろ。紹介もしねえよ」
「一人くらいいじゃねえか!・・・ま、冗談はさておき実際のところどうなんだよ?」

無遠慮に話しかけてくる弾。赤髪のロン毛にバンダナを巻いたこの男は、顔も悪くないし一夏よりも身長が高い・・・が、中身が少々軽薄なため今一モテない男である。多分頬にバーコードの入れ墨をしてルーン文字の書かれたカードを握らせれば似合うんじゃないだろうか、等と意味の分からない事を考える。
ただ、軽薄に見えても根は男気のあるいい奴なのだ。後はもう少し自分の欲望を胸の内に仕舞い込めばいい男なのだが、それが出来ないからこの男は三枚目なのだろう。

「んー・・・女の子は沢山来るけどやっぱ『男だから物珍しい』ってのが大きいんだろうな。実際残間兄弟にも人は寄ってるし・・・モテるってんならむしろベルが一番モテてんじゃないかな?」
「ベル・・・ああ、外人の適性者か。くそっ、どうせイケメンなんだろーなー・・・あ゛ぁー彼女欲しい」
「いやベルは小っちゃいからマスコット的な人気なんだけどな?」
「それでも羨ましいもんは羨ましいんだよ~!」
「人の苦労も知らないで言ってくれるぜ。こっちはマジできつい時があるってのに・・・」

ちなみにこの憶測は微妙に間違っている。確かにベルーナの人気はベルとも会の存在からも分かるが、そのメンバーの半分くらいは副会長の一夏目当てで入会している。ついでにベルーナのファンには結構な割合のガチ狙い勢が存在するため必ずしもマスコット的人気とは言い切れない部分がある。
ちなみにユウはブラコン兄のハードルが高いため落ち着き気味、ジョウもその関係でそこまで女性に寄られてはいない。

「・・・まぁ気疲れすることはあるけどジョウさんもユウもいるし、最近は鈴も来たからそれなりに良くやってるよ」
「鈴・・・あの鈴か。フ~ン・・・」
「・・・?何だよその意味ありげなのは?」
「いや、相変わらず元気なんだろうな~ってね」
「おう、元気ありすぎて教室の窓ガラス割ったりしてたぜ」
「えっ、なにそれこわい」

ちなみに弾はもちろん鈴のことも、彼女が誰に恋していたかも何となく知っている。・・・そして、目の前の男がそれに気付いていないであろうことも。だからと言って教えてあげたりはしないが。

「そういや今日は残間兄弟は何してんだ?」
「二人はお墓参りだってさ。『次の休暇は顔を出す』って言ってたぜ」
「墓参りか・・・それじゃしょうがねえな。ジョウさんもこの日だけは雰囲気違うし」
「顔も知らないけど、一回くらい会ってみたかったな~、2人のお母さんにさ」
「あのジョウさんの母親かぁ・・・そういえばジョウさんは母親似らしいけど」
「ジョウさんの母親・・・・・・」
「あのジョウさんの・・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」

何故か二人の頭の中には「私ったら天才ね!」とかいいながらテロリスト相手に素手で無双する成人女性のイメージ画像しか浮かんでこなかった。手刀で敵を真っ二つにしたり、頭突きで岩を砕いたり、生身で空飛んでで分身とかも出来そうだ。なにせジョウの母親な訳だし。

と、そんな下らない妄想をしていた二人の後ろでドアが乱暴に開け放たれる。現れたのはラフな格好をした赤毛の少女。入るや否や弾に大声で文句を言おうとして、その隣にいる人物の顔を見るやわたわたと慌てはじめた。

「お兄!さっきからお昼出来たから降りて来いって・・・・・・い、一夏さん!?」
「お、蘭じゃないか。久しぶり!お邪魔させてもらってるよ」
「き、き、来てたんですか!?」

怒った形相は一夏を見るや一転、急激に頬を紅潮させる。この少女の名前は五反田蘭。弾の妹君である。兄と接するときのがさつな態度を見られたのが恥ずかしかったのとだらしない恰好をしていることもあって恥ずかしそうに身を廊下に隠した。今更隠れて意味があるのかは不明だが、そこは乙女心という奴である。
わざわざ説明するまでも無い位リアクションが分かりやすいが、彼女は一夏に淡い恋心を抱いている。というかここまであからさまに反応しても一夏という男はその行為に気付かないのだからもはやこれは一種の発達障害だ。女心が分からず?マークを頭の上に浮かべる一夏をよそに蘭は弾に詰め寄って憤怒の形相を露わにしている―――一夏に見えないように。何故か?彼女が一夏に恋しているからに決まっている。

(どうして来てるって言わなかったの・・・!)
(い、言ってなかったっけ?は、はは・・・)
「二人とも相変わらず仲良いな~。ちょっと羨ましいよ」
「そ、そうですかアハハハハ・・・」
「兄妹だからなアハハハハ・・・」

蘭が弾の襟首を掴む手が強くなる。余裕があった筈の首元が急激に締まるのを感じながら、弾は心の底で一夏を罵った。―――嗚呼、我が親友よ。ちったぁ気付けよこっちの恋事情に。



 = = =



五反田食堂。かつて一夏がバイトをしていたこともある個人経営の飲食店だ。
だが一夏は、その見覚えのあるはずの場所がまるで違うような錯覚を覚えた。その理由は―――

「最近はどうもドイツがきな臭い。ま、あそこは大戦中から何かと訳アリが多いですからそれ自体は今に始まったことではないんですけど・・・教え子がいるからどうも心配でしてね」
「そいつぁさぞ心配でしょう・・・で、さっきの話ですが・・・どうなんですかい?」
「ん・・・ああ、モサドの情報をリークしてる奴に聞いたんですが、どうもピリピリしてるらしいですね。ドイツとは前から微妙な関係なんであっちに呼応してって線もあるんですが・・・アラビア辺りでも裏の活動が活発化し始めてる。考えたくはないが、多分1、2年以内に“大波”が来るんじゃないかなぁ・・・日本にも届くほどの」
「大波、ですかい・・・無事に乗り切れればいいんですが」
「いやまったく」

食堂の大将である厳さんが見知らぬ外人さんとリアクションに困る会話をしていた。
2人の背中からは何というか、世知辛い世の中に遣る瀬無さを感じている中年と言った感じのオーラが噴出しており、食堂全体の空気が不景気の酒場みたいな感じになっている。有り体に言うと辛気臭い。そこで一夏ははて、と首をかしげる。厳さんと話をしている外人の男性に見覚えがあるような気がしたのだ。一夏の視線に気付いた男性はこちらを見る。

「・・・おや、君は織斑一夏君じゃないか?知り合いだと話は聞いていたが・・・奇遇だね」
「え・・・えっと、どこかでお会いしましたっけ?」
「・・・織斑君。自分の通う学校の警備責任者の顔くらいは覚えておくことをお勧めするよ」

わざとらしく肩をすくめて見せるその男の顔を必死に思い出そうと記憶の中を掘り起し、一夏はようやくその男の記憶を脳内で発見した。

「警備・・・ああっ!!たしか責任者のクラースさん、でしたっけ?」
「正解だ。まぁ学校の職員なんてそうそう覚えてるものではないか・・・」

その男はIS学園のパンフレットに写真付きで載っていた男、クラース・ウル・ダービシェスだった。
 
 

 
後書き
こ、この進行具合でもう30話に届いてんの・・・!!?遅い、遅すぎる・・・ 
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